2015年8月26日

概要

大阪大学大学院医学系研究科は日本医療研究開発機構(AMED) 再生医療実用化研究事業及び早期探索的・国際水準臨床研究事業の支援のもと、2014年10月にテルモ株式会社が虚血性心筋疾患※1 による重症心不全患者に対する承認申請を行った骨格筋芽細胞シートについて、企業治験では対象とならなかった成人拡張型心筋症※2 患者に対する適応拡大を目指し、2014年12月より医師主導治験※3 を開始しました。骨格筋芽細胞シートは、患者自身の筋肉から培養することによって製造できるため、患者自身の細胞を用いるため拒絶反応がなく、これまでの動物実験や臨床報告例から重篤な心室性不整脈は認められておりません。

これまで、拡張型心筋症患者に対し、骨格筋芽細胞シートの臨床研究を進めてきましたが、8月25日に1例目の医師主導治験による骨格筋芽細胞シートの移植を行いました。

研究の背景

大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科では、2006年より重症心筋症患者に対して、自己由来筋芽細胞シートの移植治療を開発してきました。これまでに、人工心臓を装着している拡張型心筋症に4例、拡張型心筋症、虚血性心筋症をはじめとする成人重症心不全症に27例、小児拡張型心筋症1例に対して、臨床研究を行いました。またテルモ株式会社により、7例の虚血性心筋症に対する企業治験が実施されています。現在までに総計39名の患者に対し骨格筋芽細胞シート移植を行ってきましたが、本治療法に関連する重篤な有害事象は発生しておらず、安全性の評価が確認されています。

これまでの企業治験のデータ及び臨床研究のデータをもとに、テルモ社では虚血性心筋症を対象疾患とした自己筋芽細胞シートの薬事申請を行っており、条件付き承認を目指しております。大阪大学大学院医学系研究科では拡張型心筋症への適応拡大を目指し、2014年12月に骨格筋芽細胞シートの医師主導型治験を開始いたしました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

骨格筋芽細胞シートは、患者自身の筋肉から培養することによって製造することができ、患者自身の細胞を用いるため拒絶反応がなく、これまでの動物実験や臨床報告例から重篤な心室性不整脈は認められておりません。また、左心室のリバースリモデリング※4 や症状・運動耐用能の改善などの報告がされていることから、他の治療法の選択がない患者にとって、本剤により病態の進行抑制、または改善が期待できます。

現行の規制上、65歳以上の重症心不全患者は移植登録を行うことができず、ドナー不足等により万人に移植医療が享受できない状況であることを鑑みると、本治療法は様々な理由により埋込み型人工心臓への適応がない患者や、埋込み型人工心臓への「ブリッジユース」に使用できるものと考えられ、今後の心不全治療の一つのオプションになるものと考えられます。

以上のとおり、本治療法は、有効な治療法の存在しない難治性疾患に対する新しい治療となる可能性があり、深刻なドナー不足である我が国の移植医療において、一石を投じる治療法になるものと考えられます。

特記事項

本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 再生医療実用化研究事業及び早期探索的・国際水準臨床研究事業の支援のもとでおこなわれています。

用語解説

※1 虚血性心筋疾患
心臓の筋肉への血液供給が減ることや途絶えることによって生じる心臓の筋肉の障害。

※2 拡張型心筋症
心臓が膨れ上がり、心臓の筋肉が薄くなることで、ポンプ機能が低下し、心不全に至る病気。

※3 医師主導治験
2003年に薬事法が改正され、製薬企業等と同様に医師自ら治験を企画・立案し、治験計画届を提出して治験を実施できるようになった。この治験の準備から管理を医師自ら行うことを医師主導治験という。 
医師主導治験では医師自らが、治験実施計画書等の作成から、治験計画届の提出、治験の実施、モニタリングや監査の管理、試験結果を取りまとめた総括報告書の作成など、治験のすべての業務の実施並びに統括する。

※4 リバース・リモデリング(reverse remodeling)
心筋リモデリングが心不全治療により心機能の改善と左室容積の縮小が得られた場合を指し、認められれば予後は良好とされる。

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