建物の機能分類(住宅・オフィス・商業施設等)と 建物ファサードカラー測定による大都市スケールの空間分析法
ストリートビュー画像と深層学習モデルで定量的分析を効率化
研究成果のポイント
- 都市スケールを対象として、建物ファサードのカラー測定と建物機能分類の定量的分析法を開発
- ストリートビュー画像と深層学習モデルを応用したワークフロー
- これまでの現地調査による方法と比較して、データ分析の効率が大幅に向上
概要
大阪大学大学院工学研究科の大学院生の張嘉新さん(博士後期課程)、福田知弘准教授、矢吹信喜教授らの研究グループは、ストリートビュー画像と深層学習モデルを用いて、都市の建物ファサードのカラー測定と建物の機能分類を自動化する方法を開発しました。大規模な都市スケールに対して、ファサードのドミナントカラーを色見本コードで測定するとともに、住宅、オフィス、商業施設などの用途を分類することができ、大規模な都市スケールで画像を用いた空間分析の効率化が期待されます。
大規模な都市スケールを対象として、きめ細やかな建物ファサードカラーの測定や建物の機能分類は、都市景観の色彩計画やデータに基づく都市管理に不可欠となっています。しかし、従来のフィールド調査を中心とする手作業による測定法は、近隣住区のような比較的小さなスケールでは効果的ですが、マクロスケールに適応するのは困難です。さらに従来法は、急成長する地域でのデータ更新に対応できず、きめ細やかな都市管理のために都市スケールの十分なデータを提供することはできません。
図1では、提案システムのワークフローを示します。ファサードカラー測定のためのデータ前処理として、画像の色校正、建物のセグメンテーション、ドミナントカラーの計算というステップで処理します。また、住宅、公共サービス、商業サービス、その他の施設など、建物の機能に関するマルチラベル分類器を、ストリートビュー画像を基にしたデータセットで学習させました。そして、提案する方法を実際の都市に対してファサードカラーの測定と建物機能の分類に適用しました。図2は、筆者らの方法と現地調査の測定結果の比較を示します。図3は、提案システムを用いて、中国・上海での建物ファサードのドミナントカラーと建物機能の分類をマッピングした結果です。
図1. ストリートビュー画像と深層学習を用いたファサードカラー測定と建物機能分類のワークフロー
図2. 現地調査データ(上)と提案法による測定(下)の比較
図3. 上海における建物ファサードのドミナントカラーと建物機能の分類をマッピング
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
この研究は、現在の建造環境の色彩を評価し、都市デザイン実施のために基礎となる色データを提供し、フィードバックプロセスを促進するために使用することができます。加えて、提案システムは、新しい建物と伝統との最適なバランスをとりつつ発展を実現するために、ストリートレベルのファサードカラーと建物分類の明確な理解を都市管理者に提供することができます。そして、景観デザインをはじめとして都市の建造環境の色の質を向上させるために、ポスト都市化時代の都市再生をよりよくサポートすることが期待されます。
特記事項
本研究成果は、2021年8月16日(月)(日本時間)に、学術雑誌「ISPRS International Journal of Geo-Information」(MDPI社)でオンライン出版されました。
タイトル: “Development of a City-Scale Approach for Façade Color Measurement with Building Functional Classification Using Deep Learning and Street View Images (ディープラーニングとストリートビュー画像を用いた建物機能分類付きファサードカラー測定の都市スケールアプローチの開発)。”
著者名:Jiaxin ZHANG, Tomohiro FUKUDA, and Nobuyoshi YABUKI (大阪大学 大学院工学研究科 環境エネルギー工学専攻)
DOI:10.3390/ijgi10080551
なお、本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究の一環として行われました。
参考URL
福田 知弘准教授 研究者総覧URL
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/d2782e4b9c864b39.html
SDGs目標
用語説明
- 建物ファサード
建物の正面外観。外観として重要な面であれば側面や背面を指す場合もある。
- ストリートビュー画像
撮影当日に通過した場所の様子をカメラで撮影したもの。道路沿いの風景がパノラマ写真で提供されている。
- 深層学習
人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の一方法で、人工知能(AI)の発展を支える技術。ディープラーニング。