
ニュートリノの未解決問題「ガリウム異常」の正体に迫る
原子核理論と原子核実験の国際共同研究により、未知の素粒子の可能性を示唆
研究成果のポイント
基本の素粒子であるニュートリノの未解決問題の一つ「ガリウムにおけるニュートリノ異常」の要因を、最新の原子核理論と大阪大学核物理研究センターでの実験の国際共同研究によって精密に検証しました。得られた結果は、ガリウム異常が原子核反応率の評価誤差によるものではないことを示し、未知の「ステライル・ニュートリノ」の存在を強く示唆するものです。
概要
大阪経済法科大学の岩田順敬准教授、大阪大学核物理研究センターの江尻宏泰特任教授(90歳、名誉教授、元センター長)、およびインド工科大学ルールキー校のSarkar博士らの国際共同研究チームは、ガリウム原子核とニュートリノの反応の実測値が理論予測値より少ない「ガリウム異常」の謎を解明するための精密検証を行いました。
ニュートリノとガリウムの反応で放出される電子数が理論予想よりも約20%も少ないという現象は、「ガリウム異常」として知られています。この謎をめぐっては、「ガリウム反応率の評価問題か」「実験計測の問題か」、あるいは「ニュートリノの一部がステライル・ニュートリノ(まだ見つかっていない未知の素粒子)に移行して消滅したのか」という観点から、長年世界中の研究者の注目を集めてきました。
研究チームは、テンソル相互作用まで考慮した原子核理論計算(殻模型計算)と大阪大学核物理研究センターでの江尻特任教授らの加速器実験による高精度データとを組み合わせて、ガリウム(⁷¹Ga)のニュートリノ反応率を高精度で導出することに成功しました。その結果、「ガリウム異常」の原因が原子核反応率の誤りではないことが判明し、実験計測に予期せぬ不確かさがなければ、未知の素粒子『ステライル・ニュートリノ』への移行を強く示唆するに至りました。
ステライル・ニュートリノは、素粒子の「標準理論」を超えた未知の粒子であり、宇宙の成り立ちや暗黒物質(ダークマター)の解明にも深く関わっている可能性が指摘されています。また、本研究で得られた高精度のガリウム反応率は、太陽ニュートリノ研究のさらなる精度向上にも寄与する重要な結果です。本研究成果は2026年8月10日にアメリカ物理学会(APS)が出版する原子核物理学分野の主要学術誌『Physical Review C』に掲載されました。
特記事項
【論文情報】
雑誌名: Physical Review C (PRC) 114巻 024317頁
論文タイトル: Low-energy neutrino responses for ⁷¹Ga by electron capture rates, charge exchange reactions, and nuclear shell model calculations
著者: Yoritaka Iwata, Hiroyasu Ejiri, Shahariar Sarkar
