2016年5月31日

本研究成果のポイント

・大阪大学での心臓移植時に摘出された心臓弁を脱細胞化処理※1 し、肺動脈弁機能不全患者※2 に移植。
・心臓弁に患者の細胞が入り込み、生着・自己組織化することで、移植後の拒絶反応が起きにくいことが特徴
・脱細胞化心臓弁は高耐久性であるため、将来の再手術のリスクや医療コストを軽減でき、また脳死心臓移植患者から摘出された心臓弁を利用しているため、医療資源の観点からも重要な症例

概要

大阪大学大学院医学系研究科外科学教室(心臓血管外科学)の澤芳樹教授らのチームは、2016年5月13日大阪大学医学部附属病院にて、43歳女性の先天性心疾患術後肺動脈弁機能不全患者に対して、新鮮脱細胞化ヒト心臓弁を使用した心臓弁移植手術を行い、5月30日に無事退院しました。

この心臓弁移植手術は、大阪大学の臨床研究である「脱細胞化ヒト心臓弁の移植に関する安全性及び有効性の研究」の中で行われ、現在までに今回の患者を含めて計3例の患者に移植手術を行いました。今回使用した心臓弁は、大阪大学にて行われた心臓移植の際レシピエント※3 より提供されたものであり、日本で提供された心臓弁を用いた初めての症例です。

この新鮮脱細胞化心臓弁は、移植後の拒絶反応が起きにくく、他のデバイスと比較し再手術の必要性も減少することが考えられ、医療費の削減にも繋がることが予想されます。また、脳死下心臓移植時に摘出される心臓弁を用いた脱細胞弁を利用することは、医療資源の観点からも非常に重要であると考えられ、本治療法の普及に、また一歩近づいたといえる症例になりました。

研究の背景

細胞工学の手技を用いて作成された新鮮脱細胞化心臓弁は、移植後の拒絶反応が起きにくく、さらに、移植後にレシピエント自身の細胞が脱細胞弁に入り込み、生着して自己組織化することで弁の機能を維持することが報告されています。さらに、臨床において既存の他の人工弁と比較し、良好な成績が報告されています。このことは、脱細胞化心臓弁を使用した新たな手術術式が確立される可能性を秘めていると考えられています。大阪大学では、ドイツ・ハノーファー医科大学との共同研究においてドイツにて摘出、作成された脱細化心臓弁の安全性に関する共同臨床試験を開始し、2014年10月に日本初となる移植手術を行いました。一方で、脳死下心臓移植の際にはレシピエントの心臓は心臓弁とともに摘出されますが、心臓の筋肉の病気のために心臓移植が必要であっても、心臓弁の機能は正常であることが多いとされています。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

若年時に心臓弁手術を必要とする患者は年々増加している現状があります。現在、保険償還されている人工弁は約10年程度で再手術が必要となる可能性があります。このことから、耐久性の高い脱細胞化心臓弁に対する医療ニーズは非常に高いと考えられます。また、他のデバイスと比較し再手術の必要性も減少することが考えられ、医療費の削減にも繋がることが予想されます。また、脳死下心臓移植時に摘出される心臓弁を用いた脱細胞弁を利用することは、医療資源の観点からも非常に重要であると考えられます。

用語解説

※1 脱細胞化処理
組織から薬剤等を用いて、細胞成分のみを除去する方法をいう。細胞成分は完全に除去されるが、細胞骨格は維持される。この「骨格」を移植することで、移植された患者の細胞が「骨格」の中に入り込み、自己組織化が促進される。

※2 肺動脈弁機能不全患者
肺動脈弁の狭窄、閉鎖不全等の弁機能障害による心機能障害を有する患者のこと。

※3 レシピエント
移植手術をうけられる患者のこと。

参考URL

医学系研究科外科学講座(心臓血管外科学)
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/surg1/www/

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