2012年1月11日

<リリースの概要>

大阪大学の国本晃司研究員と月田早智子教授らの研究グループは、気管の繊毛基底部の基底小体の一方向に突起する構造体であるbasal footの役割を解明し、それが気管繊毛上皮の規則的な表層の流れを制御するものであったことを明らかにしました。この一連の発見は、繊毛関連疾患※1の解明への大きな一歩として期待されます。

 

<発見の概要>

当該研究室において以前中心体蛋白質として同定した繊毛基底部基底小体の蛋白質Odf2 (outer dense fiber 2)の正常な蛋白質の発現が欠失したOdf2ノックアウト変異マウスを作製しました(図1参照)。Odf2変異マウスは"せき"をするという特異なマウスなのですが、気管の繊毛基底部の基底小体の一方向に突起する構造体であるbasal footが完全に消失(図2参照)して、繊毛の動きの方向性のコントロールに異常をきたしています。そのため本来同調して動くはずの気管多繊毛の動きが完全におかしくなっており、一本一本の繊毛がバラバラに動いてしまいます(図3参照)。その結果、気管表層の流れがよどんで、それを排出するために"せき"がでるということになりますが、その他、多繊毛上皮細胞シートはいろいろな生体機能に関わっており、その機能不全から副鼻腔炎、不妊なども併発しています。

 

多細胞生物において、上皮細胞はシートを構築することにより体内外の表面を覆い、生体のコンパートメントを形成することでホメオスターシスを確保し、生体機能の創出や維持を行っています。気管や卵管などの上皮細胞シートはその内腔側表面に無数の繊毛を有していますが、これらの繊毛は同調して動き、全体として見事に統率のとれた繊毛運動を行います。そのような繊毛運動は、上皮細胞シート表面に一定方向の"表層の流れ"、例えば気管の場合であれば、"肺から口腔に向かう表層の液層の流れ"を形成します。そのことにより、吸気とともに侵入した感染源が生体外に排除されます。

今まで、basal footの存在は認識されておりましたが、その役割は皆目不明でした。しかし、今回の研究により、basal footが、極性の揃った多繊毛の方向ぎめの役割を果たしていることが判りました。

 

繊毛の動きがおかしいために生じた病態全体は、"原発性繊毛機能不全" として "繊毛関連疾患"に含まれます。今回の成果では、多繊毛の動きがおかしいことになる原因のひとつとしての、新たなメカニズムが明らかになり、繊毛関連疾患の病態の解明とその治療のために有用な新しい知見がえられたという意義深い成果です。

 

20120111_1_fig1.png

 

図1.作成したノックアウト変異マウス

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図2.Odf2がないとBasal Bodyからの突起構造体であるBasal Footが形成されない

 

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図3.Odf2変異マウスでは多繊毛運動が異常である : 繊毛基底部基底小体の平面極性(PCP:planar cell polarity)の異常

<参考URL>

http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/tsukita/

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