新型コロナウイルス感染症に対する新たな投与デバイスを用いた医師主導治験を開始

新型コロナウイルス感染症に対する新たな投与デバイスを用いた医師主導治験を開始

少量の DNA ワクチンで、より高い効果を

2020-12-22生命科学・医学系
医学系研究科

研究成果のポイント

・新型コロナウイルス感染症に対するDNAワクチンの医師主導治験(フェーズ1/2a)を開始
・新規ガス式無針投与デバイスによりDNAワクチンの皮内投与が可能となったことから、少量で効果的なワクチンの実現を目指す
・より多くの方に効果的なワクチンを届けるために必要不可欠な技術となりうる

概要

大阪大学大学院医学系研究科の中神啓徳寄附講座教授(健康発達医学)と山下邦彦特任准教授(常勤)(先進デバイス分子治療学)らの研究グループは、ワクチンに最適な投与デバイス開発を目指し、少量の火薬を駆動力とした無針投与デバイスの開発を進め、動物実験で皮内に高効率に遺伝子を高発現させることに成功しました。新型コロナウイルス感染症を標的としたDNAワクチンで、この新規無針投与デバイスを用いたところ、ラットでの検討において従来の筋肉内投与に比べて少量のDNAワクチンでより高い効果を得ることが出来ました。

そこで、この研究成果に基づき、11月25日から大阪大学医学部附属病院で新型コロナウイルス感染症に対する皮内投与デバイスを用いたDNAワクチンの医師主導治験(責任医師:感染制御部長朝野和典)を開始しました。本治療法の実用化により、皮内の細胞内に確実に薬液を送達することにより、より多くの方に効果的なワクチンが提供されることが期待されます。

今回の医師主導治験で用いるデバイスの治療技術は、米国科学誌「AAPS PharmSciTech. 2019年12月号」に掲載されています。

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図 新規皮内投与デバイスを用いた投与イメージ

研究の背景

DNAワクチンやRNAワクチンなどの核酸ワクチンはパンデミック感染症に対する迅速ワクチンとして期待されています。これらのワクチンは細胞内に効率よく核酸を送達させることが一つの課題となっており、デバイスやDrug Delivery System(薬物送達システム)を用いることで、より効果的なワクチンの実現を目指しています。

医師主導治験の概要

【目的】 新型コロナウイルス感染症に対するDNAワクチンは筋肉内投与での開発が先行しています。今回、新規投与デバイス(ガス式針なし医薬品・ワクチン用注入器)を用いて皮内投与することで、必要な接種量が5分の1から10分の1となる可能性があります。そこで、今回DNAワクチンの皮内投与での有効性および安全性の評価を行います。
【対象者】 20歳以上75歳以下の成人
【目標症例数】 皮内投与(低用量10例、高用量10例)
【実施期間】 令和2年11月25日から令和3年12月
【治験責任医師】 朝野和典(大阪大学医学部附属病院感染制御部長)

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大に対し、ワクチン開発が世界中で行われています。現行のワクチンは一般的に筋肉内投与あるいは皮下投与で実施されますが、皮内には免疫担当細胞が多く存在しており、皮内に正確にワクチンを投与できれば少量で効率よく免疫を誘導できることが期待されます。この新規デバイスをワクチン治療に有効に活用できることが分かれば、より多くの方にワクチンの提供が可能となります。

特記事項

今回治験で用いるデバイスの治療技術については、2019年12月に米国科学誌「AAPS PharmSciTech.」に掲載されています。

【タイトル】 Stable Immune Response Induced by Intradermal DNA Vaccination by a Novel Needleless Pyro-Drive Jet Injector.
【著者名】 Chang C, Sun J, Hayashi H, Suzuki A, Sakaguchi Y, Miyazaki H, Nishikawa T, Nakagami H, Yamashita K, Kaneda Y
【所属】
大阪大学 大学院医学系研究科 先進デバイス分子治療学 大阪大学 大学院医学系研究科 健康発達医学
大阪大学 大学院医学系研究科 遺伝子治療学

新型コロナウイルス感染症に対するDNAワクチンの基礎研究および医師主導治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成金を用いて実施されています。

【事業名】 創薬支援推進事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」
【研究開発課題名】 新型コロナウイルス(COVID-19)を標的としたワクチン実用化開発
【実施施設】 アンジェス株式会社、大阪大学大学院医学系研究科、大阪大学微生物病研究所

参考URL

医学系研究科 健康発達医学HP
http://www.cgt.med.osaka-u.ac.jp/vme/index.html

用語説明

DNAワクチン

標的とする抗原タンパクの遺伝情報をベクターと言われる運び屋に入れて、生体内に投与することにより抗原タンパクを体の中で発現させ、そのタンパクに対する抗体産生などの免疫反応により疾患予防を目指すワクチン。

皮内投与

皮膚の表皮と真皮の間に薬液を投与すること。一般に皮内には免疫細胞が多くワクチンに対する反応性が高いことが知られている。

無針投与デバイス

薬液を急速に体内に注入することにより、針を使うことなく薬液だけで皮膚を通過されることが出来る技術。今回は火薬を駆動力として急速に薬液を体内に注入し、さらに皮内で遺伝子を高発現させるように設計されたデバイスを使用している。