カブトムシ幼虫の意外な穴掘り技術

カブトムシ幼虫の意外な穴掘り技術

ずんぐりと太い芋虫が、どうやって固い地面に穴を掘るか?

2021-7-20生命科学・医学系
生命機能研究科大学院生足立晴彦さん

研究成果のポイント

  • ずんぐりと太いカブトムシの芋虫が、固い地面にどうやって穴を掘るのかは謎だった。
  • 地面の下の動きが解る装置で、掘り方を解析。土の固さにより、掘り方が違うことを発見。
  • 特に固い地面の場合、でんぐり返しを繰り返し、回転しながら掘り進むという意外な技を使っていた。

概要

大阪大学大学院生命機能研究科の大学院生の足立晴彦さん(博士課程)らのグループは、ずんぐりと太いカブトムシの幼虫が、固い地面にどうやって穴を掘るのかを世界で初めて明らかにしました。

カブトムシの幼虫は、土の中に住んでいるため、移動するには、穴を掘る必要があります。しかし、カブトムシの幼虫は、見るからに、穴を掘るには不向きな形をしています。ミミズのように細ければ、蠕動運動を繰り返して、キリのように、土に穴をあけることができます。また、モグラのように前足を前方に突き出すことができれば、土を削りながら掻き分けることが可能です。しかし、カブトの幼虫は、体が非常に太く、先端部の頭も丸く、さらに、肢も短いため、ミミズやモグラのような掘り方はできません。

研究グループは、地面の中の動きをリアルタイムで観察でき、なおかつ、土の固さも自由に変えられる装置を自作し、カブト幼虫の穴掘り技術を観察しました。その結果、幼虫は、地面が柔らかいときは、ミミズのように、蠕動運動しながら直線的に掘り進むが、固い地面に当たると、でんぐり返しのような、連続的な回転運動により土を削りながら掘り進むことを見出しました。

この結果は、これまで、あまり研究が進んでいなかった土の中での昆虫の動きが、意外に知性的であり、バラエティに富んでいることを示し、動物行動学の分野に新たな光を投じるものです。

本研究成果は、米国科学誌「Scientific Reports」に、7月16日(金)18時(日本時間)に公開されました。

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図. カブトムシ幼虫が連続回転しながら地面を掘り進む様子

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、丸くて太い形状の物体でも、意外に固い地面を掘り進めることができることが解り、土木関係で何か役立つ機器の発明につながる、という可能性も無きにしも有らずです。しかし、それよりも、多くのカブトムシファンの子供たちが、より、生き物に興味を持ち、しかも、自分でも面白い発見ができるかもしれない、と希望を持つことの価値の方が、はるかに高いと思います。

特記事項

本研究成果は、米国科学誌「Scientific Reports」に、7月16日(金)18時(日本時間)に公開されました。

タイトル:“Pivot burrowing of scarab beetle (Trypoxylus dichotomus) larva”
著者名:Haruhiko Adachi*, Makoto Ozawa, Satoshi Yagi, Makoto Seita, Shigeru Kondo
*責任著者

なお、本研究は、大阪大学リーディング大学院HWIPの活動の一環として、大阪大学大学院生命機能研究科近藤滋教授の協力を得て行われました。