2013年10月1日

リリース概要

大阪大学歯学部附属病院病院長/障害者歯科治療部教授の森崎市治郎を代表とする大阪大学歯学部と神戸大学医学部の共同研究チーム(大阪大学:森崎市治郎、村上旬平、財間達也、神戸大学:高岡裕、菅野亜紀、三浦研爾)は、点字と触図による歯科医療情報提供システム DENTACT(デンタクト)を開発し、大阪大学歯学部附属病院で実用化に成功しました。さらにこのシステムは、2013年度のグッドデザイン賞を受賞しました。このシステムにより、歯科医療機関は視覚障害のある患者さんに一般の患者さんと同様に歯に関する情報を提供でき、今後、医療機関による障害のある方への情報保障が拡大する契機になると考えられます。

研究開発の背景

保険診療では歯科治療に関する文書情報を患者さんへ提供することが義務化されています。しかし、視覚障害のある患者さんにとって、図の入った通常の説明文書を読解するのは困難です。得られる情報に差があると、医療格差や健康格差に直結することがあります。そこで視覚障害のある患者さん向けに点字と触図で歯科医療の情報提供を可能にするため、2006年よりデンタクトの開発を始めました。

医療スタッフ側に点字・触図の知識が無くても、視覚障害のある患者さん向けに口内の状態や歯科治療の内容を点字と触図の文書として提供できるシステムを目指しました。実現に向けた課題は、分かりやすい触図、点字への正確な翻訳とコストの抑制でした。

解決策として、触図に使う最適な点の大きさや線の太さなどを、視覚障害者の協力で決定しました。自動点字翻訳は神戸大学医学部(神戸大学医学部附属病院医療情報部高岡裕准教授)と協力し点訳プログラムを新規に開発して組み込みました。市販パソコン、既存の点字プリンタ、オフィスソフトのプログラミング機能を利用して、考えうる限り低コストで本システムを実現し、広い普及を可能にしました。

視覚障害のある患者さんにとっても自分の身体の情報は、究極の個人情報です。これまで視覚障害のある患者さんの文書理解は第三者の援助が必要でしたが、大阪大学歯学部附属病院と神戸大学病院が協力し、「全ての患者さんへ、別け隔てなく同様に情報を直接伝える!」という理想を実現しました。世界百三十カ国が結ぶ国連障害者権利条約が求める障害者への配慮を、叡智を結集して実現した日本初の事例であります。

本研究開発成果が社会に与える影響(本成果の意義)

国連障害者権利条約の批准に向け本年6月に成立した障害者差別解消法(2016年4月施行予定)は、大学病院などの医療機関を含む公的機関に、障害者への配慮(合理的配慮)義務を定めています。つまりデンタクトのようなシステムは、国際社会からも取り組むよう求められているシステムといえます。デンタクトは視覚障害のある人が自身の歯や口への興味や理解を深めるのみならず、情報保障という安心感により歯科を受診しやすくなるなど、ご自身の口の健康を維持するモチベーションの向上につなげることができます。つまり視覚障害のある人とない人の間にある情報格差を解消し、医療格差や健康格差を是正に役立つと考えられます。また、本システムがグッドデザイン賞を受賞したことは、「医療機関が障害のある患者さんに情報を保障するのが当たりまえである」という情報保障の考えが医療の世界に広まっていく契機になると考えます。

今後の展開

今回開発したシステムは、今後、全国の国立大学病院、障害者歯科医療機関、歯科医院に対して、すぐに使えるシステムとして普及を呼びかける予定です。また、歯科以外の医療機関でも使えるよう改良を加え、障害者への配慮が義務化される国立大学病院をはじめとする公立病院を中心に、幅広い医療機関での導入を目指します。今後も叡智を結集して、医療機関における視覚障害のある患者さんへの合理的配慮が確実に行えるよう、システムのブラッシュアップに取り組みたいと考えています。

特記事項

グッドデザイン賞は、1957年に通商産業省(現経済産業省)によって創立された、「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」を母体とする総合的なデザイン評価・推奨制度です。受賞式は、2013年10月30日に東京都内で行われます。

参考URL

大阪大学歯学部附属病院 障害者歯科治療部
http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~disabl/index.html

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