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時空や世代を超えた「つながり」が 考古学の醍醐味

文学研究科・教授・福永伸哉

時空や世代を超えた「つながり」が考古学の醍醐味

時空や世代を超えた「つながり」が 考古学の醍醐味

福永伸哉教授は日本の古代国家の形成過程を明らかにする研究を続けている。比較考古学的視点で、国内外で活躍のフィールドを広げている。

兵庫県の猪名川地域をはじめ、主に近畿地方の古墳の発掘調査を行ってきた。今、調査しているのは宝塚市にある万籟山(ばんらいさん)古墳。「実態が分かっていない謎の古墳。ヤマト政権の移り変わりと猪名川地域がどう連動していたのか解明したいですね」

1986年から阪大埋蔵文化財調査室にも籍を置き、豊中キャンパス内の待兼山古墳群の調査、保存にも関わってきた。「弥生時代から近世に至るまで、平野を見下ろす待兼山周辺は戦略的にも重要な場所。文献史料にない『地域の歴史』を物語る貴重な文化財が相次いで見つかっています」

卑弥呼が中国・魏からもらったとされる三角縁神獣鏡の製作地を巡る大論争に一石を投じたことも。さらにトルコ地中海岸の中世都市遺跡の発掘調査に10年間携わった。

考古学を志したのは、学生時代に恩師の都出比呂志(つでひろし)教授(現:大阪大学名誉教授)と出会ったことがきっかけ。「ひと仕事終えたらおいしいお酒を飲ませてやるからと、都出先生に誘われて、軽い気持ちで発掘調査につきあいました。小学生の時、庭の造成用に運び込まれた土の中に土器を見つけて、昔の人が作ったものが出てくるのが不思議で、かき集めて触っていたことがよみがえってきてすごく面白かったんです。考古学者に進んだきっかけはあのお酒かな(笑)」

考古学の魅力は「つながり」を感じられること。「土器に触れていると、時空を超えて大昔の人と直接やりとりができるような独特の感覚があります」。発掘現場では地域の人との出会いがあり、世代を超えた交流もある。「多くの人との共同作業。それがまたうれしいです」と、子供の頃に戻ったような笑顔で語った。

●福永伸哉(ふくなが しんや)
1982年大阪大学文学部史学科卒業。同大学院文学研究科史学専攻修了。大阪大学埋蔵文化財調査室助手、同文学部助教授などを経て、2005年同文学研究科教授。日本学術会議会員。百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録有識者会議をはじめ、国や地方自治体の文化財関係の委員も務める。「邪馬台国から大和政権へ」(大阪大学出版会)など著書多数。

(2016年3月取材)

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