全身性エリテマトーデスの新たな発症機構を解明

全身性エリテマトーデスの新たな発症機構を解明

2022-1-5生命科学・医学系
微生物病研究所教授荒瀬尚

概要

大阪大学免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所・感染症総合教育研究拠点の荒瀬尚教授らを中心とする京都大学、神戸中央市民病院、理化学研究所の研究グループは、全身性エリテマトーデスの新たな発症機構を解明しました。

背景

全身性エリテマトーデス患者において抗DNA抗体が産生されます。HLA (ヒト白血球抗原)関連解析の結果から全身性エリテマトーデスの疾患感受性には特定のHLAクラスIIアリルが関連することが知られていましたが、抗DNA抗体産生におけるHLAクラスII分子の機能的な役割はわかっていませんでした。

同研究グループは、これまでHLAクラスII分子には、ペプチドばかりでなく、ミスフォールド蛋白質が提示され、様々な自己免疫疾患における自己抗体の産生に関与することを明らかにしてきました。今回、HLAクラスII分子のペプチド結合部位にDNAが結合し、抗DNA抗体の産生に関わる可能性を初めて明らかにしました。

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図. 本成果の説明
一般に、DNA を単独で免疫しても抗 DNA 抗体は産生されない。
今回HLAクラスII分子によるDNAの発現と、DNA/HLAクラスII複合体によるDNA反応性BCRの刺激が確認された。そして、B細胞-T細胞の相互作用と抗DNA抗体の産生を導く可能性がある。

研究の内容

遺伝子導入細胞を用いた実験の結果、これまでペプチドのみを提示すると考えられてきたHLAクラスII分子にDNAが提示されることが示されました。特に、全身性エリテマトーデスに対して感受性アリルでは、抵抗性アリルに比べて有意にDNAが結合しやすいことが判明しました。また、DNAのHLAクラスII分子への結合は高親和性ペプチドによって阻害されたことから、DNAはHLAクラスII分子のペプチド結合溝に結合していることが判明しました。さらに、抗DNA抗体をB細胞受容体として発現するレポーター細胞を用いて解析すると、HLAクラスIIに結合したDNAが抗DNA抗体レポーター細胞を活性化することが明らかになりました。これらの結果から、全身性エリテマトーデスにおける抗DNA抗体の産生にはHLAクラスII分子に提示されたDNAが関与している可能性が考えられました。

本研究成果は米国リウマチ学会雑誌Arthritis and Rheumatology誌に掲載されました。

特記事項

<掲載情報>
Journal: Arthritis and Rheumatology 74(1):105-111, 2022.
Title: “Anti-dsDNA antibodies recognize DNA presented on HLA class II molecules of systemic lupus erythematosus risk alleles”
Authors: Hideaki Tsuji, Koichiro Ohmura*, Hui Jin, Ryota Naito, Noriko Arase, Masako Kohyama, Tadahiro Suenaga, Shuhei Sakakibara, Yuta Kochi, Yukinori Okada, Kazuhiko Yamamoto, Hitoshi Kikutani, Akio Morinobu, Tsuneyo Mimori, Hisashi Arase*
(*correspondence)
DOI: http://dx.doi.org/10.1002/art.41897

用語説明

全身性エリテマトーデス

systemic lupus erythematosus; SLE。全身のさまざまな場所、臓器に、多彩な症状を引き起こす難病(指定難病49)で全国に10万人程度の患者がいると予想される。皮膚に出来る発疹、発熱、全身倦怠感と関節、腎臓、肺、中枢神経などの部位にさまざまな症状が起きる。その原因は解明途上だが、免疫の異常が病気の成り立ちに重要な役割を果たしている。

HLA (ヒト白血球抗原)

ヒトでは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と同義。 HLAクラスI分子とHLAクラスII分子があり、HLAクラスI分子は赤血球を除く全ての細胞に発現しているのに対して、HLAクラスII分子は一部の免疫細胞の表面に発現し抗原提示に関わる。HLAクラスII分子は細胞外から取り込んだペプチドを細胞表面で提示すると考えられていた。