今までの「光化学」の概念を覆す新発見!光反応性分子結晶における特異的な伝播型光反応を発見

今までの「光化学」の概念を覆す新発見!光反応性分子結晶における特異的な伝播型光反応を発見

2022-11-24工学系
基礎工学研究科助教五月女 光

研究成果のポイント

  • 光反応性分子である2,5-ジスチリルピラジン(DSP)からなる結晶では、光の均一照射によって特異的な伝播型光反応を示すことを発見。
  • この特異反応は「表面効果」と「協働効果」によって引き起こされることが明らかに。

概要

大阪公立大学大学院工学研究科の森本 晃平大学院生(大阪市立大学大学院 後期博士課程3年)、北川 大地講師、小畠 誠也教授と大阪大学大学院基礎工学研究科の宮坂 博教授、伊都 将司准教授、五月女 光助教らの研究グループは、光反応性分子である2,5-ジスチリルピラジン(DSP)からなる結晶では、光を均一に照射すると光反応が結晶の端から中心に向かって伝播することを発見しました。

光を当てることにより物性が変化する光反応性結晶材料は、次世代機能材料として注目を集めています。物性変化は光反応の進行に伴って起こるため、光反応速度論に基づいた物性変化の理解が課題となっています。

本研究では、光反応性分子の一つである2,5-ジスチリルピラジン(DSP)結晶を用いて実験を行いました。通常、結晶に均一に光を照射した場合、光反応は結晶内で均一に進行するため、結晶の色は結晶全体で均一に変化しますが、DSP結晶では結晶の端から中心に向かって光反応が伝播するため、それに伴い結晶の色も端から中心へ向かって変化することを発見しました(図1)。また、これらの特異的な反応が、“結晶の端では光反応性が非常に高い”という「表面効果」と、“光反応した分子の周囲は反応性が高くなる”という「協働効果」によって引き起こされることを明らかにしました。

本研究成果は、Wiley-VCH社が刊行する国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン速報版に、2022年11月3日に掲載されました。

20221124_2_1.png

図1. 結晶中における光反応進行過程の概略図

研究の背景

光や熱などの外部刺激に応答して物性が変化する刺激応答性材料は、次世代機能材料として広く研究が行われています。本研究グループでは特に、光によって分子構造が変化する分子(光反応性分子)からなる光反応性分子結晶に注目して研究を行っています。

溶液中のように分子が独立して存在する場合とは違い、結晶中では分子同士が密に規則的に並んでいるため、結晶中特有の光反応を考えなければなりません。しかし、これまでの光反応性分子結晶材料に関する研究では、結晶中の光反応を溶液中の光反応のように進行すると仮定して考えるものばかりであり、結晶中の光反応速度論に基づいた物性変化の理解が課題となっていました。

研究の内容

そのような背景のもと、様々な光反応性分子の微結晶を用いて、光照射による物性変化を観察していたところ、2,5-ジスチリルピラジン(DSP)の結晶に対して均一に光を照射しているにもかかわらず、結晶の色が端から中心に向かって変わっていくこと、すなわち、光反応が結晶の端から中心に向かって伝播していくことを見出しました(図2)。

様々な検討の結果、“結晶の端では光反応性が非常に高い”という「表面効果」と、“反応した分子の周囲は反応性が高くなる”という「協働効果」によって、このような特異的な光反応が起こることを明らかにしました。

20221124_2_2.png

図2. 均一光照射下におけるDSP結晶の光反応の様子

期待される効果・今後の展開

本研究は、均一照射下においても、結晶中で光反応を不均一に進行させることができるという可能性を見出したものであり、光化学分野の基礎研究として大きく貢献する成果だと思っています。詳細な原理がわかれば、一様に光を照射しても反応を空間選択的に進行させ、目的の箇所のみで光反応を引き起こすことができるようになり、光を外部刺激とするさまざまな光機能性結晶材料に応用可能な技術になると考えられます。今後は、どのような光反応性分子の結晶でこのような特異な光反応挙動が起こるかを明らかにし、それを利用した機能材料の創生を目指します。

特記事項

<掲載誌情報>
【発表雑誌】Angewandte Chemie International Edition(IF=15.336)
【論 文 名】Edge-to-center propagation of photochemical reaction during single-crystal-to-single-crystal photomechanical transformation of 2,5-distyrylpyrazine crystals
【著  者】Kohei Morimoto, Daichi Kitagawa, Hikaru Sotome, Syoji Ito, Hiroshi Miyasaka, Seiya Kobatake
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/anie.202212290

本研究の一部は、JSPS科研費(20J20030、21K14603、21H01888、21H05395、21KK0092、21H01889、21K18934、21H02016)の助成を受けたものです。

SDGsの目標

  • 09 産業と技術革新の基盤をつくろう

用語説明

2,5-ジスチリルピラジン

光照射によって結晶中で反応することができる光反応性分子の一つ。

伝播型光反応

ドミノ倒しのように、ある地点から光反応が起こり次々と周囲に光反応が伝播していくこと。

光反応速度論

光反応について、どのような速度で反応物が消費され、生成物が生成するのかなどをまとめた理論。