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身体も大学も、健康は「対話」から

「ちょっとミミヨリ健康学」Column Entry No.017

大阪大学総長 熊ノ郷淳

身近な健康・医療情報を、大阪大学の研究者がちょっとミミヨ リとしてお届けするコラム。

身体も大学も、健康は「対話」から

 畏れ多くも、私が昨年4月に総長に就任してから大阪大学にはうれしいニュースが次々と舞い込んでいます。坂口志文先生のノーベル生理学・医学賞受賞というビッグニュースはもちろんですが、川島康生名誉教授の外科医初の文化勲章、妖怪研究の第一人者である小松和彦名誉教授の文化勲章、飛行機制作研究会albatrossの鳥人間コンテスト優勝、マチカネワニ化石の天然記念物登録、大阪・関西万博の盛り上がり……さらに、審良静男先生のJapan Prize受賞も決まりました。ワニ博士も注目を集めるなど明るい話題が重なって、大阪大学の活気ある姿を社会に発信できたのではないかと思います。

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 こうした華々しくパワフルな出来事を率いる立場の私自身も、元気で健康であり続けたいものですが、阪大生時代にボート部に所属していたことを除けば、その後はスポーツとは縁遠い生活を送っています。ジムに通おうとしたこともありましたが、半年かけてウェアと靴を揃えたところで力尽きました。しかしあえて言うなら、人と話すこと、「対話」することが私の健康法かもしれません。

 教授になった時から「100人面談」といって、年間100人の医学部の学生や若手医師と一対一で対話することを続けています。話をした人数は1000人を超えました。研究か臨床かの進路、仕事や子育て、出産など多岐にわたって、30分から1時間くらいじっくりと話を聞きます。また、毎年予備校で講演をしているのですが、終了後は講演本編よりも長い時間、予備校生との質問タイムを楽しみます。最近は、帰宅後にAIとワインについて語らっていますし、ただただ対話することが好きなんですね。

 対話するときの心がけは、一方的なアドバイスを行うのではなく、あくまで壁打ちの壁役に徹することです。自分のことを話すのではなく、ひとつひとつ相手の相談に合わせて会話するので頭が活性化されます。

 総長として大学という組織を動かすようになっても、やはり対話の大切さを深く感じています。自分がAと思っていても、Bという異なる意見を聞くことでブレインストーミングが起こり、そこからブレイクスルーとなるCが生まれます(研究も同じ!)。総長や教授の肩書が邪魔をして「それは違う」と言ってもらえなくなることが一番怖いですね。

 話しやすい空気から、異なる意見やブレイクスルーを得て、人も組織も元気になっていく。対話が健康を生むのです!


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(本記事の内容は、2026年2月発行の大阪大学NewsLetter 94号に掲載されたものです )