
奥歯の噛み合わせ悪化で歯の喪失リスクは6倍に
大阪府の後期高齢者94,422人のビッグデータ解析で判明
研究成果のポイント
概要
大阪大学大学院歯学研究科の豆野智昭助教、池邉一典教授、キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループは、大阪府の後期高齢者94,422人において、奥歯の噛み合わせの状態が悪化するほどに、歯を喪失するリスクが高くなる(最大で6.0倍)ことを明らかにしました(図)。
これまで、奥歯の噛み合わせの状態は、残っている歯の負担に影響し、歯の喪失のリスクと関連すると考えられてきました。しかし、その関連性を大規模な追跡研究によって、詳細に解明したものはありませんでした。
今回、研究グループは、大阪府後期高齢者医療広域連合、大阪府歯科医師会と協力し、大阪府の後期高齢者歯科健康診査の受診者94,422人、平均観察期間2.2年のデータを分析することで、奥歯の噛み合わせの状態と、歯の喪失のリスクに強い関連があることを明らかにしました。これにより、奥歯は食事のためだけではなく、残っている歯を守るためにも重要であることが明らかとなりました。歯の喪失を予防し、自分の歯を保つことは、食事の質や栄養バランスの観点から重要であることが知られています。今後、口腔そして全身の健康維持のための奥歯の重要性について、議論が高まることが期待されます。
本研究成果は、2024年6月25日に国際科学誌「Journal of Dentistry」に公開されました。
図. 奥歯の噛み合わせの状態と歯の喪失リスクの関連
研究の背景
これまで、奥歯の噛み合わせの状態と残っている歯の喪失のリスクとの関連性は示唆されていました。しかし、様々な歯の残り方のパターンを網羅した大規模研究によって、両者の関連を検討した研究はありませんでした。
研究の内容
研究グループでは、大阪府の後期高齢者医療歯科健康診査を受診した94,422人を対象とした平均2.2年間の追跡研究より、奥歯の噛み合わせの状態が悪化するほどに、歯を喪失するリスクが高くなり(最大で6.0倍)、特に前歯部でその傾向が顕著であることを明らかにしました。歯周病の状態や、歯の磨き具合、糖尿病といった、歯を失うリスクとして考えられる他の要因の影響を考慮したうえで、奥歯の噛み合わせの状態と歯の喪失リスクとの間に、統計学的に意義のある関連を認めました。
本研究では、大阪府後期高齢者医療広域連合、大阪府歯科医師会の協力の下、大規模な歯科健康診査データを分析することにより、歯の残り方のパターンを詳細に分けて、歯の喪失リスクを比較することが可能になりました。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果は、奥歯は食事のためだけではなく、残っている歯を守るためにも重要であることを示しています。「口は健康の入り口」として、口腔健康への注目度が高まっています。特に歯の喪失予防は、高齢社会におけるヘルスプロモーション戦略として重要視されています。本研究結果より、奥歯の噛み合わせの状態が悪い高齢者は、歯の喪失予防を重点的に行う必要があることが示唆されました。今後、口腔そして全身の健康維持のための奥歯の重要性について、議論が高まることが期待されます。
特記事項
本研究成果は、国際科学誌「Journal of Dentistry」に、2024年6月25日に公開されました。
タイトル:“Association between posterior occlusal support and tooth loss in a population-based cohort: The OHSAKA study”
著者名:Tomoaki Mameno, Naoko Otsuki, Masahiro Wada, Ryohei Yamamoto and Kazunori Ikebe
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jdent.2024.105144
なお、本研究は、大阪府後期高齢者医療広域連合の委託事業の一環として行われ、大阪府歯科医師会の協力を得て行われました。