
あいまいな問題を具体的に捉え直した集団は 多様なアイデアを生み出す!
「3人よれば文殊の知恵」の実現方法に迫る
研究成果のポイント
概要
大阪大学大学院人間科学研究科の高津遥さん(博士後期課程)、後藤崇志准教授、ネブラスカ大学のRoni Reiter-Palmon教授らの研究グループは、答えが1つに決まらない、あいまいな問題を解決するためのアイデアを考える前に、問題をさまざまな角度から捉え直して問いを生み出す思考(以下、問題構築)を集団で行うと、より多くの、より多様なアイデアを生み出せることを明らかにしました。この効果は、個人で行う場合には見られませんでした(図1, 図2)。
これまでの研究では、問題構築を行うことがアイデアの創造性や量を高めることは示されていましたが、その効果が個人と集団で異なるのかは明らかになっていませんでした。今回の研究から、創造的な問題の解決において、アイデアを生み出す前の問題構築には、集団で行うことでより相乗効果的に発揮される利点があることを、初めて明らかにしました。今後、個人では得られない集団独自の利点を活かしたアイデア生成法の解明に、本研究の知見が活用されることが期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「The Journal of Creative Behavior」 に、2026年8月10日(火)に公開されました。
図1. 問題構築の有無とアイデアの数の変化 (エラーバーは標準誤差)
図2. 問題構築の有無とアイデアの種類の変化 (エラーバーは標準誤差)
研究の背景
答えが1つでない、あいまいな問題の解決において、これまでの研究では、アイデアを生成する前に問題をさまざまな角度から捉え直し、問いを生み出す思考である問題構築を行うことが重要と考えられてきました。しかし、その効果が、個人で行う場合と集団で行う場合とで異なるのかは明らかになっていませんでした。
また、企業の商品企画や製品開発、教育現場における探究学習などでは、創造的なアイデアを生み出すために、集団で話し合う機会が多くあります。しかし、創造性に関するこれまでの研究では、単に、複数人で話し合うだけでは、必ずしも創造的な成果につながらないことが知られています。
研究の内容
本研究では、集団で問題構築を行うことで、取り組むべき目的が共有・整理されて、集団成員の多様な知識や経験を動員することが可能となることから、問題構築がアイデアの量と質に及ぼす効果は、個人よりも集団の方が強くなるという仮説を立て、実験によって検証しました。
本研究では、大学生175人を対象とし、「人々が歩きスマホをしている問題の状況」を描いたシナリオに対して、創造的な解決策を個人または集団(3人組)で考えてもらう実験を行いました。また、参加者は、解決策を考える前に、「どうしたら私/私たちは…できるか」という形式で、問題をできるだけ多様な視点から捉え直す問題構築を行う条件と、行わない条件のいずれかにも無作為に割り当てられました。
その結果、問題構築によってアイデアの数と種類が増える効果は、個人よりも集団において強く現れることが分かりました。一方で、今回の研究では、問題構築を集団で行っても、アイデアの質を示す創造性には影響が見られませんでした。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究から、答えが1つでない問題に取り組む際には、アイデアを出す前に問題構築を行い、さらにそれを集団で行うことで、より多くの種類のアイデアが生み出されるという、相乗的な効果が示されました。
本研究の知見は、企業や教育現場などの集団が話し合う場面で、集団が持っている利点を活かすアイデア生成の方法を解明し、創造性が発揮されやすい環境を構築するための手がかりになることが期待されます。
特記事項
本研究成果は、2026年8月10日(火)に米国科学誌「The Journal of Creative Behavior」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Synergistic Effects of Collaboration and Problem Construction in Creative Problem-Solving: An Experimental Study Comparing Collaborative Work in Three-Person Groups with Individual Work”
著者名:Takatsu, Y., Goto, T., and Reiter-Palmon, R.
DOI: https://doi.org/10.1002/jocb.70131
本研究は、公益財団法人トヨタ財団50周年記念助成(D24-HS-0118)の支援を受けて行われました。
参考URL
用語説明
- 問題構築
問題構築とは、「定義が不十分であいまいな問題を構造化し、問題解決の目的・目標を特定すること」を指します。実際に、実験では、参加者には問題のシナリオを読み、「どうしたら私/私たちは…できるか」という形式で、できるだけ多くの種類の定式化された問いを考えてもらいました。なお、この活動は、「問題の発見(Problem finding)」や「問題の特定(Problem identification)」と呼ばれることもありますが、問題解決者があいまいな問題の状況から解決すべき問題を積極的に組み立てるという点を強調するため、問題構築(Problem construction)という用語を用いています。
- アイデアの数と種類
「アイデアの数」とは、参加者によって生み出されたアイデアそのものの総数を指します。一方、「アイデアの種類」とは、内容や意味が似ているアイデアを同じカテゴリにまとめたときに、いくつのカテゴリに分類できるかというアイデアの多様性を評価したものです。
- 創造性
創造性には様々な定義がありますが、本研究では、他の人がどれほど思いつきにくいものかという「独創性」と、問題の解決にどれほど役に立ちそうかという「有用性」の両方を兼ね備えたアイデアを創造性の高いアイデアとしました。また、アイデアの評価は、実験で取り扱った問題の専門家と、非専門家である大学生・大学院生が、それぞれ独立して行いました。異なる立場の第3者によって評価を行うことで、研究者の主観によるバイアスをできるだけ避け、多角的な視点から創造性を得点化しました。