未来考究 CROSS TALK ― イノベーションの起点となる、 “つながり”の広げ方・つくり方。

未来考究 CROSS TALK ― イノベーションの起点となる、 “つながり”の広げ方・つくり方。


阪大のビジョンでもある「生きがいを育む社会」実現のために、
重要性を増す、大学と外部との強固で多様なつながりづくり。
本誌創刊号で見出された“つながり”というテーマを軸に、
今号では、分野を超えた連携のあり方、生み出し方を考えます。

座談会参加者
尾上 孝雄 理事(情報システム工学)
吉田 健史 准教授(医学)
的場 かおり 教授(法学)
鈴木 団 准教授(生物物理学)
丸山 美帆子 教授(結晶成長学)
標葉 隆馬 准教授(科学社会学)


他と連携し、視野を広げることで、 研究者も、学問自体も進化する。

尾上:今回の対談テーマは“つながり”です。大阪大学でも、分野を超えた大学内部での連携、業界の枠組みを超えた大学外部との協働など、つながりを生み出し、広げていくことは、発展的なイノベーションを起こしていくために今後ますます必要となってくる姿勢だと考えています。今日は医学や法学、工学など、さまざまな分野の先生方に集まっていただいていますが、それぞれに「つながりの重要性」については、どのようにお考えでしょうか?

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吉田:医学領域の研究を眺めていると、やはり「専門性を磨く」「特化した領域を深掘りする」というマインドが中心になっているかな、とは感じます。医師になるということそのものが、研修医として数年間臨床の全体像を学んだあと、10年、20年という長い時間をかけて専門力を磨いていく、という流れの中にあるので。

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尾上:確かに、医師になるという過程自体が、知見を広げた上で絞っていく、というスキームを持っていますよね。

吉田:医師になって約20年経ちますが、「吉田健史といえば、肺生理学/人工呼吸器管理」と、自分自身で胸を張って言えたり、周囲からもそう思っていただけたりするようになったのは、つい最近のことだと考えています。ただ専門性を高めただけでは、医師として、研究者として一流ではないと思ってもいて。20年というキャリアを経て、もう一度、自分の殻を破る。そのためには、専門的な世界に閉じこもらず、アンテナを広げて外へとつながりを求めていくことが大切だと感じています。

丸山:私も吉田先生と同様に、ひとつの分野の知見だけ、自分の力だけでできることには、限界があると考えています。私が学生の頃に専攻した地球科学は「地球」という、とても大きな存在を研究対象とする領域なので、「これを使えば全部説明できる」という手法がほとんどないんです。だからこそ常に「ここは物理学」「こっちは化学」「あっちでは生物学」と、分野横断的な手段を使って、地球のことを解明しようとしていました。

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尾上:なるほど。地球科学という学問自体が、そもそも融合的な存在であると。

丸山:結晶成長学という専門テーマを持ってはいますが、それは地球を広く見ていく流れの中で、結果として手に入れた武器だと思っています。おもしろいのは、今となっては「結晶」をキーワードに、臨床や情報通信など、さまざまな分野の方々と共同研究を行えていること。分野を横断して手に入れた武器が、地球科学という枠組みを飛び越えた、さらなるつながりを連れてきてくれている、という風に感じています。

尾上:鈴木先生のご専門である「生物物理学」も、融合的な学問といえますか?

鈴木:生物学分野で筋肉の研究が盛んになったことによって、「どのくらいの力を出せるか」「どのくらいの速さで動くか」といったことを考察する必要がでてきたことが、生物物理学が生まれたきっかけ。生物学、医学に物理学の視点が加わった、融合的な学問領域だと言えると思います。私自身は物理学を学びながらも、子どもの頃からずっと生き物が好きで、そこの興味が物理学と結びついて、この研究に行き着いたというかたちですね。

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尾上:まさに、生物学と物理学がつながって生まれた学問なんですね。

鈴木:そうですね。生物物理学の軸のひとつは筋肉などの動きや変化を「計測する」というところにあります。私自身はそこに「熱」という尺度も加えて、細胞レベルの小さなスケールで熱生産のメカニズムを解明するような研究を行っていますから、視点や計測尺度が増えるほど、今後も広がりを見せていく学問だと思っています。

人や社会への「興味」が、 分野横断的活動の原動力に。

標葉:鈴木先生の研究は、結果ももちろんですが、小さなスケールで熱を測れる「測定技術」がすごいですね。他にない技術をお持ちで、非常におもしろいなと思って拝見しました。私の研究の原動力は、こういった科学技術研究の場にある「人の営み」を眺めていたいという好奇心なんです。先端的な科学技術の発展に伴って生まれる倫理的・法的・社会的課題の検討、ルールメイクを専門としてはいますが、いってしまえば分野はなんでもよくて。鈴木先生の研究のように、先端技術の開発の場には、本当におもしろい人の営みがあります。私はそういった方々とつながって、繰り広げられていく営みを研究したいんです。だからそもそも、分野を見てつながりを選ぶ、ということ自体をしないですね。

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丸山:私も「自分の技術はここなので、これはできません」というテーマづくりはしないので、標葉先生のご意見にはすごく共感します。自分にできないならそれができる人を呼んできて、一緒にやればいい、人とつながるって楽しいし、と思っていますね。

標葉:吉田先生、的場先生の研究も拝見したのですが、私が「人の営み」に興味を持っているのと同様に、お二人とも強い「人への興味」に根付いた研究を行われているように見えました。そのあたり、いかがでしょうか?

吉田:おもしろい切り口ですね。自分では考えたことがなかったですが、確かに、私の医療や研究への情熱は、日々出会う患者さんから生まれてきているものばかりです。目の前に苦しんでいる人がいる。じゃあ自分には何ができるんだろう。結局はその人に対する興味、観察する意欲があるから、常に医師として成長し続けようとするのだろうし、研究を通じてより多くの人を助けられる治療方法を確立しようとしているのだと思います。

的場:私が専門とする法制史は、法の歴史を紐解いていく学問ですので、「こんな史料を見つけた」「こんな記述があった」と、史料や文献を丹念に解読しながら成果をあげるスタイルが主流ではあります。そんな中、「人って、どうやって政治情報にアクセスするんだろう?」「政治とメディアって、どんな関係性を持っているんだろう?」といったこともテーマに含めているのが、私の研究の特徴。確かに人や社会との結びつきが強いですね。

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尾上:歴史の調査・分析のみに捉われない、独自の視点を持たれるようになったきっかけや理由はあったんですか?

的場:女子短期大学で教鞭を執った経験が、大きく影響しているように思います。それまでは研究者として、法の歴史をぐっと掘り下げて考えることに集中していたけれど、やはり、学生をしっかり教育して、社会に羽ばたかせていくことが重要になります。そうなってくると、「学生たちはどうやったら、政治に関心を持ってくれるかな」「彼女たちは日々、どうやって政治に関する情報を得ているんだろう」といったことに興味が湧いてきて。その流れで人と法との関係性を深く考えるようになりました。また、「つながり」といったとき、歴史的なつながり、あるものが誕生して今に至る歩みとして捉えることも重要だと思います。

尾上:コミュニティや枠組みを超える「横のつながり」ではなく、「時間的なつながり」ということですか。

的場:そうですね。私たちが今使っている法はある日突然できたものではなく、歴史的、文化的背景を持って少しずつ変わりながら一歩一歩、現在の形になってきたもの。過去から現在へ、連綿と受け継がれてきたという意味での「つながり」を意識しながら、新しい未来を展望することが大事だなと。短期大学にいたころは、法や政治に興味を持ってもらうために、色々な取り組みを実践していました。阪大に戻ってきてちょっと残念だなと思うのは、良くも悪くも研究に集中できてしまう環境ですかね。やはり組織が大きいので、フットワーク軽く活動を広げたり、外部の人と気軽に交流したり、ということをより強く意識する必要があると感じています。

つながりを、広げて生み出すために。 重要となるのは「出会いの場」。

尾上:的場先生からもご意見がありましたが、軽やかにつながりを得るにあたって課題になっていることもあると思います。先生方が考える、つながりを新たに生み出すためのアイデア、課題解決方法などがあれば、ぜひおうかがいしたいです。

標葉:個人的にはつながりを広げるキーワードは、「気軽な出会い」にあると思います。東京の虎ノ門などで行われている、さまざまなセクターの人が気軽に集えるような阪大主催の学術サロンを、梅田や中之島で開催したらどうでしょう。

吉田:東京では行われている集まりとは、どのようなものなんでしょうか?

標葉:東京で行われているものはビジネスに関わる交流会ですが、私がここで考えているのは「最近こんなことを研究しています」「こんな発見がありました」といった学術的にホットなトピックスを、食事を楽しみながら話せるような場ですね。肩肘張らずに集まれますし、定期的に開催されているので「ここに行けば何かしらおもしろいことに出会えるぞ」という気軽な感覚で、研究者はもちろん、さまざまな企業の方々や政策担当者の人たちが集まれる場があったらおもしろいんじゃないかなと。

吉田:先日東京で似たようなセミナーに顔を出しましたが、ポスターセッションがすごく盛り上がっていました。

標葉:そうなんですよ。マイクを持って研究成果をスライドで発表するような形式は、往々にして見ている方も飽きたり、盛り上がりに欠けることもあると思うんです。その点ポスター発表は好きなポイントを十分に語れますから、発表から本質的な会話が生まれていくんですよね。そういうサロン活動を梅田や中之島で行っているうちに、多くの方が集まってくださるようになったらおもしろいと思うんです。場所さえあれば、そこまでコストをかけずにスタートはさせられるし、関西圏にはおもしろい研究者も企業もいっぱいいますから。場が東京だけに限定されているのは、非常にもったいないですよ。

尾上:阪大の場合は、やはり中之島やうめきたなどの大阪市内に、標葉先生がおっしゃったようなサロン活動を行えるスペースをつくることができればと考えています。また、実は共創イノベーション棟にはすでに、若手研究者が集まる「SAKIGAKEクラブ」の交流会スペースをつくっていて。まだまだ周知が広がっておらず、利用が活発化していないのがネックですね。みなさんの意見を受けて、大学としてもカジュアルなつながりが広がる機会をもっともっとつくっていかないといけないなと、強く感じています。

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鈴木:阪大キャンパス内で交流を図ろうとすると、学外の方には地理的な問題もありますから。やはり交流の場をアクセスのよい梅田などに設けられるといいのでしょうね。仕事帰りにちょっとのぞいて行こうかなと思う企業の方も増えるでしょうし、この人とこの人を会わせるとおもしろそうだぞ、という連鎖的なつながりも生まれやすくなると思います。

的場:つながりの拡大を狙うなら、OB・OGを活かすことも有効ではないでしょうか。法学部卒業者の進路は、研究者から法曹関係者、多種多様な企業、官公庁まで、裾野が広いのが特徴。単にOB・OGが集まるだけでも、豊かなつながりが生まれるのではないかと思います。これと似て医学界も同窓のつながりが強そうだなと思っていたのですが、実際はどんな雰囲気なのでしょうか?

吉田:集まり自体は、確かに多いですね。ただ、日々の業務に関する情報交換が主で、最新研究の内容を話したり、学術的な刺激を受け取れたりする場にはなっていない、というのが正直なところです。標葉先生がおっしゃったようなポスター発表などを導入して、新しい技術やトピックスについてふれられるコンテンツをつくれば、変わってくるかなと思います。

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丸山:私は、医療関係者の方々と尿路結石の形成メカニズム解明・治療法の開発を目指す共同研究を行っているので、医学系の集まりに顔を出すことが、実は多いんです。はたから見ていて、医師という共通項があると、逆に言えないことも多々あるんだろうな、と感じます。

吉田:そうですね。同業者同士だからこその遠慮、みたいなものはあると思います。

丸山:だからこそ、そういった場所に、私みたいな異分子がポンっと飛び込むことが大事だと思っていて。医師の方々の常識にいい意味で捉われずに、私がなんでも聞いたり、言ったりする。すると、場が攪拌されて、議論が活発になっていくんです。

吉田:その分野では「当たり前」「常識」と思われていることが、実は他分野の方にとっては目新しく、インスピレーションの源になることって、多いですよね。私も、目下取り組んでいるプロジェクトで、医療機器メーカーの方々や、阪大の流体力学のプロフェッショナルとタッグを組んでいるのですが、こういった方々との会話がとても刺激的で。ディスカッションを重ねるたび、想像だにしなかった方向に話が向かっていって、驚くほどの発展を遂げるんです。分野を超えたつながりがイノベーションの起爆剤になることは、医療だけでなくどの研究分野においても揺るぎない事実だと思います。

アカデミアも、ビジネスも。 双方がメリットを得られる連携とは?

尾上:丸山先生は、臨床分野だけでなく半導体の素材となる結晶についてなど、情報通信関連の研究も行われていると思います。産業界の方々とのつながりが、自分に新しい知見をくれる、研究を広げてくれる、といったご経験も多いのではないでしょうか?

丸山:産業界の方々と連携させていただくたび、たくさんの刺激をいただけますし、自分たちの研究が社会に役立っているんだ!という確かな実感も得られます。ただ、分野を超えた研究者同士のつながりと比べると、産学連携においては、自分がまだまだ未熟だなと感じる瞬間が多いのも事実です。

鈴木:どういったところに、課題を感じていらっしゃるのですか?

丸山:産業界の方と研究を共にするからには、その企業に対して利益やメリットを生み出し、ビジネスとしてかたちにすることで、マネタイズをしなければいけないですよね。発見した技術や知識を、どう市場に展開していけばいいのか。どう需要を生み出していけばいいのか。そういった思考に関しては私自身、まだまだ勉強中です。契約や制約もありますから、「この情報は、どこまでオープンにしていいんだろう?」と悩んでしまうこともありますね。

吉田:研究者でありつつ、ビジネス思考もしっかりと持つ。そういった二刀流的な方は、相当少ないように思いますね。

丸山:そうなんです。研究者としては自分の武器やスタイルをある程度確立できていても、ビジネスの領域に飛び込むと、とたんに右も左もわからなくなるものですよね。

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尾上:研究者がアカデミアとビジネスの感覚を両方携えて、二刀流になれれば理想的ではあるのでしょうが、誰かがそばに立って、ビジネス的な部分を適切にサポートしていく、という考え方もありますよね。大学側が、そういった部分をより積極的に担うことで、産学連携がぐんと前に進む可能性も感じます。

的場:先ほど丸山先生から「契約」という言葉も出てきましたが、技術開発を行われている先生方にとって、法や政策はどのような存在に映っているのでしょうか?もちろん、法は私たちの人権を保障するために存在する大切なものなんですが、さまざまなルールが技術革新の妨げになってしまう、と感じられることも少なからずあると思うんです。法の専門家として、ぜひそのあたりのお話もお伺いしてみたいです。

鈴木:「どうやってそのルールをかいくぐって技術を前に進めるか」という視点で動いている方が多いのではないでしょうか。技術の進歩スピードが速すぎて、ルール整備が追いついていないことが、ほとんどだと思います。

的場:法律には、英米法系と日本が属している大陸法系という系統があって。英米法系では、まずは動く、それでトラブルが発生したら裁判に判断を仰ぐ、その裁判の結果が積み重なってルールがつくられていくというスタイル。逆に大陸法系はルールを先につくって、トラブルが起こった場合は既にあるそのルールを解釈して解決する、というスタイルなんです。

吉田:先んじてルールがつくられている安心感がある一方、対応が後手になるという特性がありそうです。

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的場:大陸法系の法ももちろん、時代や技術、人や社会の価値観の変化に合わせて、変わっていくものです。日本の民法なども、近年変化してきています。特に家族に関わる分野。DNA検査や生殖補助医療技術などの進歩に伴って、明治時代にできた民法が想定していない家族の形が生まれたりしていますので、それに合わせた法律の変化も求められています。ただ日進月歩の技術革新に追いつけるスピード感を法律に持たせるのは、原則的にどうしても難しいとは思います。だからこそ、法の専門家が技術発展の場に寄り添って、共に歩んでいける方法を模索する、というスタンスもこれからは必要になると考えています。

研究者のビジョンや技術を、 外の世界へと、発信する大切さ。

標葉:つながりを広げるために技術や知識をどこまでオープンにするかという議論は、個人的に「論文や報告書を公表し、知見をオープンにする=標準を取る」のか「知見や技術を独自に使用する=特許を取る」のかというところに帰着すると思っていて。その中で例えば特許を取ろうとすると、やはりおもしろいトピックスであっても、大々的にお話ししたり発表したりすることが、難しくなりますよね。大学は公的存在なので、産学連携を行うにあたっても、「特許」もですが、時により社会の全体を見据えた「標準」を取っていくべきではないかと思うんです。もちろん難しい取り組みにはなりますが。

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尾上:標準を取る、となると技術革新にあたってのプロセスや仕組みをオープンにして、一般化していくことになりますね。

標葉:はい。そういった思想に賛同してくれる複数の企業と産学連携を行うことで、マネタイズの機会を生み出すこともできることが期待できないでしょうか。情報をオープンにすればそれを参考にするプレーヤーが増えて、市場が育つことにつながります。市場が育てば、そのぶん経済も動く。そういった形で、標準を取りつつ、連携した企業の売上にも寄与できるんじゃないかと思うんです。先ほどの鈴木先生の測定技術などであれば、構築プロセスについての情報をオープンにするなどしたときに、多くの企業の方が興味をもってくださらないかなとか。

鈴木:なるほど。小さな対象物の熱を測ったり、変化を観測したりする私たちの研究は、対象物に対応した温度計を生み出すところからスタートしています。材料工学的な視点で見れば、研究のスタートラインに立つための過程がひとつの成果となっているので、おっしゃるように興味を持ってくださる方も、いるかもしれません。

吉田:やはり社会実装という観点では、産業界の方々の方が鋭い観点やおもしろいアイデアをたくさんお持ちですから、接点を積極的に増やしていくことは大切ですね。

鈴木:基礎研究を行いつつも、共同研究などを通じて技術を応用したアプリケーションの重要性を感じることは多々あって。以前、臨床系の研究者の方々と「悪性高熱症のメカニズム解析」に関する研究を行いましたが、これも測定結果を治療に役立てるという、アプリケーションの部分が見えているからこそ、持ち上がった研究でした。アカデミアの内部でつながりの多様性を育てていくことはもちろん大切ですが、研究成果を社会に役立つ技術として昇華していくといった意味では、医療であったり産業であったり、より社会に開いた場に私たち研究者が飛び出していくことも、重要だなと感じています。

的場:先生方のさまざまな意見から、研究者の思考を、外へ外へと発信していく重要性を実感しています。限られた時間ではありますが、今日こうやって皆さんとお話をしただけでも、「なるほど、技術開発を行われている方々は、法や政策に対してこんなニーズを抱かれているんだな」という、多くの発見がありました。

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尾上:つながりの起点として、情報発信が大きな力を持っていることが見えてきましたね。これからは、自分のビジョンや技術を世界と共有する能力も、研究者として求められるひとつの資質になっていくのかもしれません。

丸山:ただ、研究者全員がそうなる必要はないとも思うんです。発信やつながることに長けた人もいれば、専門領域を狭く深く掘り下げることに絶大な力を発揮する人もいる。大きな枠で見れば「研究者」として一括りにできる人たちの中にも、特性の幅があることで、多様性を持ったチームメイクができるし、そこから新たな発見や、驚くべき技術が生まれていくのだと思います。

尾上:そうですね。大局的に見たときに、豊かな多様性をもったチームが一番強い。そういったチームを生み出すために、大学側もある種の偶発的な出会いを生み出せる場づくり・機会づくりにもっと取り組まなければならないですね。先生方の率直な意見で、テーマである「つながり」に対する解像度がぐっと高まったと感じています。本日はどうも、ありがとうございました。

■デジタルパンフレットはこちらからご覧いただけます。

▼大阪大学 「OU RESEARCH GAZETTE」第2号
https://www.d-pam.com/osaka-u/2312488/index.html?tm=1

2023年11月29日