一人暮らしの男子大学生は飲酒頻度が高くなる

一人暮らしの男子大学生は飲酒頻度が高くなる

大阪大学の大学生 17,774人の学生健康診断のデータ解析

2024-1-19生命科学・医学系
キャンパスライフ健康支援・相談センター教授山本陵平

研究成果のポイント

  • 大阪大学の大学生で毎年の学生定期健康診断を受けている17,774人(男子大学生が11,683人、女子大学生6,091人)において、一人暮らしの下宿の男子大学生 5,151人・寮生活の男子大学生692人は、家族と暮らしている男子大学生5,685人と比較して、週4回以上の高頻度の飲酒習慣になるリスクが高いことを明らかに。
  • これまで大学生の一人暮らしの下宿や寮生活などの居住形態と飲酒習慣に関係があることは示唆されていたが、大規模かつ長期間の追跡に基づいた研究はほとんど報告されていなかった。
  • 大学生を含む若年での大量飲酒習慣は、将来的にアルコール依存症などのアルコール性障害のリスクを高めるという報告がある。今回の成果をもとに、下宿や寮での一人暮らしの大学生にアルコール摂取についての正しい知識を啓発することで、将来的に生じうるアルコール性障害や、アルコール依存症に関連したDVや児童虐待などの社会的問題に対して、早い時期に介入することが可能に。

概要

大阪大学大学院医学系研究科の大学院生 松村雄一朗さん(博士課程)と大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター山本陵平 教授らの研究グループは、大阪大学学生17,774人において、一人暮らしの下宿の男子大学生5,151人、寮生活の男子大学生692人と両親などの家族と同居している男子大学生5,685人とを比較し、両者の週4回以上の高頻度の飲酒のリスクについて比較しました(調査対象期間:2010~2015年度)。その結果、一人暮らしの男子大学生と寮生活の男子大学生は、週4回以上の高頻度の飲酒習慣になるリスクが高いことを明らかにしました(図)。

これまで大学生の居住形態と飲酒習慣との関連性を、大規模かつ長期間の追跡に基づく研究によってきっちりと解明したものはありませんでした。今回、研究グループは、大阪大学学生定期健康診断のデータを利用し、一人暮らしの男子大学生は飲酒頻度が多くなるリスクが高いことを解明しました。今後、若年世代の大量・頻回飲酒への介入に関する議論が高まることが期待されます。

本研究成果は、2023年12月26日に米国科学誌「American Journal of Health Promotion」公開されました。

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研究の背景

これまでにも、大学生の居住形態と飲酒との関連性は示唆されていましたが、大規模な人数で長期にわたるフォロー期間をもった研究による、統計的に意義のある両者の因果関係は解明されていませんでした。

研究の内容

研究グループは、大阪大学の学生健康診断を受診した学生17,774人(調査対象期間:2010〜2015年度)において、一人暮らしの下宿の男子大学生5,151人、寮生活の男子大学生692人と両親などの家族と同居している男子大学生5,685人とを比較し、両者の週4回以上の高頻度の飲酒のリスクについて比較しました。その結果、一人暮らしの下宿の男子大学生と寮生活の男子大学生は週4回以上の高頻度の飲酒頻度になるリスク(一人暮らしの下宿 1.21倍、寮生活 1.39倍)が高くなることを明らかにしました(図)。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果は、10年前の大学生らの健診データを活用したもので、コロナを経て生活習慣に変化が起きている可能性もありますが、親元など家族との同居を離れた一人暮らしの下宿や寮生活の男子大学生が、高頻度の飲酒習慣になるリスクが高いことを示しています。さらに、若い世代の飲酒習慣が将来の飲酒習慣に影響を与えるという研究があることから、若い世代での高頻度飲酒は、将来の大量飲酒を生む可能性が高いと言えます。一人暮らしの下宿や寮生活の大学生に対して、高頻度・大量飲酒習慣の危険性やアルコールの健康被害に関する啓発を行うことなどが、世界的に問題になっているアルコール依存症を含むアルコール性障害や、アルコール依存に関連した社会的問題への対策につながることが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2023年12月26日に米国科学誌「American Journal of Health Promotion」公開されました。

タイトル:“Living Arrangements Predict Frequent Alcohol Consumption Among University Students: A Retrospective Cohort Study”
著者名:Yuichiro Matsumura, Ryohei Yamamoto, Maki Shinzawa, Naoko Otsuki, Masayuki Mizui, Isao Matsui, Yusuke Sakaguchi, Makoto Nishida, Kaori Nakanishi, Seiko Ide, Chisaki Ishibashi, Takashi Kudo, Keiko Yamauchi-Takihara, Izumi Nagatomo, Toshiki Moriyama
DOI:https://doi.org/10.1177/08901171231224882

参考URL

山本陵平教授 Research Map
https://researchmap.jp/yamamotor

SDGsの目標

  • 03 すべての人に健康と福祉を