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見えにくい……は白内障のサイン? 最新治療で“見える生活”を回復

「ちょっとミミヨリ健康学」Column Entry No.016

医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学) 教授 西田幸二

身近な健康・医療情報を、大阪大学の研究者がちょっとミミヨ リとしてお届けするコラム。

見えにくい……は白内障のサイン? 最新治療で“見える生活”を回復

最近、「眼鏡を換えても視界がぼやける」「まぶしさが気になる」、そんな見え方の変化を感じていませんか?それは白内障かもしれません。進行すると、新聞の字が読みにくい、車の運転がしにくいなど、日常生活にも支障をきたすようになります。
白内障は、眼の中の“レンズ”にあたる水晶体が濁る病気です。水晶体は、網膜に映る光のピントを合わせる働きをしています。この水晶体が濁ってしまうことで、光が眼の中をうまく通らなくなり、視界がかすんだり、ぼやけたり、まぶしく感じるようになります。多くの場合は加齢に伴って進行し、早い方では40歳代から始まり、80歳以上ではほとんどの人が程度の差はあれ白内障を発症しています。加齢以外の原因によっても起こることがあり、若い方でも発症する可能性があります。

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進行した場合は手術が唯一の治療法となります。白内障の進行を予防する方法として目薬も試みられますが、いったん濁った水晶体を透明に戻すことはできないため、進行を完全に止めることはできません。

白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズ(IOL)を挿入する方法で、日本国内では年間約150万件も行われています。最近では遠くと近くの両方にピントが合う多焦点レンズや、焦点深度を広げるEDoF(Extended Depth of Focus)レンズなど、ライフスタイルに応じたレンズ選択が可能になっています。白内障は日帰り手術が可能です。手術を受けた多くの方が「明るくなった」「はっきり見えるようになった」と実感されています。ただし、光を受け取る網膜やもう一つのレンズにあたる角膜の状態によっては、視力の回復が限定的な方もおられます。

大阪大学医学部附属病院アイセンターでは白内障手術を受けることができます。最新の技術を導入し、大学病院ならではの高度な診断と手術技術を基に、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画を立てています。過去にレーシック手術を受けた方や、他の眼疾患を併せ持つ難しい症例にも対応できる体制を整えています。

視力の変化は「年のせい」と片づけてしまいがちですが、正しい診断と治療で、よりよい“見える生活”を取り戻しましょう。


■参考URL

大阪大学大学院医学系研究科 眼科学教室

大阪大学医学部附属病院の眼科が、2025年5月に新しく「阪大アイセンター」として生まれ変わりました。これまで別々の棟で運営されていた眼科の入院・外来・手術のすべての眼科診療を統合診療棟の6階のワンフロアに集約し、より便利に効率的にご利用いただけるようになりました。これは日本の大学病院では初めての試みです。一体化により診療効率が上がり、より多くの患者さまに医療を提供することで、地域社会への貢献を目指します。診療の内容については、Webページをご覧ください。

[URL] 眼科学教室: https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ophthal/www/index.html

   阪大アイセンター: https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/departments/eye.html

【前回】ちょっとミミヨリ健康学⑮ 「“沈黙の臓器”のSOS!慢性腎臓病で後悔しないために」

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2025/nl92_mimiyori_vol15

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(本記事の内容は、2025年10月発行の大阪大学NewsLetter 93号に掲載されたものです )