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レーザーで創る核融合、 中性子星の再現も

核融合反応にレーザーと磁力で挑戦

レーザー科学研究所・教授・藤岡慎介

藤岡慎介教授の研究の柱は、レーザーを使った核融合研究。最近、レーザーと磁力を組み合わせることで、非常に効率的に核融合反応を起こせる新しい方法を発見した。その方法による核融合の実現をめざして、2018年3月までアメリカのローレンス・リバモア国立研究所の客員研究員として、研究に取り組んでいる。また、実験室で中性子星の状態を再現する研究なども進めている。

レーザーで創る核融合、 中性子星の再現も

レーザー核融合との出会い

中学生の頃、アメリカの研究者が常温核融合に成功したというニュースが大きな話題になった。「常温核融合は海中に無尽蔵にある重水を使うので、エネルギー問題も解決するはずだと考え、常温核融合の研究ができる大阪大学に入学しました」。ところが入学直後に、1冊の本が出版され、「常温核融合に成功の根拠はない、もっとハッキリ言ってしまえば、ほぼ嘘だった」と知ったという。大いに落胆したが、気持ちを切り替え、現在はレーザーを使った核融合の研究に打ち込んでいる。

効率的に核融合反応を起こす

核融合には、5千万度や1億度という高温のプラズマ物質を作る必要がある。そのプラズマ物質を閉じ込めるには、「圧力で閉じ込める」「磁力で閉じ込める」という方法がある。  「この全く違う二つの方法を組み合わせ、非常に効率的に核融合反応を起こせることを発見しました。着想は単純ですが、レーザーで閉じ込めようとしているプラズマは強い圧力をもっている。そのプラズマをさらに磁力によって閉じ込めるには、地上最強の磁石がないとできません」。そこで、藤岡教授たちは最強の磁石をレーザーで作り、効率的に核融合反応を起こせることを実証した。

レーザー研究の魅力は多様性

多様な使い方ができる点もレーザーの魅力。パソコンやスマホの中で高速計算をする半導体デバイスの高性能化はその一つだ。「レーザーを使ってプラズマを作り、それを使って光の波長を短く変換する。その短い波長の光を使って、従来のものより細かい構造を半導体にレーザーで焼き付けます」

宇宙を再現する

さらに、宇宙物理学に貢献する研究も進めている。「中性子星の表面には、とんでもなく強い磁場がありますが、レーザーを使えば、中性子星と等価なものを実験室内で作れるかもしれないと思っています。現在観測されている現象を再現して、観測結果の背後にある物理現象の解明を実験室内でできるようにしたい」。これは、宇宙を再現する実験。高校生に講演する機会には、「お星様を作れるようになるよ。見るだけじゃなくて」と語りかける。

実験を担う学生へ

実験を担う学生には最新の知識を提供するとともに、議論の機会を増やすよう心がけている。「経験、知識は教員の方が豊富だが、アイデアは学生から出てくることが多い。学生が意見を言える場を作ろうと、いつも考えています」

藤岡教授にとって研究とは

なかなか勝てないが、勝つとうれしいゲームです。予測が当たったら楽しいし、予測しながら事前準備するのも楽しい。外れたらその理由を考え、次はこうしようと工夫します。

●藤岡慎介(ふじおか しんすけ)
2005年大阪大学工学研究科修了、博士。03年レーザーエネルギー学研究センター助教、11年同センター准教授を経て、15年より現職。

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(2018年2月取材)