
大阪・関西万博に来場した41万人超の健康測定データをAIで解析
BMIが高いほど顔面の「赤みスコア」が高いことを発見
研究成果のポイント
概要
近畿大学医学部(大阪府堺市)皮膚科学教室主任教授 大塚篤司、近畿大学病院(大阪府堺市)皮膚科専攻医・近畿大学大学院医学研究科医学系専攻博士課程 飯沼紀実、大阪大学大学院医学系研究科(大阪府吹田市)寄附講座教授 森下竜一らの研究グループは、令和7年(2025年)に開催された大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」来場者の健康測定データを用い、成人410,384人を対象に、ボディマス指数(BMI)とAI判定による顔面の「赤みスコア」との関連を調べました。解析の結果、BMIが高い群ほど、AIが算出した顔面の赤みスコアが高い傾向が明らかになりました。ただし、本研究は横断研究であり、肥満が顔面の赤みを引き起こすことを示すものではありません。今後、皮膚科診察と組み合わせることで臨床への応用が期待できます。
本件に関する論文が、令和8年(2026年)8月6日(木)に暫定版、同9月11日(金)に最終版が、エルゼビア社が米国皮膚科学会(AAD)とともに発行する皮膚科学の国際的な学術雑誌“JAAD International”に掲載されました。
研究の全体像
研究の背景
顔面の赤みには、皮膚血流、紫外線、飲酒、ホルモン、炎症性皮膚疾患など多くの要因が関わります。一方、肥満は全身性の炎症と関連していますが、顔面の赤みとの関連は、大規模な集団では十分に検討されていませんでした。
令和7年(2025年)に開催された大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」の「カラダ測定ポッド」では、来場者の顔の皮膚に関するデータ、血管や脈拍に関するデータ、および基本的な身体・属性情報を測定していました。研究グループは、この匿名化健康測定データを用いて、AIが顔画像から算出した顔面の「赤みスコア」とBMIが相関しているかを調査しました。
研究の内容
研究グループは、大阪・関西万博「大阪ヘルスケアパビリオン」の「カラダ測定ポッド」を利用した成人484,462人から、BMIまたは赤みスコアが欠測した人を除き、410,384人(女性250,318人、男性160,066人)について解析しました。対象者の平均年齢は44.4歳、平均BMIは22.3でした。
本研究では、AI搭載の肌測定システムが顔画像から算出した「赤みスコア」を用いて解析を実施しました。赤みスコアは、画像上の顔面の赤みの程度を数値化した指標であり、値が高いほど赤みが強いことを示します。なお、この指標は皮膚科医による紅斑の診断を示すものではなく、現時点で診断や健康判定に利用できるものではありません。
解析の結果、高い赤みスコアを示した人の割合は、BMI正常群で2.1%、肥満1度で6.5%、肥満2度以上で11.4%と、BMIが高くなるほど増加しました。さらに、年齢の影響を調整した解析においても同様の傾向が認められ、BMI正常群と比較すると、高い赤みスコアを示すオッズは肥満1度で約3倍、肥満2度以上では約6倍となりました。
また、男女別の解析では、30~59歳の女性においてBMIと赤みスコアとの関連がより強い傾向が認められました。さらに、解析条件を変更した感度分析においても、全体として同様の結果が得られ、本研究結果の頑健性が確認されました。一方で、本研究は一時点のデータを解析した横断研究であるため、肥満と顔面の赤みとの因果関係を示すものではありません。また、飲酒量やALDH2遺伝子多型、化粧、肌の色調、紫外線曝露、薬剤、酒(しゅ)さなど、顔面の赤みに影響を及ぼす可能性のある要因について十分な調整は実施していません。
今後は、皮膚科専門医による診察結果や標準化した撮影条件を組み合わせることで、AIが算出する赤みスコアの臨床的意義や背景因子について、さらに検証を進める予定です。
図. 各BMI群の中で、高い赤みスコアを示した人の割合
特記事項
【論文情報】
掲載誌:JAAD International(インパクトファクター:6.5@2025)
論文名:AI-Derived Facial Redness Score and Body Mass Index in a Large Japanese Screening Cohort
(大規模日本人健診コホートにおける顔面赤みスコアとBMIの関連)
著 者:飯沼紀実1、藤井一恭2*、中嶋千紗2、森田駿介1、森川敏生3,4、山田秀和3、森下竜一5、大塚篤司2,3 *責任著者
所 属:1 近畿大学病院皮膚科、2 近畿大学医学部皮膚科学教室、3 近畿大学アンチエイジングセンター、4 近畿大学薬学総合研究所、5 大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学最先端医療イノベーションセンター
URL:https://www.jaadinternational.org/article/S2666-3287(26)00143-4/fulltext
DOI:10.1016/j.jdin.2026.07.010
用語説明
- BMI
体重(kg)を身長(m)の2乗で割った、体格の指標。
- 赤みスコア
顔画像からAIが算出した画像上の赤みの指標。皮膚科診断そのものではない。
- 横断研究
ある時点の情報から関連を調べる研究。原因と結果の順序や因果関係は確定できない。
- 紅斑
皮膚の毛細血管が広がって血液が充満し、表面が赤く見える状態。
- オッズ
ある事象の起こりやすさを群間で比べる指標。本研究ではBMI正常群を1とした。
- 酒さ
顔に赤みやぶつぶつが生じ、ほてりやヒリヒリ感、かゆみを伴うこともある皮膚の疾患。原因は不明な場合が多い。
