アルツハイマー病の発生メカニズムに新たな概念

アルツハイマー病の発生メカニズムに新たな概念

病因物質は、それを産生する酵素により無毒化されることが判明。あらたな治療法につながる可能性も

2013-1-4

リリース概要

大阪大学大学院医学系研究科・情報統合医学講座(精神医学)大河内正康講師らの研究グループは、アルツハイマー病を引き起こすと考えられている、病因物質(アミロイドベータ42)ができる仕組みをつきとめました。「その病因物質は、それを産生する酵素により無毒化される」ことが明らかになったことから、本研究成果によってアルツハイマー病の予防・治療薬開発が促進されることが期待されます。

研究内容

アルツハイマー病では、脳内にアミロイドベータ42というタンパク質が蓄積しており、これが病因の1つと考えられてきました。従来の見解では、アミロイドベータ42はガンマ・セクレターゼという酵素によって作られる最終産物の1つでした(図1)。今回、このガンマ・セクレターゼ自身に、アミロイドベータ42をさらに分解する能力があることを発見しました。この分解の結果、産生されるアミロイドベータ38はアルツハイマー病の原因物質ではないことから、本研究成果は、連続分解の途中で酵素からポロリと外れたアミロイドベータ42が脳へ蓄積することがアルツハイマー病を発症させており、外れない場合には無毒化されることを示します。これまでの「アミロイドベータ42が最終産物である」という概念を一新する結果といえます(図2)。

本研究成果が社会に与える影響

これまでアルツハイマー病治療薬開発では、ガンマ・セクレターゼを阻害する戦略がとられてきましたが、今回の成果は、むしろそのガンマ・セクレターゼ作用を増大させることでアルツハイマー病を防ぐことが出来ることを示唆しています。この戦略でアルツハイマー病の根本治療薬開発が促進されると同時にアルツハイマー病発症メカニズム解明への新たな展開が期待されます。

特記事項

本研究は、文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、また科学研究費補助金のサポートをうけ、大阪大学が中心となり、同志社大学との共同で行いました。

参考図

図1 細胞から分泌されるAβ(アルツハイマー病脳に蓄積しているAβ42を含む)が作られる「蛋白切断」の今までの理解


図2

参考URL