「野菜は好きですか?」でわかる腎臓病のリスク
大阪大学職員10,819人の職員健診データの解析結果
研究成果のポイント
概要
大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学の大学院生の尾崎晋吾さん(博士課程)とキャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平准教授らの研究グループは、大阪大学の職員健診データを用いて、「野菜は好きですか」という質問に「嫌う」と回答した職員は蛋白尿のリスクが高いことを明らかにしました。
野菜の摂取量が少ない人は、腎臓病や高血圧、糖尿病等の生活習慣病のリスクが高いことが知られています。野菜の摂取量を測定するには食事摂取頻度調査票が使われることが多いのですが、質問数が非常に多く、回答するのが大変であり、日常的な診療や保健指導では使いにくいという欠点があります。
山本准教授らの研究グループは、大阪大学職員10,819人の健診データを利用して、「野菜は好きですか:好む、普通、嫌う」というシンプルな質問に対して、「嫌う」と回答した職員は、「好む」と回答した職員よりも、その後の健診で蛋白尿を発症するリスクが高いことを明らかにしました。
本研究成果は、国際科学誌「Annals of Nutrition and Metabolism」に10月26日に公開されました。
研究の背景
野菜の摂取量が少ない人は、腎臓病や高血圧、糖尿病等の生活習慣病のリスクが高いことが知られていましたが、主観的な野菜の好き嫌いとこれらの疾患の関連はこれまで評価されていませんでした。
研究の内容
山本准教授らの研究グループでは、大阪大学職員10,819人の2005年1月〜2013年3月の職員健診データを利用して、初回健診受診時の「野菜は好きですか」という質問に対して「好む」、「普通」、「嫌う」と回答した職員が、その後の健診での蛋白尿(尿蛋白≧1+)を発症するリスクを評価しました。その結果、「嫌う」と回答した職員は、「好む」と回答した職員よりも、蛋白尿のリスクが男性で1.59倍、女性で1.95倍上昇していることが明らかになりました(図)。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、「野菜は好きですか」というシンプルな質問が、日常的な診療や保健指導において腎臓病のリスクが高い人を見つけるのに役立つことが示されました。食生活の改善が腎臓病の予防につながる可能性がある人たちをいち早く見つけ出すために、「野菜は好きですか」というシンプルな質問が日常的な診療や保健指導の現場において広く活用されることが期待されます。
特記事項
本研究成果は、2021年10月26日に国際科学誌「Annals of Nutrition and Metabolism」(オンライン)に掲載されました。
タイトル Vegetable preference and prediction of proteinuria: a retrospective cohort study
著者名 Shingo Ozaki, Ryohei Yamamoto, Maki Shinzawa, Ryohei Tomi, Ryuichi Yoshimura, Kaori Nakanishi, Makoto Nishida, Izumi Nagatomo, Takashi Kudo, Keiko Yamauchi-Takihara, Yoshitaka Isaka, and Toshiki Moriyama
DOI https://doi.org/10.1159/000520044
参考URL
山本陵平准教授 研究者総覧URL
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/5483155cff49bf0a.html