2019年2月7日

フィクションの登場人物の発話の仕方が、発話者の人物像をどのように表現しているかという課題に興味を持って研究しているが、その成果の一部を用いて「ジブリアニメのキャラクターと言語」という授業を開講した(2018年度秋~冬学期)。

なぜジブリアニメなのかというと、「ほどほどのストーリーの複雑さと物語の構造の明快さを併せ持っているので、分析のしがいがある」「ユニークなキャラクターが多数登場する」「テーマも表現も穏当・健全であり、教室で安心して取り扱える」「画像や音楽のクォリティが高く、繰り返し視聴に堪える」等々、いくつかの理由を挙げることができるが、何より好都合であるのが、某系列の放送局で毎年必ずどれかの作品が放映されており、受講者がすでに視聴済みの作品が多いという点である。いい作品であっても、学生があまり知らない作品を取り上げるとなると、その作品を見る機会をどのように受講者に与えるかという問題が障害となるが、ジブリアニメであればこの点の問題は事前にかなりクリアされている。学生たちの間でもジブリアニメの人気が高いせいか、受講者数は教室満杯の220名となった。

授業の内容は例えば、女ことば、男ことば、老人語、時代劇風台詞といった話し方のバリエーションがどのようなキャラクターに割り当てられており、そのことが物語の展開や構造にどのように寄与しているか、というようなことであり、分析の方法と結果を説明したあとで作品の要所要所を確認していくと、作品の狙いや構造への理解が深まったと、受講者の評価も上々である。

このような分析を通じて感じるのは、ジブリ作品は「役割語」即ちキャラクターの発話スタイルが実に効果的に使い分けられていて、そのことが作品のクオリティを高めることにも貢献しているということである。このような役割語の効果は日本語だから可能なことであり、外国語への翻訳は不可能である。日本語でジブリ作品を鑑賞できることはとても幸せなことなのだと今更ながら気づかされた。

 

金水 敏(きんすい さとし)
1981年東京大学人文科学研究科国語学専攻修了。82年東京大学助手、83年神戸大学教養部講師、87年大阪女子大学講師、90年神戸大学文学部助教授、98年大阪大学文学部助教授を経て、2001年から現職。

 

 

(本記事の内容は、2019年2月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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