子宮頸がんとHPVの“今”を知ろう
「ちょっとミミヨリ健康学」Column Entry No.014
医学系研究科 産科学婦人科学教室 特任助教(常勤) 八木麻未
身近な健康・医療情報を、大阪大学の研究者がちょっとミミヨ リとしてお届けするコラム。
CMなどで「子宮頸がん」という病気をよく耳にするようになりました。最近、20代から40代の子宮頸がん患者さんが増加しています。つまり、初めて子どもを出産する前に子宮頸がんにかかる人が非常に多いということです。子宮摘出術または放射線療法などで治療を始めますが、ごく初期の一部の症例以外では妊娠能力を失い、様々な合併症も伴うため、治療後も大変な思いをされる方が多くおられます。多くの患者さんが悲しい思いをされる姿を見て、私も胸がしめつけられる思いをしてきました。
子宮頸がんは、ワクチンで予防できる数少ないがんの一つです。
がんの原因は生活習慣や遺伝というイメージがありますが、子宮頸がんは主に発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することをきっかけに発症します。このため、他の感染症等と同様にワクチンによって感染そのものを防ぐことで、子宮頸がんの発症をほぼ抑えることができます。
子宮頸がんの一次予防としてのHPVワクチンは、小学校6年生から高校1年生に該当する女性が定期接種の対象です。過去、一部報道等の影響で積極的な接種推奨が控えられた期間があったため、今の若年層の方には接種機会を逃した方が非常に多くおられます。このような方のためのキャッチアップ接種が2022~2024年度にかけて実施されています。1997年以降に生まれた女性は自治体からの案内などを確認し、機会を逃さず接種してください。
二次予防として、20歳以降2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。ただ、この検診により早期発見でき子宮頸部の部分的切除(円錐切除)によって治療ができたとしても、その後の妊娠で早産のリスクが一般の約4倍に高まる可能性があります。まずはHPVワクチンによってHPV感染自体を予防することが重要と考えています。
子宮頸がんやHPVワクチンについてもっと知りたい、心配なことや気になることがあるという方は、CiDERのサイトや公式YouTubeなどでも詳しく解説していますので、ぜひのぞいてみてください。また、もしHPVワクチン接種後に心配な症状が生じたらまずは接種を行った医師やかかりつけ医に相談してください。
子宮頸がんは予防できる病気です。正しい知識と行動で、大切な体を守りましょう。
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大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学教室
産婦人科は、細胞生物学、内科的・外科的治療、鏡視下低侵襲手術まで幅広い技術を駆使して病気と闘い、妊娠の成立過程から出産・産後まで、思春期、性成熟期、更年期、老年期までのすべての段階で女性の幸せと健康を守る診療科です。
【前回】ちょっとミミヨリ健康学⑬ 「春の“こころの不調”にご用心」
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2023/nl90_mimiyori_vol13
大阪大学NewsLetter
阪大StroyZ
阪大生にも、研究者にも、卒業生にも誰しも必ずある“物語”。その一小節があつまると大阪大学という壮大なドキュメンタリーを生み出します。
(本記事の内容は、2024年9月発行の大阪大学NewsLetter91号に掲載されたものです )