大阪大学とアストラゼネカ 臨床開発を中止した薬剤の新規適応可能性を検討する産学連携

大阪大学とアストラゼネカ 臨床開発を中止した薬剤の新規適応可能性を検討する産学連携

循環器疾患領域で実施 医薬品開発の効率化、開発リスク・開発コストの軽減に期待

2014-3-12

リリースのポイント

・大阪大学とアストラゼネカ株式会社は循環器疾患領域におけるドラッグ・リプロファイリング研究に関する共同研究の覚書を締結。
・ドラッグ・リプロファイリング研究とは種々の理由で臨床開発を中止した薬剤の新たな適応の可能性を検討する研究。
・大阪大学とアストラゼネカが有する資源を生かし、リスクやコストを軽減した効率よい医薬品開発を期待。

リリース概要

大阪大学とアストラゼネカ株式会社(以下、アストラゼネカ)は、1月30日、循環器疾患領域におけるドラッグ・リプロファイリング研究に関する共同研究の覚書を締結しました。

ドラッグ・リプロファイリング研究とは、種々の理由で臨床開発を中止した薬剤の新たな適応の可能性を検討する研究です。大阪大学では、早期・探索的臨床試験拠点 が有する資源を生かして、日本では初めて、アストラゼネカとアカデミアの共同による本格的なドラッグ・リプロファイリング研究を推進します。この覚書により、アストラゼネカが創製した特定の化合物とその非臨床試験・臨床試験情報が大阪大学に提供されます。大阪大学はそれらを精査・選択してアストラゼネカと協議の上、ノウハウを駆使して循環器領域疾患への新しい適応に関する非臨床研究を実施する予定です。

さらに大阪大学は、アストラゼネカのcardiovascular and metabolic small molecule research unit(循環器代謝性疾患領域の低分子化合物研究部門)と協力して、開発を中止したが依然として貴重な資源である薬剤について、本共同研究の結果有望と判断された新しい適応に関して、医薬品としての実用化の新たな可能性を追求していきます。このような産学共同研究は、それぞれに有する資源を生かしながら、医薬品開発を効率よく進め、開発リスク、開発コストの軽減を可能にします。

ドラッグ・リプロファイリング研究の現状と産学共同研究の意義

基礎研究段階での候補化合物のうち、新たに承認される医薬品の数は日米欧ともに年々減少しており、最終的に医薬品として承認される確率はわずか3万分の1と厳しく、ほとんどの化合物が研究開発の途中で中止されます。上市品や臨床開発段階で中断した既存の薬剤を新規効能として再利用あるいは再生させるドラッグ・リプロファイリングの概念は比較的古くから知られていますが、最近の創薬技術やバイオインフォマティクス(コンピューターの計算能力を利用して生物学の問題を解決する手法)などの進歩により、創薬加速の新たな手法として注目されています。欧米では、研究機関が製薬企業とリプロファイリング研究について提携することは盛んに行われていますが、日本ではようやく緒に就いたところです。

今回の産学共同研究により、双方が有する創薬基盤技術、早期・探索的臨床開発技術を駆使した、科学的根拠に基づく、新規作用機序の発見、新規効能への展開、迅速な臨床開発などが期待されます。

本研究成果が社会に与える影響

本共同研究のモデルを活用し、循環器領域における新たな創薬プログラムを特定、評価、開発することは、今後、日本における科学的根拠に基づいた産学連携による本格的なドラッグ・リプロファイリング研究の推進、創薬の加速化をもたらし、患者様に一日でも早く優れた治療薬を届けるための有効な創薬モデルとなることが期待されます。

参考URL

大阪大学 早期・探索的臨床試験拠点
http://www.ect.med.osaka-u.ac.jp

用語説明

早期・探索的臨床試験拠点

大阪大学早期・探索的臨床試験拠点:

早期・探索的臨床試験拠点事業は、革新的な医薬品・医療機器を創出するために、世界に先駆けてファーストインヒューマン試験(FIH)を国内で実施し、POC(Proof of Concept)を取得するための医療拠点を整備することを目的に、厚生労働省が平成23年度より実施している事業です。