2013年7月10日

リリース概要

大阪大学大学院医学系研究科外科学講座(消化器外科学Ⅰ:森正樹教授と山本浩文准教授ら)とその関連グループは、大腸がんのリンパ節に早くから存在する微小転移が、第2病期大腸がん患者さんの術後の再発率を規定することを関連施設で前向き臨床試験によって明らかにしました。今後、分子診断によって再発に注意すべき患者さんの特定ができ、適切な予防対策を講じることが期待されます。

研究の背景・内容

大腸がんは手術でがんを取り去っても一定の割合で転移・再発を来たします。そのため、がんと同時に切除したリンパ節に転移巣ができている場合には第3病期と位置付けられ、術後抗がん剤治療を追加し再発を予防しています。一方で、リンパ節転移のない第2病期でも、15-20%ほどの患者さんは手術後に転移・再発しますが、通常、第2病期では予防的な抗がん剤治療は行われず、患者さんは不安になりながら5年間経過を観察することになります。一方、第3病期では約30%に再発が見られ、全員の患者さんに抗がん剤治療が適用されています。

リンパ節の転移診断は顕微鏡でリンパ節の最大割面を1-2枚観察して、がんの巣が見つかるかどうかで判断します。しかし、病理検査でリンパ節に転移巣が見つからなくても、より小さな転移の芽が生じていることが考えられます。実際、詳しく調べると、がん細胞を染色法で検出する方法では小さな転移巣(微小転移)が見つかってきます。

当研究グループは、第2病期で手術を受けた約300例の大腸がん患者さんのリンパ節をRT-PCR法という分子生物学的検査によって調べ、微小がんの程度を定量測定し、5年以上転移・再発の有無を経過観察した後に、微小転移量との関係を調べました。その結果、リンパ節にがんのないグループ、がんの多いグループ、その中間のグループで、リンパ節中のがん細胞量に応じて転移・再発が増加してくることがわかりました。

図1 病理検査では最大割面を観察してがんの転移を診断する。微小転移は多切片を免疫染色したり、リンパ節をすりつぶしPCR法によって検出できる。PCR法では転移細胞の量を測定することもできる。

図2 リンパ節中のがん細胞量の少ない場合、5年以内の再発率は6.6%であるが、がん細胞量が多い場合、27.4%に達する。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

この研究の結果、第2病期であってもリンパ節中のがん細胞が多い人は再発のリスクが高いことが、はじめて信頼性の高い前向き臨床研究で明らかとなり、第3病期に準じて予防対策を講じるなどの備えを考慮する目安となることが期待されます。アメリカの臨床腫瘍学会(ASCO)では10年前から第2病期大腸がんに対する再発危険群の同定のための臨床研究が必要と謳っていましたが、これまでに臨床応用可能なレベルの成果は達成されたことはありませんでした。人手や手間の問題や、不安定なRNAを扱う試験精度の困難さから他では実現しない臨床試験を、大阪大学とその関連施設が同門のチームワークで10年の歳月をかけて成し遂げた結果です。術後、抗がん剤なしで再発の心配に悩まされる大腸がん患者さんにとっては朗報となるでしょう。

特記事項

この臨床試験の結果は、2013年7月18日(木)第68回日本消化器外科学会総会シンポジウム1 「消化器癌治療における日本からのエビデンスの発信―Oncologic ResectionやRCTの結果からみえてきたもの―」で公表予定です。

また大阪大学大学院医学系研究科外科学講座(消化器外科学Ⅰ)では、この臨床研究の結果をふまえ、大腸がん手術を受ける患者さんに対して微小転移のルーチン検査を計画しており、近く開始予定です。

参考URL

大阪大学 大学院医学系研究科 外科学講座(消化器外科学)
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gesurg/index.html

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