ビッグデータ時代の物質・材料研究

ビッグデータ時代の物質・材料研究

マテリアルズ・インフォマティクスの幕開け

2017-2-21

本プロジェクトの概要と協働のポイント

・産業科学研究所の企業リサーチパークに拠点を置く、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)のサテライトオフィスと協働・連携して、マテリアルズ・インフォマティクスの取り組みを進めています。
・革新的な技術展開を基盤に新材料の研究開発がなされていますが、特に材料の素となる資源確保に複雑な要因が絡むわが国では、元素戦略的視点からの取り組みが重要となってきています。性能の高さだけを追っていた時代はもはや終わりを告げ、人類・社会の持続性を見据え、ターゲットを意識した材料の研究開発が求められています。
・材料開発の加速化を狙った計算科学とデータ科学 との融合に基づく材料探索について現状を紹介し今後を概観します。

大阪大学産業科学研究所産業科学ナノテクノロジーセンターナノ機能予測研究分野の小口多美夫教授らのグループは、磁性材料 (磁石・スピントロニクス材料)に関して、NIMSに拠点を置く、情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI 2 I)プロジェクトで連携を図り、効率的な推進を目指しています。具体的には、産研企業リサーチパークに常駐するNIMSポスドク研究員2名と、連携研究を継続的に進めています。MI 2 IプロジェクトのNIMSサテライトオフィスと位置付けられている本連携研究のスペースは、同プロジェクトで産学官連携の場を提供し、関西圏におけるコンソーシアムの活動で中心的な役割を果たしています。

図1

研究の背景

NIMSの情報統合型物質・材料研究拠点は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「イノベーションハブ構築支援事業」推進のため、2015年4月に設置されました。この拠点は、現在の物質・材料研究を未開拓な科学領域であるデータ駆動型(情報統合型)へと変革させる潮流を受け、データ科学をこれまでの物質・材料科学に融合させることにより、新物質・材料科学研究を加速する取り組みの場を提供しています。本拠点で進める情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI I:”Materials research by Information Integration”Initiative)では、データベースを開発・整備するだけでなく、物質・材料科学から情報・数理科学にわたる産学官の協働作業の体制を構築し、より広範な企業の参画を促し、オープンイノ ベーションにつながるハブ拠点化を目指しています。具体的出口課題としては、画期的な①蓄電池材料 、②磁性材料、③伝熱制御材料 ※4 を開発して社会実装へつなげ、平行して、新しい物質・材料科学手法の開発・蓄積を進め、情報統合型新物質・材料開発手法のパッケージ化・システム化を行い、上記具体的課題の実現を支援します。将来的には、より広範囲の物質・材料系へ展開し、人工知能の基礎技術等を取り込みながら、情報統合型物質・材料開発のさらなる発展とその普及、それに関わる人材育成を組織的に展開し、拠点の持続的発展に向けて取り組んでいます。

図2

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

MI 2 I拠点のサテライトが阪大産研に設置されたことは、産研にとっても新たな学術研究活動の機会を生み、MI 2 Iプロジェクトの産学官連携への輪の広がりに資すると共に、大阪大学データビリティフロンティア機構の研究活動との相乗効果が期待されています。

参考URL

産業科学研究所 産業科学ナノテクノロジーセンター ナノ機能予測研究分野(小口研究室)
http://www.cmp.sanken.osaka-u.ac.jp/index_jp.html

用語説明

データ科学

実験科学、理論科学、計算科学に継ぐ第四の科学として、機械学習や人工知能のアルゴリズムを手法として広く科学・工学分野での応用が進められている。

磁性材料

ネオジム磁石を代表とする強力永久磁石材料、非希土類永久磁石材料、不揮発性磁気メモリデバイス等の次世代スピントロニクス材料。

蓄電池材料

リチウムイオン電池を代表とする二次電池(充放電可能な電池)の材料で、電池の正極、負極、電解質を構成する材料。

伝熱制御材料

高熱伝導率を有する放熱材料、低熱伝導率を有する断熱薄膜材料、ユビキタス元素系熱電材料。