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春の“こころの不調”にご用心

「ちょっとミミヨリ健康学」Column Entry No.013

医学系研究科 精神医学教室 講師 髙橋隼

身近な健康・医療情報を、大阪大学の研究者がちょっとミミヨ リとしてお届けするコラム。

春の“こころの不調”にご用心

春の嵐、春一番、などの言葉にあるように、冬から春にかけては穏やかでない天候になることもあり、春先は気持ちも少々落ち着きにくい季節です。卒業、入学、進級、入職、部署異動など、3月から4月にかけての年度変わりは環境が変わって、自分が新しいコミュニティーに飛び込むこともあれば、人を迎え入れることもあるでしょう。

新しい出会いは素敵なものですが、やっぱりちょっと緊張したり、不安になったりして、知らず知らずのうちに疲れをためてしまいます。なかなか寝付けない、食事がおいしくない、気分が沈んで憂うつな気分になる、何をするにも元気が出ない、などはこころの不調のサインかもしれません。こころの不調を感じたら、まずはゆっくりと休み、そして少しずつでも生活リズムを整えていくことを意識しましょう。

日本には睡眠時間が足りていない人が多くいます。「健康づくりのための睡眠ガイド2023」1)では、成人は6時間以上の睡眠時間を推奨していますが、2019年の調査では1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合が男性37.5%、女性40.6%となっており、男性の30-50代、女性の40-50代では4割を超えています2)。まずはしっかりと睡眠時間を確保することが重要です。

軽い運動はこころと体をリラックスさせ、適度な疲労は睡眠の質を向上し、生活リズムを整えることにも有用です。「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」3)では成人に1日8000歩以上の身体活動と週2~3日の筋力トレーニングを推奨していますが、短い運動時間の積み重ねでも健康増進効果はあるので、少しずつでも日常に運動習慣を取り入れていきましょう。

食生活も大切です。普通の身体活動レベルの成人男性で2600kcal、成人女性で2200kcalの摂取が推奨されています。もちろんバランスの良い食事が大事で、「食事バランスガイド」4)を参考にしてみてください。食事時間は生活リズムにも直結します。とくに朝食は1日のリズムづけにとても大切なので欠かさないようにしましょう。

新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したことに伴って、控えられていた様々な会合や催しが開かれるようになっていますが、新しい日常への適応は相応にエネルギーをつかうものです。まずはスロースタートを心がけて、無理せず新生活のペースをつかんでいきましょう。

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■参考URL

大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室

当教室は、神経心理、神経化学、認知行動生理、児童青年期(精神病理)、生物学的精神医学、脳波睡眠と多くの研究室を構え、幅広い研究手法を用いて認知症、統合失調症、気分障害、発達障害、睡眠障害、など様々な精神疾患の病態解明と治療法の開発を目指しています。診療面においても老年精神医学、総合病院精神医学、臨床脳波、睡眠、児童精神などの専門家が共同して質の高い診断・治療を提供し、若手医師の育成を担っています。

https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/psy/

【前回】ちょっとミミヨリ健康学⑫ 「骨盤臓器脱、ひとりで悩まないで」

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2023/nl89_mimiyori_vol12

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(本記事の内容は、2024年2月発行の大阪大学NewsLetter90号に掲載されたものです )