受動喫煙による健康被害を防ぐには 多方面からのアプローチが必要
受動喫煙曝露を受けている人は生活習慣にも注意を!
研究成果のポイント
- 受動喫煙の曝露を受けている人は受けていない人と比較して不健康な生活習慣を持つことを発見
- これまで受動喫煙曝露者の生活習慣について詳細な調査はなされていなかった
- 受動喫煙による健康被害のより効果的な予防には、受動喫煙の曝露を防ぐだけでなく他の生活習慣の改善など多方面からのアプローチが必要
概要
大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの中西香織准教授らの研究グループは、受動喫煙の曝露を受けている人は不健康な生活習慣を持ちやすいことを発見しました。
受動喫煙の曝露で様々な健康被害が起こることはわかっていますが、これまで受動喫煙曝露者の生活習慣などの詳細な調査は行われていませんでした。
今回、研究グループは、受動喫煙の曝露を受けている人々を調査、分析しました。その結果、受動喫煙の曝露を受けている人は曝露を受けていない人に比べて不健康な食生活、飲酒習慣、喫煙習慣であることがわかりました。
これにより、受動喫煙の曝露を防ぐだけでなく、生活習慣の改善指導などを含む包括的なヘルスプロモーションが受動喫煙による健康被害の予防に重要であると考えられます(図1)。
本研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」に、9月11日(月)午後6時(日本時間)に公開されました。
図1. 受動喫煙による健康被害の予防には多方面からのアプローチが必要
研究の背景
受動喫煙の曝露は、悪性腫瘍、心血管疾患、慢性呼吸器疾患などの非感染性疾患(NCDs: Non-communicable diseases)発症の危険因子であることが知られていました。また、これらNCDs発症には、喫煙の他にも運動不足、不健康な食生活、過度の飲酒などの生活習慣が強く関係しています。さらに、これら不健康な生活習慣が複数あると健康にとってさらに深刻なダメージとなることが知られています。
このように、生活習慣の評価はその人の健康状態や今後の疾病の可能性を測る上で重要です。しかし、これまで受動喫煙の曝露を受けている人々における生活習慣の調査はあまりなされていませんでした。
研究の内容
研究グループは大阪大学男性職員で職員健診を受診した職員の内、同意の得られた基礎疾患のない2379人の職員健診データを利用して、受動喫煙の曝露を受けている人(368人)と受けていない人(2011人)について調査を行いました。生活習慣について詳細な解析を行ったところ、受動喫煙は複数の健康に関する生活習慣と関係することがわかりました。そこで、「受動喫煙あり」「受動喫煙なし」の群で生活習慣の違いについて評価を行いました。「受動喫煙あり」群は「受動喫煙なし」群に比べると朝食や野菜・果物を摂取する割合が低く、油物やアルコールを摂取する割合が高いこと、さらに喫煙者の割合も高いという結果が得られました(図2)。
そのため、受動喫煙の曝露を受けている人は受けていない人と比べて不健康な食生活、飲酒習慣、喫煙習慣であること、また複数の不健康な生活習慣を併せ持っていると考えられました。
図2. 「受動喫煙あり」群と「受動喫煙なし」群における生活習慣の違い
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
これまで受動喫煙による健康被害対策は、「受動喫煙の曝露を防ぐ」ことに注力されていました。本研究の結果から、受動喫煙の曝露を防ぐだけでなく、個々の生活習慣をきちんと評価し、生活習慣の改善指導などを含む多方面からのアプローチが対策として重要であると考えられます。本研究成果が受動喫煙による健康被害に対する新たな視点となることが期待されます。
特記事項
本研究成果は、2023年9月11日(月)午後6時(日本時間)に国際科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Association of secondhand smoke exposure and health-related lifestyle behaviors among male university employees in Japan”
著者名:Kaori Nakanishi, Chisaki Ishibashi, Seiko Ide, Ryohei Yamamoto, Makoto Nishida, Izumi Nagatomo, Toshiki Moriyama, and Keiko Yamauchi-Takihara
所属:大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-023-40873-4
参考URL
SDGsの目標
用語説明
- 非感染性疾患(NCDs: Non-communicable diseases)
悪性腫瘍、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病など「感染症ではない疾患」の総称です。全死因の70%以上がNCDsによると報告されています。NCDsの発症要因の中でも不健康な食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒などの生活習慣は改善可能な要因として重要視されています。