2016年2月11日

本研究成果のポイント

・がんに対する革新的治療を可能とする、がんの性質を網羅的に理解するための数理解析※1 基盤を構築
・がん幹細胞が有する薬剤耐性の根底をなす特有の代謝機構(ポリアミン代謝機構※2 )を同定
・数理解析手法を用いることで、革新的な創薬ターゲットを特定し、がんの完治・根絶への貢献が期待される

リリース概要

がん幹細胞はがんの親玉的な存在であり、がん幹細胞をたたかない限り繰り返し再発を引き起こす悪の根源です。がんを制圧し、よりよい社会を実現するためには、このがん幹細胞が創薬上の重要な標的となります。しかしながらその性状に関しては、まだよくわかっていない点が残されていました。

大阪大学大学院医学系研究科癌創薬プロファイリング学共同研究講座の小関準特任助教(常勤)、石井秀始特任教授(常勤)の研究グループは、同外科学講座(消化器外科学)の森正樹教授、土岐祐一郎教授らとの協働研究により、がん幹細胞の新しい治療法を確立するための数理解析基盤を構築し、がん幹細胞の複数の大容量情報間の関連性(トランスオミックス※3 )解析を進めることにより、新たな創薬標的として、細胞増殖に関わるポリアミン代謝機構の重要性を明らかにしました。

具体的には、細胞内のポリアミン総量が増すとがんの細胞死が誘導されることが知られていますが、がん幹細胞は自身を守るために代謝を制御し、ポリアミン総量を調整することが本研究で初めて見出されました。

今後、がん幹細胞がこの代謝を制御できないように代謝阻害剤開発を進めることで、現行の抗がん剤での治療法で効果が得られないがんに対しても、がん幹細胞を撲滅することでがんの完治に貢献できることが期待されます。

本研究成果は英国の科学誌「Scientific Reports」の電子版に2016年2月11日(木)に掲載されました。

図 構築された新規数理解析法から判明した抗癌剤が効かなくなる原因を創薬ターゲットとして、がんが完治するまでの概念図

研究の背景

がん幹細胞に関して、遺伝子や代謝などの複数の大容量データ(ビッグデータ)が取り扱われるようになってきています。そのような属性の異なる大容量データ間(オミックスデータ※4 )の関連性を明らかにするためには、数学的な手法や統計的な手法を駆使して計算をかさね、測定で得られた値の意義を吟味し、その相互関係を予測する科学が必要とされています。このような高精度の予測は、その後の実験的な確認作業を効率的に進めることにより、より早く目的を達成することができると期待されます。本研究では、数学的手法で、がん幹細胞の新しい治療法を確立するために基盤を構築しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究は、数理的統計的な計算手法をトランスオミックス研究に導入した成功事例です。本研究成果は、がん幹細胞の標的化による難治がんの撲滅に道を拓くものであり、がん幹細胞における代謝阻害剤開発を進めることで、現行の抗がん剤での治療法で効果が得られないがんに対しても、がんの完治に貢献できることが期待されます。

特記事項

本研究成果は九州大学との協働研究です。

また、本研究成果は、英国の科学誌「Scientific Reports」の電子版に2016年2月11日(木)に掲載されました。

論文タイトル:A Trans-omics Mathematical Analysis Reveals Novel Functions of the Ornithine Metabolic Pathway in Cancer Stem Cells
著者:J. Koseki, H. Matsui, M. Konno, N. Nishida, K. Kawamoto, Y. Kano, M. Mori, Y. Doki, H. Ishii

用語解説

※1 数理解析
物理学・化学的な見地から数学手法を用いて、様々な分野の理解を目指した分析・解析

※2 ポリアミン代謝機構
シジミの成分として有名なオルニチンから代謝される化合物群であるポリアミンは、細胞の分裂・増殖に大きいな役割を持っており、正常な新陳代謝を維持するのに必須な生体反応機構

※3 トランスオミックス
同一条件で計測された、複数の異なる観点から観測された大容量解析データ間にある関連性・相関を理解するための、各データを統合した解析

※4 オミックスデータ
様々な実験解析から、生体内の分子に対する網羅的解析により得られた大容量情報(ビッグデータ)の総称

参考URL

大阪大学大学院医学系研究科癌創薬プロファイリング学研究室
http://www001.upp.so-net.ne.jp/CancerProfiling/

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