\子どもからお年寄りまで研究内容を楽しめます!/ 児童相談所を応援する無料コミックを出版

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児童虐待が起こらない「やさしい未来へ」

2024-8-2社会科学系
人間科学研究科准教授綿村 英一郎

研究成果のポイント

  • 児童相談所など児童虐待に対応する関係機関ではたらく人たちの姿をコミック化
  • 意識調査やインタビューなどの研究結果に基づき、市民ができることをわかりやすく説明
  • 児童相談所に対する市民の理解や児童虐待への関心を研究の力で底上げし、児相の後方支援を担えるような社会システムの構築を目指す

概要

大阪大学大学院人間科学研究科の綿村英一郎准教授、国際教育交流センターの井奥智大特任助教、摂南大学の田中晶子教授、周南公立大学の羽渕由子教授、福山大学の向井智哉講師らの研究グループは、児童相談所(以下、「児相」。)など児童福祉に携わる人たちの活躍をコミック化し、Amazon Kindle版で無料公開しました。

児童虐待の報道があるたびに批判の矢面に立たされる児相。慢性的な人材不足などに加えて、市民からの理解が得られない状況も児相を追い込む要因になっています。虐待を防ぐためには、対応の最前線に立つ児相を社会が応援し、市民一人ひとりができることを考える必要があります。

綿村准教授らは、市民を対象とした意識調査や児相職員へのインタビューなどの研究を通じてわかったことを論文としてはなくコミックとして書き起こしました。作画はプロの漫画家が担当しており、全8章100ページ超の本格的なコミックです。 

コミックは、Amazon Kindle版で無料公開中です。また、ストーリー構成のもととなった意識調査の結果の一部は日本パーソナリティ心理学会が発行する学術雑誌「パーソナリティ研究(2024年32巻3号)」でも公開されています。

記者発表は行いませんが、個別の取材には応じています。今後の計画、コミックの魅力などお話しできることはたくさんあります。取材をお待ちしております。

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図. 無料公開されたコミックの表紙と内容の一部

研究の背景

今日、児相は苦境に立たされていると言われています。慢性的な人材不足や業務の肥大化に加え、なによりも児相に対する「市民の理解」が追いついていない状況にあります。ひとたび事故が起きれば「対応に問題があった」などと批判されがちな児相ですが、その陰で子どもの福祉を守るために懸命にはたらく職員たちがいます。児相に任せきりで、何かあれば批判するだけでいいのでしょうか?児童虐待を防ぐために私たちができることはないのでしょうか?

研究の内容

綿村准教授らの研究グループでは、公益財団法人トヨタ財団からの研究助成を受け、児童虐待と児相の理解のために新しい啓発コンテンツを作りました。社会に広く知ってもらうためには、手軽で、わかりやすいコンテンツである必要があります。綿村准教授は、(自らの趣味の)コミックとして研究成果を発信しようと思いつきました。そこで、現役の児相職員や児童福祉に関わるたくさんの人たちにインタビューを行いました。さらに、市民を対象とした意識調査も行い、その分析結果をもとにストーリーを構成しました。子どもへの聴き取り(司法面接)を研究するグループも加わり、読みやすいながらも専門的な内容になっています。

コミックの作画は、プロの漫画家で大学教員でもある、なかはらかぜ教授(周南公立大学)とアシスタントの皆さんが担当しました。ストーリーの書き起こしは2023年の春から始まりました。そしてついに、この6月に全8章100ページ超の作品がAmazonから出版されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

子どもたちのいのちと福祉を守ることができます。もちろん、直接という意味ではありません。しかし、私たちが児童虐待への対応の難しさを知り、児相に(ポジティブな)関心をもつことで、社会全体が間接的に児童虐待の防止に関われるようになります。コミックには、私たち一般市民が気をつけたいことや司法面接のノウハウなども含まれています。コロナ禍で明るみになったように、私たちの社会は「あって当たり前」、「できて当たり前」とみなされがちな多くの仕事で成り立っています。そういう仕事の重要さ、大変さ、ありがたさに気づくきっかけにもなるでしょう。

特記事項

本コミックは、2024年6月にAmazon Kindle版で無料公開されました。

タイトル:“やさしい未来へ”
著者名:綿村英一郎(原作)、なかはらかぜ(漫画)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CW18PLN7?binding=kindle_edition&ref=dbs_dp_sirpi

本研究は、公益財団法人トヨタ財団2022年度研究プログラム「つながりがデザインする未来の社会システム ニューノーマル時代に再考する社会課題と新しい連帯に向けて」の助成を受けて行われました。プロジェクトには、赤嶺亜紀教授(名古屋学芸大学)、井奥智大特任助教(大阪大学)、岩谷舟真講師(関西学院大学)、田中晶子教授(摂南大学)、羽渕由子教授(周南公立大学)、松木祐馬助教(中部大学)、向井智哉講師(福山大学)、湯山祥助手(早稲田大学)が参加しています。

参考URL

SDGsの目標

  • 03 すべての人に健康と福祉を
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 16 平和と公正をすべての人に