生命科学・医学系

2018年9月8日

研究成果のポイント

・コンピューター上のアバターの質問に高齢者が答える音声を解析することで、認知症の検出が可能な技術を開発した。
・これまで認知症の診断は、認知機能検査や画像検査など病院で行われる大掛かりなものであり、高齢化に伴う認知症の急増に備えて、手軽にできる認知症検査が求められていた。
・高精度で気軽にできる認知症検査は、早期診断・早期受診に繋がることが期待できる。

概要

大阪大学大学院医学系研究科(キャンパスライフ健康支援センター/精神医学)の工藤喬教授、足立浩祥准教授、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科の中村哲教授、田中宏季助教らの研究グループは、コンピューター上のアバターが発する簡単な質問に対し、高齢者が答えた音声特徴を機械が学習することで、認知症の検出ができることを世界で初めて明らかにしました。

これまで、認知症診断は認知機能検査や画像検査など病院で行う大掛かりなものでしたが、手軽にできる認知症検査が求められてきました。

工藤教授らは、早期の認知症傾向を検出するための新たなアルゴリズムを提案し、アバターによる質問機能をもつシステムを開発しました。収録した高齢者の質問応答の様子から、「声、言葉、顔」の特徴を入力とした機械学習モデルを構築し、6つの認知課題(各2~3分)で、9割程度で認知症患者と非認知症が区別できることを明らかにしました。

本研究成果は、2018年9月7-9日に神戸で開催された精神医学分野の国際会議WFSBP(The WorldFederation of Societies of Biological Psychiatry) Asia Pacific Regional Congress of Biological Psychiatryで発表されました。

研究の背景

これまで認知症の診断は、MMSE※1などの認知機能検査あるいは画像検査など病院で行う大掛かりな検査により行われてきました。

工藤教授らの研究グループでは、早期の認知症傾向を検出するための手軽にできる認知症検査として、アバターによる質問機能をもつシステムの開発を行ってきました。これまでの研究では、神経心理学に基づいた質問によるものがほとんどでしたが、日常的に同じ質問を利用すると検出精度が劣化するため、新たなアルゴリズムやデータ解析法を用いて高精度に認知症傾向を検出できる方法を検討しました。

図1 開発したアバターシステム

本研究の成果

工藤教授らは12名の認知症患者、および12名の非認知症者のアバターとの対話収録を行いました。認知症患者は診断基準DSM-IV※2に従って、精神科医師により認知症であると診断を受けています。本研究では、神経心理検査に基づいた固定質問と、特定の検査に基づかない非定型質問(表1)を設定しました。収録したデータに対し、音声、言語、画像特徴量をそれぞれ抽出し、これらの特徴量から、機械学習により、認知症患者と非認知症者を分類するためのモデルを学習させました。結果として、92%で認知症と非認知症を正しく区別することのできる性能を得ました。アバターの質問の種類による応答遅れ、イントネーションの幅、発声の明瞭さ、発話文の中での動詞の使用頻度の違い、などの特徴を組み合わせることで高い精度で認知症を区別できることが明らかとなりました。

表1 非定型質問の例
13の質問の内、ランダムに5問が高齢者に投げかけられる。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

この技術を発展させることにより、高齢者が家にいながら、日常的にアバターとの会話をしていくことで、早期に認知症傾向を知ることができ、医療機関への早期受診、早期診断に繋げていくことが可能となります。高齢化に伴う認知症の急増に備え、気軽にできる認知症検査は社会に大きな意義をもたらします。

特記事項

本研究成果は、2018年9月7-9日に神戸で開催された精神医学分野の国際会議WFSBP(The WorldFederation of Societies of Biological Psychiatry) Asia Pacific Regional Congress of Biological Psychiatry で 9 月8 日に発表されました。
【タイトル】“Identifying Dementia Patients based on Behavioral Markers in Human-Avatar Interaction”
【著者名】 Tsuyoki Ujiro, Hiroki Tanaka, Hiroyoshi Adachi, Hiroaki Kazui, Manabu Ikeda, Takashi Kudo, and Satoshi Nakamura

発表文献

国際雑誌IEEE Journal of Translational Engineering in Health and Medicine, vol.5(1)に本研究成果の一部が掲載されています。
【タイトル】“Detecting Dementia through Interactive Computer Avatars”
【著者名】Hiroki Tanaka, Hiroyoshi Adachi, Norimichi Ukita, Manabu Ikeda, Hiroaki Kazui, Takashi Kudo, and Satoshi Nakamura
【発表年月】2017年12月

用語説明

※1 MMSE(Mini Mental State Examination)
世界的に臨床現場で行われている簡易認知症検査

※2 DSM-IV(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
アメリカ精神医学会により作成された精神障害に関する診断基準の第4版。現在は、第5版であるDSM5が公表されている。

参考URL

大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室
http://www2.med.osaka-u.ac.jp/psy/

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