日本酒3合相当(1日)以上の大量飲酒は男性の腎機能低下のリスクと関連あり
特定健診受診者30万人の大規模追跡調査が明らかにする飲酒と腎臓の関連
研究成果のポイント
概要
大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループは、40~74歳の男性特定健診受診者125698人を中央値2.9年間追跡した結果、時々飲酒する男性と比較して、ほとんど飲まない男性と1日あたり日本酒3合相当(アルコール約60g)以上飲酒する男性は、1年あたりの腎機能(糸球体濾過量、mL/分/1.73 m2)の低下速度が速いことを明らかにしました(図1)。また、30%以上の腎機能低下のリスクも同様の傾向を認めました(図2)。一方、女性では明らかな関連は認められませんでした。本研究は、大量の飲酒が腎機能低下のリスクであることを初めて明らかにした大規模疫学研究です。
これまで1日あたり日本酒1合相当(アルコール約20g)の飲酒者は腎機能の低下リスクが低いことが知られていましたが、大量の飲酒が腎機能に及ぼす影響はほとんど評価されていませんでした。
今回、山本陵平教授らの研究グループは、特定健診受診者約30万人の大規模疫学研究のデータを活用することで、大量の飲酒が腎機能に及ぼす影響を明らかにしました。適度な飲酒を推奨することによって、腎臓病の予防、さらには増加の一途を辿る透析患者数の抑制に繋がることが期待されます。
本研究成果は、国際科学誌「Nutrients」に、3月22日に公開されました。
研究の背景
これまで、適度な飲酒は腎機能低下を予防することが知られていました。一方、大量飲酒が腎機能に及ぼす影響は、少数の小規模研究が相反する結果を報告しており、一定の見解は得られていません。
研究の内容
研究グループは、18都道府県の40~74歳の特定健診受診者304,929人の腎機能(推算糸球体濾過量)の変遷を中央値2.9年間追跡しました。男性125,698人の1年あたりの腎機能低下(mL/分/1.73 m2/年)は、初回健診時に時々飲酒すると回答した男性と比較して、ほとんど飲まない男性と1日あたり日本酒3合相当(アルコール約60g)以上の男性で有意に大きく(図1)、30%以上の腎機能低下のリスクも同様の傾向が認められました(図2)。一方、女性179,231人では、飲酒量と腎機能低下の明らかな関連は認められませんでした(図1と図2)。女性では飲酒者が著しく少ないことがその一因かもしれません。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究は、1日あたり日本酒3合相当(アルコール60g程度)の大量の飲酒は男性における腎機能低下のリスクであることが示されました。一方、日本酒1合相当(アルコール約20g)の適度の飲酒が腎機能低下を予防する可能性が改めて確認されました。適度な飲酒を推奨することによって、様々な生活週間病のみならず、腎臓病の予防、さらには増加の一途を辿る透析患者数の減少に繋がるかもしれません。
特記事項
本研究成果は、2023年3月22日に国際科学誌「Nutrients」(オンライン)に掲載されました。
タイトル: “Alcohol Consumption and a Decline in Glomerular Filtration Rate: The Japan Specific Health Checkups Study”
著者名: Yoshiki Kimura, Ryohei Yamamoto, Maki Shinzawa, Katsunori Aoki, Ryohei Tomi, Shingo Ozaki, Ryuichi Yoshimura, Akihiro Shimomura, Hirotsugu Iwatani, Yoshitaka Isaka, Kunitoshi Iseki, Kazuhiko Tsuruya, Shouichi Fujimoto, Ichiei Narita, Tsuneo Konta, Masahide Kondo, Masato Kasahara, Yugo Shibagaki, Koichi Asahi, Tsuyoshi Watanabe, Kunihiro Yamagata, and Toshiki Moriyama
DOI: https://doi.org/10.3390/nu15061540
本研究は厚生労働省(H24-nanchitou(jin)-ippan-006)と日本医療開発研究機構(17ek0310005、JP20ek0310010、 22rea522003h0001)の支援を得て実施されました。
参考URL
山本陵平教授
Research Map https://researchmap.jp/yamamotor
Twitter @yamamotoryohei_