朝食・夕食を食べない女性は蛋白尿のリスクが高いことが明らかに
大阪大学職員 1 万人の定期健康診断データを用いた疫学研究
研究成果のポイント
・大阪大学職員の定期健康診断において、朝食・夕食をほぼ毎日食べると回答した女性と比較して、そうでないと回答した女性の蛋白尿のリスクは、1.3〜1.5倍上昇していた。
・朝食を食べないことは、メタボリック症候群、糖尿病、心血管系疾患などの生活習慣病のリスクであるが、腎臓病との関係は明らかではなかった。また、昼食・夕食の摂取頻度と生活習慣病・腎臓病の関係はこれまでほとんど報告されていない。
・本研究成果は、朝食と夕食をしっかり食べる生活リズムを維持することが腎臓病の予防につながる可能性があることを示唆する。
概要
大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの山本陵平准教授と同大学大学院医学系研究科腎臓内科学の猪阪善隆教授の研究グループにより、朝食あるいは夕食を食べない女性は蛋白尿のリスクが高いことが明らかになりました。
朝食を食べないことは、メタボリック症候群、糖尿病、心血管系疾患などの生活習慣病のリスクですが、腎臓病と関連は明らかではありませんでした。また、昼食および夕食の摂取頻度が、生活習慣病・腎臓病に及ぼす影響はほとんど報告されていません。
山本准教授らの研究グループは、2005年1月-2013年3月に定期健康診断を受診した大阪大学職員10113人を2019年3月まで追跡し、朝食・昼食・夕食の摂取頻度と蛋白尿(尿蛋白≧1+)の発症の関係を評価しました。蛋白尿は、腎臓病の主要な特徴の一つであり、また将来の腎機能の予測因子です。
朝食を「ほぼ毎日食べる」と回答した女性4343人と比較して、「不規則」および「ほぼ食べない」と回答した女性638人および458人の蛋白尿のリスクは、それぞれ1.35倍および1.54倍に上昇していました。夕食に関しては、「不規則」あるいは「ほぼ食べない」と回答した女性職員309人のリスクは、「ほぼ毎日食べる」と回答した女性5130人の1.31倍でした。昼食の摂取頻度と蛋白尿の関係は認められませんでした。男性では、朝食・昼食・夕食の摂取頻度と蛋白尿の関連は認められませんでした。
本研究の成果は、朝食と夕食を毎日しっかり食べる生活リズムを維持することが腎臓病の予防につながる可能性を示唆しています。本研究成果は、国際科学誌「Nutrients」に、11月19日に公開されました。
図1 女性の朝食摂取頻度と蛋白尿リスク
図2 女性の夕食摂取頻度と蛋白尿リスク
研究の背景
近年増加の一途を辿る透析患者は2018年末時点で国内では34万人であり、透析医療費は全医療費の約4%(1兆6000億円)を占めます。透析患者数および透析医療費を減少させるためには、蛋白尿と腎機能の低下(糸球体濾過量の低下)で特徴づけられる慢性腎臓病の予防策を確立する必要があり、肥満・喫煙等の改善可能な生活習慣リスクを同定することが重要です。朝食を毎日食べないことは、メタボリック症候群、糖尿病、心血管系疾患などの生活習慣病のリスクであることが知られていますが、腎臓に及ぼす影響はこれまで明らかではありませんでした。また、昼食・夕食の摂取頻度と生活習慣病・腎臓病の関係はこれまでほとんど報告されていません。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、朝食あるいは夕食を毎日食べない女性では、腎臓病のリスクが高いことが明らかになりました。朝食と夕食を毎日しっかり食べる生活リズムを維持することが、腎臓病の予防につながることが期待されます。
特記事項
本研究成果は、2020年11月19日に国際科学誌「Nutrients」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Frequency of Breakfast, Lunch, and Dinner and Incidence of Proteinuria: A Retrospective Cohort Study”
著者名:Ryohei Tomi, Ryohei Yamamoto, Maki Shinzawa, Yoshiki Kimura, Yoshiyuki Fujii, Katsunori Aoki, Shingo Ozaki, Ryuichi Yoshimura, Manabu Taneike, Kaori Nakanishi, Makoto Nishida, Keiko Yamauchi-Takihara, Takashi Kudo, Yoshitaka Isaka, and Toshiki Moriyama.