生命科学・医学系

2017年10月4日

研究成果のポイント

・簡単に口腔内の歯ならびを再現でき、視覚障害のある人が触知しやすい模型を開発
・これまで、視覚障害のある人が、歯ならびや汚れのたまりやすい場所を触知できる媒体がなく、また、既存の歯科用口腔内模型では、歯ならびを自由に変更することができなかった
・視覚障害のある人への歯科保健教育への活用、障害者差別解消法の求める視覚障害のある人への合理的配慮の実現、さらに視覚障害のない人への応用にも期待

概要

大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部村上旬平講師、大阪大学歯学部附属歯科技工士学校小八木圭以子講師、独立行政法人大学入試センター南谷和範准教授の研究グループは、視覚障害のある人の口腔健康教育に使用できる口腔内模型、デンタクト・モデルを開発しました(図1)。さらにこの模型は、2017年度のグッドデザイン賞受賞が決定しました。

これまで歯科において視覚障害のある人のための媒体がなく、触覚媒体を利用した視覚障害のある人への対応が普及していませんでした。また既存の歯科用口腔内模型は歯ならびが固定されたものしかなく、口腔内の状態にあわせて歯の位置や歯ならびを自由に変更できる模型はありませんでした。今回、歯がマグネット着脱式になっている模型を開発したことで、模型上で対象者の口腔内の歯の状態を簡単に再現することが可能になり(図2)、視覚障害のある人が自身の歯ならびやブラッシングの方法などを触って学習することが可能になりました(図3)。この模型により、視覚障害のある人に一般の方と同じように口腔内の情報を分かりやすく伝えることができ、障害者差別解消法の求める視覚障害のある人への情報保障による合理的配慮の実現につながることが期待されます。

本研究成果のグッドデザイン賞受賞については、10月4日(水)13時30分に公益財団法人日本デザイン振興会より発表されました。

図1 デンタクト・モデルの外観

図2 簡単に口腔内の歯ならびを再現できる

図3 視覚障害のある人が、歯ならびやブラッシング方法を触って学習できる

研究の背景・内容

歯のブラッシング習慣は口腔の病気を防ぐために最も重要であり、その技術は幼児期から修得していく必要があるうえ、年齢や口腔内の変化に伴って、専門的な口腔衛生指導も受ける必要があります。しかし視覚障害のある人では、歯ならびや汚れのたまりやすい場所、歯ブラシのあて方などを視覚的に確認できないため、効果的なブラッシング技術を身につけることが困難で、そのため虫歯や歯周病になりやすいことが知られています。一方、現在歯科保健教育において、視覚障害のある人が触知しやすい媒体がなく、触覚媒体などを利用した視覚障害のある人への対応は普及していません。昨年施行された障害者差別解消法は障害者への合理的配慮を求めていますが、視覚障害のある人への情報保障による合理的配慮を実現するため、子どもから大人まで、様々な人が触覚的に歯ならびの状態やブラッシングの方法を学習できる模型が必要であると考えました。

模型の開発にあたっては、できるだけ簡単で迅速に、多様な対象者の口腔内の歯の状態を再現できること、視覚障害のある人がご自身の歯ならびや歯ブラシのあて方などを触って認識しやすい形にすることを目指しました。

完成した模型は、歯の模型をマグネット着脱式にしたこと、また永久歯と乳歯に加え、はえかけの永久歯の模型を作製したことで、歯の数、歯の種類および歯ならびを対象者の口腔内にあわせて自由に配置でき、子どもから大人までの多様な口腔内の歯の状態を模型上で簡単に再現できる、今までにない模型です。また視覚障害のある人の助言のもと改良を重ねたことで、触ることで歯の状態を理解しやすい模型になりました。

結果として視覚障害のない人にも分かりやすいユニバーサルデザインになっており、多くの人の口腔健康教育に活用できる可能性も秘めています。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、障害者差別解消法が求める、視覚障害のある人への合理的配慮を実現して情報格差を解消し、医療格差や健康格差を是正することにつながることが期待されます。またすべての人に分かりやすいデザインになっているため、子どもや、聴覚障害や自閉症などその他の障害により説明に配慮が必要な方など、視覚障害のない人への応用も期待できます。

特記事項

本研究成果のグッドデザイン賞受賞については10月4日(水)13時30分に公益財団法人日本デザイン振興会より発表されました。

グッドデザイン賞は、1957年通商産業省(現経済産業省)によって創設されたグッドデザイン商品選定制度を発端とする、日本唯一の総合的なデザイン評価・推奨の運動です。授賞式は2017年11月1日(水)に東京都内で行われます。

なお、本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金16H00264、17H00257の助成を受けたものです。

研究者のコメント

晴眼者には視覚情報を使うことで伝えられる口の中の情報やブラッシング技術を、視覚障害のある人にも同じように伝えたい、そして視覚障害のある人の口腔の健康維持に貢献したいという思いを形にしました。本模型が一人でも多くの視覚障害のある人のお役にたてるよう、模型の普及にも取り組んでいきます。

参考URL

大阪大学大学院歯学研究科 口腔科学専攻 特別支援歯科学講座
http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~disabl/index.html

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