2015年7月16日

本研究成果のポイント

・胎生期で発現しているマイクロRNAの1つ(miR-369)が代謝を制御するユニークな機能を明らかにした。
・miR-369が正常な細胞と癌及びiPS細胞間での細胞内代謝の違いを産み出す。
・癌領域の診断や新しい治療、再生医学領域のiPS細胞などへの応用が期待される。

概要

マイクロRNA※1 は、疾患のバイオマーカーなどとして価値のある内在性の機能性核酸の1つとして注目されています。大阪大学大学院医学系研究科消化器癌先進化学療法開発学寄附講座の今野雅允寄附講座助教らの研究グループは、同外科学講座(消化器外科学)森正樹教授、土岐祐一郎教授と癌創薬プロファイリング学共同研究講座石井秀始特任教授(常勤)らとの共同研究により、胎生期で発現しているマイクロRNAの1つmiR-369※2 が、他のマイクロRNAとは異なり、細胞の代謝で重要なピルビン酸キナーゼ※3 を制御することを明らかにしました。

このピルビン酸キナーゼは代謝性疾患や癌で重要な酵素であることから、本研究成果が癌などの疾患の診断や治療、再生医学において活用されることが期待されます。

なお、本研究成果は米国科学誌「PLOS ONE」のオンライン版に、2015年7月15日(水)14時(米国東部時間)に公開されました。

研究の背景

miR-369は胎生期で発現しているマイクロRNAの1つであり、iPS細胞で知られる細胞のリプログラミング過程で重要な役割を担うことが知られています。その機能は、発生学や再生医学で重要であることは示唆されていますが、よくわかっていませんでした。

今回、リプログラミング過程におけるmiR-369の機能を検討し、その結果、miR-369が従来のマイクロRNAと異なり標的分子を安定化させることでピルビン酸キナーゼのスプライシング※4 パターンをM1型からM2型へと変化させ、細胞の代謝を大きく変化させる機能を明らかにしました。

正常の体細胞ではM1型が多いのに対し、癌細胞やiPS細胞ではM2型が多いことが知られている。miR-369によりM2型が多くなることで、細胞の代謝が癌細胞やiPS細胞の代謝形式に変化する。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

今回の研究で、miR-369が正常な細胞と癌及びiPS細胞間での細胞内代謝の違いを産み出すことが明らかになりました。この癌及びiPS細胞の特異的代謝を産み出すmiR-369を診断マーカー及び核酸医薬として応用することは、癌などの疾患の診断や治療、核酸医薬品の開発、再生医学において、基本ツールとなると期待されます。

特記事項

本研究成果は、米国科学誌「PLOS ONE」のオンライン版に、2015年7月15日(水)14時(米国東部時間)に公開されました。

用語解説

※1 マイクロRNA
細胞内に存在する長さ20から25塩基ほどの短いRNAであり、遺伝子の発現を調節する機能を有する。

※2 miR-369
胎生期で発現しているマイクロRNAの1つ。iPS細胞で知られる細胞のリプログラミング過程で重要な役割を担う。

※3 ピルビン酸キナーゼ
糖の代謝反応を触媒する酵素。解糖系の中心的酵素の一つとして知られる。

※4 スプライシング
転写で合成された一次転写産物からイントロン(アミノ酸には翻訳されない配列)が除去されエクソン(アミノ酸に翻訳される配列)が結合する過程をいう。

参考URL

大阪大学大学院医学系研究科癌創薬プロファイリング学研究室
http://www001.upp.so-net.ne.jp/CancerProfiling/index.htm

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