移動するアンドロイドと人の動きがシンクロする!?

移動するアンドロイドと人の動きがシンクロする!?

車輪型アンドロイドの後ろを歩く人の足並みがアンドロイドの動きと同期することを確認

2022-10-25工学系
基礎工学研究科教授石黒浩

研究成果のポイント

  • 移動する車輪型アンドロイドの後ろを歩く人の動きがアンドロイドの動きに同期することを確認
  • これまでの移動型ロボットでも行われていた腕ふり動作に対し、新たに人の歩行に伴う上半身の上下動を加えることで、人が無意識に自身の動きを同期させる移動型ロボットを実現
  • 将来、駅や空港などで多くの人とロボットが密集して移動するような場合に、ロボットが人に働きかけて人の歩調を揃えることで集団として高効率な移動が実現できる可能性

概要

大阪大学大学院基礎工学研究科の八木聡明(さとし)さん(当時博士後期課程、現京都大学大学院情報学研究科助教)、仲田佳弘招へい准教授、中村泰招へい教授、石黒浩教授らの研究グループは、移動する車輪型アンドロイドの動きに後ろを歩く人の動きが同期することを世界で初めて確認しました(図1)。

人は、集まって歩くとき、無意識のうちに互いの足並みを揃えることで、集団として効率の高い移動を実現していることが知られています。こうした動きの同期現象は、人とロボットの間でも多く確認されてきました。しかし、移動するロボットと人の歩行動作の同期、特に相手が人のように脚を持たない車輪型ロボットであっても、人の歩行動作が同期し得るかについては、明らかになっていませんでした。

本研究では、車輪移動型のアンドロイドの移動時の人らしい身体表現として、一般的なヒューマノイドでも行われてきた腕振りの動作に対し、新たに人の歩行に伴う胴体の鉛直振動を組み合わせた動きを実装しました。その動作を行うアンドロイドの後ろを歩く実験を行ったところ、人が自発的に歩行相(歩行に伴う動きのタイミング)をアンドロイドと同期させることが明らかになりました。

移動型ロボットの動きに対する人の歩行動作の同期は、将来、駅や空港などで人とロボットが密集して移動するような場合でも、高い効率を保って両者が移動できるような技術への応用に期待されます。本研究成果は、米国科学誌「Scientific Reports」に、2022年9月29日(木)に公開されました。

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図1. 移動するアンドロイドと歩行する人

研究の背景

呼吸や手拍子、歩行など、人同士の運動の同期は日常生活の中でよく観察されます。人の歩行同期に関する先行研究では、密集して歩く人が歩行を同期させることで、その歩行の流れの効率が最大化することが報告されています。移動型ロボットの実用化が進む中、人と異なる移動形態のロボットが歩行者の流れにどのような影響を与えるかを検討することは重要です。これまでに、人とロボット間の様々な動きの同期現象が確認されてきましたが、ロボットの移動中の身体動作に対する人の歩行動作の同期、特に脚ではなく車輪で移動する人型ロボットの動きに対しても、人の歩行動作が同期するかについては明らかになっていませんでした。

研究の内容

本研究では、図1左の車輪型アンドロイドの上半身をアンドロイドの移動中に、(1)全く動かさない、(2)腕振りをさせる、(3)腕振りに人の歩行に伴って生じる上半身の上下動を組み合わせる、の3種類の動作パターンを用意しました。但し、(2)(3)の動作パターンは一定周期で、アンドロイドは人の歩行を一切センシングしませんでした。検証のための実験では、アンドロイドの後ろを歩く人の歩行を撮影・解析することで、人の歩行動作がアンドロイドの人の歩行を模した動作に自発的に同期するかどうかを調べました。その結果、(1)(2)の動作パターンでは人は歩行を同期させなかったものの、(3)の動作パターンでは人同士で見られる歩行の同期と同様に同期させていたことが観測されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

人が歩いているかのようにふるまう移動型ロボットの動きによって、人の歩行動作の同期を誘発できれば、駅や空港などで人とロボットが高い密度で移動するような場合でも、集団としてスムーズな移動の実現が期待できます。

特記事項

本研究成果は、2022年9月29日(木)に米国科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“Spontaneous gait phase synchronization of human to a wheeled mobile robot with replicating gait-induced upper body oscillating motion”
著者名: Satoshi Yagi、 Yoshihiro Nakata、 Yutaka Nakamura、 and Hiroshi Ishiguro
DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-022-20481-4

なお、本研究の一部は、JST ERATO JPMJER1401とJSPS 科研費 JP19J20127の支援を受けて行われました。

参考URL

大阪大学石黒研究室
https://www.irl.sys.es.osaka-u.ac.jp

アンドロイドibuki YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/ibuki-android

SDGsの目標

  • 09 産業と技術革新の基盤をつくろう