2019年9月27日

発表のポイント

・細胞内におけるタンパク質や脂質の積荷集配所であるゴルジ体は、パンケーキが積み重なったような構造をしています。その構造部分には穴があいていて、積荷仕分けの効率を上げると考えられています。
・Giantinというタンパク質をゴルジ体からなくしてしまうと、この穴がなくなってしまい、積荷仕分けがうまく行われなくなることを発見しました。
・ゴルジ体には、なぜパンケーキのような構造をしているかなど、まだ解明されていないことがたくさんありますが、今回の発見はその解明の糸口になると期待されます。

概要

岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科の佐藤あやの准教授と大阪大学産業科学研究所の西野美都子助教らの国際共同研究グループ※2は、細胞内小器官の一つであるゴルジ体の構造の調節にGiantinというタンパク質が重要な役割を果たしていることを発見しました。

これらの成果は8月27日、スイスの科学誌「Frontiers in Cell and Developmental Biology」のオンライン版に掲載されました。

細胞内におけるタンパク質や脂質の積荷集配所であるゴルジ体は、パンケーキが積み重なったような特殊な構造をしています。その構造部分には穴があいていて、積荷仕分けの効率を上げると考えられています。今回、Giantinというタンパク質をゴルジ体からなくしてしまうと、この穴がなくなってしまい、積荷仕分けがうまく行われなくなることを発見しました。

ゴルジ体はなぜそのような特殊な構造をとることができるのか、わかっていない点が多いですが、今回の発見は、ゴルジ体の構造の理解と細胞内積荷集配所としてのゴルジ体の機能の関係をつなぐ重要な手がかりとなります。

研究者(佐藤准教授)からのひとこと

大学院生「ん?(パンケーキが)なんかのっぺりしてるんです」私「えっ?それどうやって数値化するの?どうやって英語で言うのよー?」なんていう会話がありました。結局、「穴なしモデル」を作って数値化しました。

安定発現株を作ることを得意としています。共同研究、学生さん、大学院生さん、大歓迎です。

発表内容

現状

生物を構成する最小単位である細胞の中には、細胞小器官(オルガネラ)と呼ばれる種々の機能のある区画が存在します。ゴルジ体はそのような細胞小器官(オルガネラ)の一つです。ゴルジ体は多くの生物において、パンケーキを積み重ねたような構造をとります。さらに、ゴルジ体は、ほ乳類の多くの細胞で、このパンケーキの積み重なりが数百個つながり、リボンのような構造をとります。ゴルジ体の中では、生体物質を構成する基本単位であるタンパク質や脂質などに化学修飾が加えられ、それぞれの物質の最終目的地への輸送のための荷札付や仕分けが行われます。つまりゴルジ体は、細胞内で作られたタンパク質や脂質などを最終目的地へ正しく送り届けるためには、なくてはならない存在です。このパンケーキのような構造には、正しい荷札付けや仕分けを行うためのゾーンと呼ばれる機能性部位があると考えられています(ゴルジ体ゾーン仮説)。

研究成果の内容

ゴルジ体には、ゴルジンと呼ばれる竿のような長い分子が何種類も生えています。私たちの以前の研究から、このゴルジンの一つであるGiantinが、ゴルジ体のパンケーキ様構造を調節する可能性が示唆されていました。

今回私たちはこの可能性をさらに追求するために、ゴルジ体の構造の三次元解析を行いました。Giantinがある通常の細胞と、RNA干渉※1という方法によりGiantinをなくした細胞との間でゴルジ体の形状の違いを、電子顕微鏡法や光褪色後蛍光回復法によって調べたところ、Giantinがなくなるとパンケーキ様構造がつながって大きくなることが明らかになりました。

また、電子線トモグラフィー法によって、電子顕微鏡データの三次元化を行い、Giantinがある通常の細胞と、Giantinをなくした細胞との間の構造を比較したところ、前者ではパンケーキ様構造中の穴が小さくなることが明らかになりました。

ゴルジ体の構造がどのようにゴルジ体の機能に関与するかは、未だ不明な点が多いのですが、今回の発見により、Giantinはゴルジ体のパンケーキ様構造中の穴を維持するために重要であることが示唆されました。この穴は、ゴルジ体ゾーン仮説、つまりゴルジ体の中で行われる荷札付などのさまざまな反応が混ざらないようにするために重要であると考えられています。今回の発見とゴルジ体ゾーン仮説は、Giantinをなくすと荷札付や輸送に変化が起こるという私たちの以前の結果とも一致しています。

社会的な意義

ゴルジ体の構造と機能、特にゴルジ体ゾーンの維持にゴルジンタンパク質であるGiantinが重要であることが示されました。ゴルジ体はパンケーキ様構造や、場合によってはさらにリボン様の構造など、複雑な形をとりますが、今回の発見は、複雑な構造の要因の一部を明らかにしたと言えます。

図1 ゴルジ体の構造のイメージ

論文情報

論文名:The golgin protein giantin regulates interconnections between golgi stacks
掲載紙:Frontiers in Cell and Developmental Biology
著者:Ayano Satoh*, Mitsuko Hayashi-Nishino*, Takuto Shakuno, Junko Masuda, Mayuko Koreishi1, Runa Murakami, Yoshimasa Nakamura, Toshiyuki Nakamura, Naomi Abe-Kanoh, Yasuko Honjo, Joerg Malsam, Sidney Yu, Kunihiko Nishino
DOI:10.3389/fcell.2019.00160
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2019.00160/abstract

また、本研究は、科研費(23570167、26440055、17H01214、17K08827、17H01214、18K06133)、物質・デバイス領域共同研究拠点共同研究費、双葉電子記念財団、内藤記念科学振興財団の支援を受けて実施しました。

補足・用語説明

※1 RNA干渉
人工合成した2本鎖RNAを利用し、遺伝子の働きを抑える技術。遺伝子を構成する核のDNAがもつ遺伝情報は一旦mRNAとして写し取られ、これを元にタンパク質などが合成されるが、狙った遺伝情報とかみ合う配列を持たせた2本鎖RNAを細胞内へ入れると、1本鎖になって対応するmRNAを捕らえて壊し、タンパク質を作れなくする。

※2 国際共同研究グループ
佐藤あやの(岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科 准教授)
西野美都子(大阪大学 産業科学研究所 助教)
杓野拓斗(岡山大学 大学院修了生)
増田潤子(岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科 助教)
是石真友子(岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科 非常勤研究員)
村上瑠菜(岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科 大学院生)
中村宜督(岡山大学 大学院環境生命科学研究科 教授)
中村俊之(岡山大学 大学院環境生命科学研究科 助教)
叶奈緒美(徳島大学 大学院医歯薬学研究部(医学域) 助教)
本庶仁子(広島大学 原爆放射線医科学研究所 講師)
Joerg Malsam(ハイデルベルク大学 研究員)
Sidney Yu(香港中文大学 助教授)
西野邦彦(大阪大学 産業科学研究所 教授)

参考URL

大阪大学 産業化学研究所 生体分子制御科学研究分野 西野研究室
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/mid/Site/Welcome.html

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