究みのStoryZ

超分子が奏でる夢の世界

伸びる、破れない、自己修復する材料

理学研究科・講師・高島義徳

プラスチックに代表される高分子材料は、暮らしになくてはならない存在だ。だが、今日の高分子材料の開発には、実用化に向けて、既存の材料にない様々な機能性が求められる。「強度が強く、しかもよく伸びる」「使い続けてももろくならない」「破れても元に戻る」……。高島義徳講師は難題の解決のため、「超分子」設計に取り組んでいる。様々な領域との融合による革新的な材料設計により、生体系になかった新しい材料を構築し、多様な分野で新たな価値観の創造を目指す。


生体系を超える材料

「よく伸びるのに強度が強く、割れても自ら再接着する、高靭性と自己修復性を兼ね備えた材料等、これまでなかったような材料を作ろうと研究してきました。生体にはない機能をもった『生体系を超える』材料の構築です」と高島講師は話す。  既存の高分子材料には、少し変形させると壊れるような、もろいものが多い。また、一度切れると元に戻らない。さらに、伸びが高い材料は強度が低く、強度が高い材料は伸びが低い。「一般的には、物質の伸びと強度はトレードオフの関係にあるといえます。このような従来の高分子材料の性質を、『硬い』と言っています。これらは非可逆な共有結合性の結合にて形成されているためです」
伸縮性が高い材料は強度が低い。高島講師たちは「外力が加わった時の抵抗力(応力)を、いかに1点に集中させないか」が鍵になると考え、応力を全体に分散させることができる新しい材料設計を試みた。

緩やかな結合が新しい性質を創出

それは、よく伸び縮みし、強じんで切れにくく、切れても元通りにつながるマジカルな材料だ。化学的には「非共有結合性」の超分子で、切れても戻る可逆的な結合性をもち、材料内部を分子がより自由に、可動性をもって動き回ることができる点が特徴である。  高島講師は「可逆的な結合と可動性架橋を実現するために、シクロデキストリンという多糖類の分子を用います」。シクロデキストリンは、食品添加物としても用いられている環状オリゴ糖。「そこに別の高分子で材料を支え、ブロックのように構造を繋げる方法と輪の中をひもが貫通している構造を作り、ひもがスルスルと動くことで、応力の集中を防ぐ方法をとりました。『高分子同士が緩やかな結合で繋がっていることによって伸び縮みする』という性質をうまく生かしました」

切断しても元どおり

材料の自己修復性にも、注目が集まる。力をかけて切断しても、切断面同士を接触させると再び接着するという性質だ。「ある加工をした基板の上に塗りつけると、表面がコーティングされます。すると傷がついても、少量の水をかければ、まるで開いたジッパーが閉じるように傷が消失します。この点が注目され、企業からは塗装に使えないかという話が来ています。また、ある試薬をつけると接着しなくなり、別の試薬をつけると接着するというような選択性を持たせることもできます」  産業界からは、熱い期待が寄せられる。「パンクしないタイヤの開発に使えると言われています。タイヤに我々の材料を用いれば、事故の危険回避につながりますし、タイヤの寿命を延ばすことにもつながります」  この他、接着剤がなくても分子の力だけで接着できる材料や、光の刺激で曲がったり戻ったりするアクチュエーターの機能を持った材料など、さまざまな開発が進む。工業用品以外にも、医療、歯科治療用など幅広く応用できる可能性を秘めている。



高島講師にとって研究とは

人生の一部、いや、ほぼ全てでしょうか。自身はサイエンスの長い歴史の中で、ある一時期を過ごしているに過ぎないので、知恵を過去から未来へ繋いで行けるような研究を展開したい。大学の教員としては、教育や基礎研究に重点をおきつつ、それをいかに展開していくか、大阪大学の強みである、企業との共同研究を通じた情報収集ネットワークづくりにも力を入れている。

●高島義徳(たかしま よしのり) 2003年大阪大学理学研究科修了、博士。同年日本学術振興会・特別研究員。04年大阪大学理学研究科助手、07年同研究科助教を経て、16年より現職。17年大阪大学賞。18年6月から大阪大学高等共創研究院教授。


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(2018年2月取材)