2015年3月2日

概要

大阪大学大学院生命機能研究科ダイナミックブレインネットワーク研究室・中野珠実 准教授は、京都大学との共同研究で、ヒトの瞬きの頻度の個人差が、脳の主要な伝達物質であるアセチルコリンと結合するニコチン受容体※1 の遺伝子タイプの違いで説明できることが明らかになりました。

ニコチン受容体の遺伝子多型※2 は、喫煙によるニコチン依存症のなり易さと関連することが知られています。今後、瞬きの頻度からニコチン依存症のなり易さを推定するなど、瞬きを簡便なバイオマーカーとして利用できる可能性があり、革新的な発見と言えます。

研究の背景

瞬きの頻度(瞬目率)は非常に個人差が大きく、1分間に数回しかしない人もいれば、40回を優に超える人もいます。神経伝達物質※3 であるドパミンの摂取により、瞬目率が急激に増加することから、瞬目率の違いは脳内のドパミン機能のレベルを反映していると考えられてきました。しかし、ドパミン受容体の遺伝子多型をいくら調べても、瞬目率の大きな個人差を説明することはできませんでした。

本研究では、ドパミン神経の活動を調節しているニコチン受容体に着目し、その遺伝子多型と瞬目率の相関を104名の大学生を対象とした大規模調査により調べました。その結果、ニコチン受容体に関係する遺伝子CHRNA4のrs1044396という部位のシトシン(C)がチミン(T)に置換しているグループ(47名)では、そうでないグループ(57名)と比べて、3割も瞬目率が上昇していることがわかりました。本研究により、これまで通説であったドパミンと瞬目率の関係は実は二次的な相関であり、ニコチン受容体を介したアセチルコリン伝達系が瞬きの発生を制御していることがわかりました。

20150302_1.fig2.jpg

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究により、瞬きの頻度からニコチン受容体の遺伝子多型をある程度推測できることがわかりました。一方、ニコチン受容体の遺伝子多型は、喫煙によるニコチン依存症のなり易さと関連することが知られているため、瞬きの頻度からニコチン依存症のなり易さを推定するなど、瞬きは簡便なバイオマーカーとして利用できる可能性があります。

特記事項

本研究成果は、2015年3月2日発刊のScientific Reportsに掲載されました。

用語解説

※1 ニコチン受容体
神経伝達物質のアセチルコリンと結合する受容体で、神経細胞間の情報伝達を媒介する。ニコチンとも結合することからニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体)と呼ばれる。

※2 遺伝子多型
遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差

※3 神経伝達物質
神経細胞同士で情報伝達のやり取りを行う物質のこと。ドパミンとアセチルコリンは主要な神経伝達物質のひとつである。

参考URL

研究者総覧
http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/view?l=ja&u=6010&n=%E4%B8%AD%E9%87%8E&kc=1&sm=name&sl=ja&sp=1

この組織の他の研究を見る

Tag Cloud

back to top