2015年10月13日

本研究成果のポイント

・移動・回転する立体に、あたかも映像が張り付いたかのように動画表示できるプロジェクションマッピング技術を開発
・動く立体へのプロジェクションマッピングは、動いている立体の3次元空間での位置と姿勢をきちんと計測する必要があり、技術的に難しい課題の一つだった
・動く車や、人が着用している衣服へのプロジェクションマッピングが実現でき、より訴求力のある広告や、工業デザインプロセスの効率化に期待

概要

大阪大学大学院基礎工学研究科の岩井大輔准教授、佐藤宏介教授らの研究グループは、動く立体にプロジェクションマッピングする技術を開発しました(図1)

図1 3Dプリントしたマーカー付き立体
左:通常照明下での見え、右:提案するプロジェクションマッピング結果

この技術では、まず、プロジェクションマッピングする対象をフルカラー3Dプリンター※1 から出力します。このとき、同時に特殊な形のマーカーをその上に印刷します。このマーカーをカメラで読み取ることで、プロジェクタからの映像を動く立体に位置合わせします。物体が移動したり回転しても、プロジェクションされる模様があたかもはりついているかのように映像が切り替わります(図2) 。さらに、そのままだと投影された映像コンテンツを阻害してしまうマーカーですが、プロジェクタからの映像でマーカーを視覚的に消す補正技術を開発しました。

図2 (a) マーカーごと3Dプリントされた立体と、(b)(c)(d)様々な位置姿勢でのプロジェクションマッピング結果

移動・回転する物体に、あたかも映像が張り付いたかのように動画表示できるプロジェクションマッピングを実現することは、これまで技術的に困難と考えられてきました。本研究成果により、移動する立体物への投影や、実際に着用した状態を想定した衣服の試着が可能になるなど、訴求力のある広告や、工業デザインプロセスの効率化が期待されます。

本研究成果は、10月22日(木)から日本科学未来館にて開催された「デジタルコンテンツエキスポ」で展示発表されました。さらに、コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関するアジア最大の学術国際会議・展示会であるSIGGRAPH ASIA 2015にて、11月3日から神戸国際展示場にて展示発表を行いました。

研究の背景

移動・回転する物体に、あたかも映像が張り付いたかのように動画表示できるプロジェクションマッピングを実現することは、これまで、技術的に困難と考えられてきました。動く立体へのプロジェクションマッピングでは、投影された映像の位置合わせが重要な技術課題です。これを実現するために、投影対象のプロジェクタに対する3次元空間での位置と姿勢を常に計測し続ける必要があります。これまで、様々な手法が適用されてきましたが、そのほとんどは、マーカーやセンサーを投影対象に手動で取り付ける必要があり、取り付け時の位置ずれが避けられず、結果的に投影結果がきちんと位置合わせできませんでした。さらに、取り付けられたマーカーやセンサーに映像が重なり、プロジェクションマッピングの画質劣化を引き起こしていました。

佐藤教授の研究グループでは、色や模様も印刷することのできるフルカラー3Dプリンター技術を適用することで、上記の問題を解決することに成功しました。具体的には、3Dプリンターから投影対象を出力する際に、同時にカメラで読み取ることのできる特殊なマーカーをその表面に印刷する技術を開発しました。このマーカーを画像計測して動く立体の3次元空間での位置と姿勢を計算します。マーカーは、機械精度で決められた位置に印刷できるため、従来の位置ずれ問題が解決できます。

さらに、プロジェクタ色補正技術※2 を適用することで、マーカーを視覚的に陰消する技術も開発しました。この技術によって、印刷されたマーカーが視認されなくなり、投影結果の画質劣化を避けることができます。実際に投影対象をフルカラー3Dプリンターから印刷して実験を行った結果、マーカーを陰消しつつ、移動・回転する物体に対して、その動きに合わせて映像を投影し続けられることを確認しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果によって、動く立体へのプロジェクションマッピングが可能になり、以下の様々な用途への応用が期待されます。

1.プロジェクションマッピングを利用した広告

既にプロジェクションマッピングは広告媒体としても有力なツールとなっていますが、動く立体にプロジェクションマッピングできるようになると、その用途は更に広がります。例えば、移動する車にプロジェクションマッピングして広告映像を表示することなどが挙げられます。

2.工業製品試作の効率化

工業製品の試作では、プロジェクションマッピングを用いることで、様々な模様や色・質感を瞬時に切り替えてデザインを確認することができます。本研究成果を利用することで、試作品を動かしながらデザインを確認することができるようになるため、より詳細な検討を行うことができます。例えば、衣服の模様のデザインを、実際に着用した状態で確認することができるようになります。これによって、日本のものづくりを支えることを目指しています。

特記事項

本研究の成果は、経済産業省が募集した我が国の優れたコンテンツ技術を発掘・評価する“Innovative Technologies 2015”で、我が国の優れた20のコンテンツ技術の一つに採択されました。10月22日より日本科学未来館にて開催された、デジタルコンテンツエキスポで、展示発表を行いました。さらに、コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関するアジア最大の学術国際会議・展示会であるSIGGRAPH ASIA 2015にて、11月3日から神戸国際展示場にて展示発表を行いました。

◆ デジタルコンテンツエキスポ展示情報 (http://www.dcexpo.jp/exhibition_index

◆ Innovative Technologies 2015採択者一覧
http://www.dcexpo.jp/cms/wp-content/uploads/2015/09/1ca42608be991eb869df3ae9eb36bd65.pdf

◆ SIGGRAPH ASIA 2015日本語ページ(http://sa2015.siggraph.org/jp/

用語解説

※1 フルカラー3Dプリンタ
形だけでなく色や模様も印刷できる3Dプリンタ。

※2 プロジェクタ色補正技術
模様のついた壁などに映像を投影する際に、その模様が投影結果に浮かび上がらないように、投影画像の色を画素毎に補正する技術。佐藤教授の研究グループが世界に先駆けて開発。

参考URL

大阪大学大学院基礎工学研究科 佐藤宏介 研究室
http://www.sens.sys.es.osaka-u.ac.jp/

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