1人よりも2人のほうが「かわいい」? 対象間のつながりが見えるとよりかわいいと感じられる
複数で活動するロボットの振る舞い設計に貢献
研究成果のポイント
概要
大阪大学大学院人間科学研究科 入戸野 宏 教授ら、ATRインタラクション科学研究所エージェントインタラクションデザイン研究室 塩見 昌裕 室長は、共同研究で、見た目の似ている対象が複数存在するとき、その対象の間でつながりを感じられる状況において、より「かわいい」と感じられることを、写真および動画を用いて明らかにしました。
対象(女の子、男の子、サクランボ、ロボット)の数が1つの場合、2つでただ並んでいる場合、2つでつながりを感じさせるように並んでいる場合の写真を用いてWEB上でアンケートを収集する実験を行いました。実験の結果から、対象の種類にかかわらず、2つの対象がつながりを感じさせるように並んでいる場合に、もっともかわいいと評価されました。さらに、1台から10台までロボットの台数を増やしたところ、2台のときにもっともかわいいと感じられることが分かりました。
今後、ますますロボットが社会で活躍するようになる中、よりかわいく親しみを感じてもらえるロボット設計に貢献すると期待されます。
本研究成果は、オンライン学術誌PLOS ONE に、10月19日(木)に掲載されました。
図1. 見た目が似ている複数の対象がただ並んでいる(左)よりも、 つながりが見える(右)ほうが、人はより「かわいい」と感じる。
研究の背景
「かわいい」という感情は、人と人、人とモノの交流を促します。近年普及が進んでいるペットロボットも、その多くが愛くるしく、かわいらしい見た目が採用されています。では、人にかわいいと感じてもらうためには、どのような要素が重要なのでしょうか? 身体に比べて大きな頭、丸みを帯びた顔や体形、前方に突き出た広い額といった乳幼児の特徴(ベビースキーマ)に代表されるような、見た目の要素だけでかわいいと感じられる程度が決まってしまうのでしょうか。
私たちは、かわいいと感じられる見た目以外の要素を探索する中で、数と関係性の効果に着目しました。たとえば、1粒でぽつんと置かれているサクランボよりも、2粒のサクランボが房でつながって置かれているほうが、かわいいと感じられます。また、複数の動物の赤ちゃんが楽しそうにじゃれている様子は、動物の赤ちゃんが1匹でいる場合よりも、かわいいと感じられるでしょう。すなわち、複数の対象につながりがあるように見えると、人はその対象をよりかわいいと感じるのではないか、という仮説を立てました。
研究の内容
この仮説を検証するために、3つの実験を行いました。実験1では、女の子、男の子、サクランボ、ロボットがそれぞれ単体(1つ、1人、1台)の場合、2つがただ並んでいる場合、2つがつながりを感じさせるように並んでいる場合の画像を用意し、どのくらいかわいいと思うかをWEBアンケートで評価しました。実験には201名の被験者(女性99名、男性101名、無回答1名、年齢は20~60歳代)が参加し、データに不備のない162名のデータを分析しました。その結果、どの対象においても2つがつながりを感じさせるように並んでいる場合のほうが、単体または2つがただ並んでいるときよりも、かわいいと感じられることが示されました。
実験2では、ロボットが手を振ってあいさつする様子の動画を、1台の場合、2台がただ並んでいる場合、2台がつながりを感じさせるように並んでいる場合で作成し、どのくらいかわいいと思うかをWEBアンケートで評価しました。実験には202名の被験者(女性100名、男性100名、無回答2名、年齢は20~60歳代)が参加し、データに不備のない179名のデータを分析しました。その結果、動画であっても、2つがつながりを感じさせるように並んでいるときのほうが、単体または2つがただ並んでいるときよりも、かわいいと感じられることが示されました。
実験3では、つながりを感じさせるロボットの台数を1台から10台まで変化させて検証を行いました。2つ目の実験と同様に、ロボットが手を振ってあいさつする様子の動画を用いて、どのくらいかわいいと思うかをWEBアンケートで評価しました。実験には200名の被験者(女性98名、男性102名、年齢は20~60歳代)が参加し、データに不備のない152名のデータを分析しました。その結果、2台のときがもっともかわいいと感じられることが示されました。
図2. ロボットをかわいいと思う程度は、台数と見た目の関係性に影響された(実験1)。
*は有意差があることを示す。
本研究成果の意義
本成果は、ロボットという人工物であっても、複数台による関係性の表出を行うことで、よりかわいいと感じてもらえることを示しています。工業製品であるロボットは、個体の見た目を工夫することでかわいさを高めることには限界があります。しかし、同じものを量産できるというメリットを生かし、他のロボットと連携させることで、よりかわいく親しみやすく感じられるようになるという今回の知見は、今後、社会にロボットを普及させていくときの一つの方向性を示しています。
特記事項
本研究成果は、オンライン学術誌PLOS ONE に10月19日(木) 日本時間午前4時に掲載されました。
タイトル:“Is two cuter than one? Number and relationship effects on the feeling of kawaii toward social robots”
著者名: Masahiro Shiomi、 Rina Hayashi、 and Hiroshi Nittono
塩見 昌裕(ATR)、林 里奈(大阪大学/ATR)、入戸野 宏(大阪大学/ATR)
DOI:https://doi.org/10.1371/journal.pone.0290433
本研究は、JST戦略的創造研究推進事業(CREST:ソーシャルタッチの計算論的解明とロボットへの応用(研究代表者:塩見 昌裕、JPMJCR18A1))と科研費(基盤A:「かわいい」感情の効用とその実社会応用に関する研究 (代表:入戸野 宏))の研究プロジェクトの一環として実施されました。
参考URL
入戸野 宏 教授
研究者総覧 https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/a5bee7005ec582b7.html
研究室 https://cplnet.jp