CO2と反応性増粘流体を用いた岩石破砕で、 高温・高圧地下環境でも閉じにくいき裂を形成

CO2と反応性増粘流体を用いた岩石破砕で、 高温・高圧地下環境でも閉じにくいき裂を形成

地熱発電・天然ガス開発など地下資源開発への応用に期待

2026-7-8自然科学系
工学研究科准教授緒方 奨

研究成果のポイント

  • 次世代地熱発電や一部の天然ガス開発などでは、地下深部に形成したき裂が閉じず、流体の通り道として機能し続けることが重要です。
  • 従来の支持材は、高温・高圧地下環境では、き裂の奥まで運び、長期的に機能させることが容易ではありません。
  • 本研究では、CO₂水押破砕反応性増粘流体を導入し、き裂を形成・開口させながら、支持材なしでも閉じにくいき裂を形成できることを示しました。

概要

次世代地熱発電や一部の天然ガス開発などでは、地下深部に形成したき裂が閉じず、流体の通り道として機能し続けることが重要です。しかし、高温・高圧環境では形成したき裂が閉じやすく、従来の支持材も、き裂の奥まで運んで長期的に機能させることが容易ではありません。

今回、東北大学大学院環境科学研究科の渡邉則昭教授らの研究グループは、大阪大学大学院工学研究科の緒方奨准教授、地熱技術開発株式会社(GERD)、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との共同研究により、研究グループが独自に開発してきたCO₂水押破砕に、新たに反応性増粘流体を導入しました。その結果、き裂を形成・開口させながら、き裂面を不均一に溶解・粗面化し、支持材なしでも閉じにくいき裂へと変化させられることを示しました。

本成果は、CO₂水押破砕を、地下環境でも閉じにくい流路を形成する技術へと発展させるものです。次世代地熱発電、一部の天然ガス開発、天然水素などの地下資源開発への応用が期待されます。

本研究成果は、Communications Earth & Environmentに2026年7月2日付で掲載されました。

研究の背景

地熱発電では、地下深部の高温岩盤中で、熱水や蒸気などの流体が流れやすい経路を確保し、その浸透性を長く保つことが重要です。特に近年では、水の代わりにCO₂を利用して地下の熱を取り出すCO₂地熱発電や、人工的に地下岩盤中の流路をつくる次世代地熱発電が検討されており、高温・高圧の地下環境でCO₂や水が流れやすいき裂を形成・維持する技術が求められています。

また、天然ガス開発においても、一部の低浸透性貯留層では、地下の岩盤中でガスが流れやすい状態を確保することが、生産性の向上につながります。このように、低浸透性の地下岩盤中で流体の通り道となるき裂をつくり、それを長く機能させることは、次世代地熱発電や一部の天然ガス開発などの地下資源開発に共通する重要な課題です。

従来の水圧破砕では、形成したき裂が閉じないように、砂やセラミック粒子などの支持材をき裂内に入れて流路を支える方法が用いられてきました。しかし、高温・高圧環境では、支持材をき裂の奥まで運ぶことや、長期的に安定して機能させることが容易ではありません。また、火山岩のように空隙や微細き裂を多く含む岩石では、注入した流体が岩石内部へ逃げやすく、支持材を送り込むために必要なき裂の開口自体も難しくなります。したがって、高温・高圧の低浸透性岩盤を対象とする場合には、支持材の輸送に頼るだけでなく、形成したき裂そのものを閉じにくい流路へ変える技術が求められます。

この課題に対して、研究グループは、CO₂を利用した破砕技術に着目してきました。CO₂は水とは異なる流体特性を持ち、岩石中で微細き裂の発生や複雑なき裂ネットワークの形成を促すことが期待されます。研究グループはこれまでに、低粘度のCO₂をそれよりも高粘度の水系流体で押し込むCO₂水押破砕を独自に開発してきました。この方法では、まずCO₂により比較的低い圧力でき裂を発生させ、その後、高粘度の水系流体でき裂を開口・進展させます。

一方で、CO₂水押破砕によってき裂を形成・開口させても、形成されたき裂は地下の圧力によって再び閉じやすい場合があります。そのため、CO₂によってき裂を発生させるだけでなく、発生したき裂を開口・進展させながら、き裂面そのものを地下環境でも閉じにくい形へ変える技術が求められていました。

そこで本研究では、これまでに独自開発してきたCO₂水押破砕に、岩石と反応する成分と流れ方を制御する増粘成分を組み合わせた反応性増粘流体を新たに導入しました。CO₂により比較的低い圧力でき裂を発生させ、その後、高粘度の反応性増粘流体でき裂を開口・進展させるとともに、き裂表面を不均一に溶解させて粗くすることを目指しました。

研究の内容

地熱発電では、地下深部の高温岩盤中で、熱水や蒸気などの流体が流れやすい経路を確保し、その浸透性を長く保つことが重要です。特に近年では、水の代わりにCO₂を利用して地下の熱を取り出すCO₂地熱発電や、人工的に地下岩盤中の流路をつくる次世代地熱発電が検討されており、高温・高圧の地下環境でCO₂や水が流れやすいき裂を形成・維持する技術が求められています。

また、天然ガス開発においても、一部の低浸透性貯留層では、地下の岩盤中でガスが流れやすい状態を確保することが、生産性の向上につながります。このように、低浸透性の地下岩盤中で流体の通り道となるき裂をつくり、それを長く機能させることは、次世代地熱発電や一部の天然ガス開発などの地下資源開発に共通する重要な課題です。

従来の水圧破砕では、形成したき裂が閉じないように、砂やセラミック粒子などの支持材をき裂内に入れて流路を支える方法が用いられてきました。しかし、高温・高圧環境では、支持材をき裂の奥まで運ぶことや、長期的に安定して機能させることが容易ではありません。また、火山岩のように空隙や微細き裂を多く含む岩石では、注入した流体が岩石内部へ逃げやすく、支持材を送り込むために必要なき裂の開口自体も難しくなります。したがって、高温・高圧の低浸透性岩盤を対象とする場合には、支持材の輸送に頼るだけでなく、形成したき裂そのものを閉じにくい流路へ変える技術が求められます。

この課題に対して、研究グループは、CO₂を利用した破砕技術に着目してきました。CO₂は水とは異なる流体特性を持ち、岩石中で微細き裂の発生や複雑なき裂ネットワークの形成を促すことが期待されます。研究グループはこれまでに、低粘度のCO₂をそれよりも高粘度の水系流体で押し込むCO₂水押破砕を独自に開発してきました。この方法では、まずCO₂により比較的低い圧力でき裂を発生させ、その後、高粘度の水系流体でき裂を開口・進展させます。

一方で、CO₂水押破砕によってき裂を形成・開口させても、形成されたき裂は地下の圧力によって再び閉じやすい場合があります。そのため、CO₂によってき裂を発生させるだけでなく、発生したき裂を開口・進展させながら、き裂面そのものを地下環境でも閉じにくい形へ変える技術が求められていました。

そこで本研究では、これまでに独自開発してきたCO₂水押破砕に、岩石と反応する成分と流れ方を制御する増粘成分を組み合わせた反応性増粘流体を新たに導入しました。CO₂により比較的低い圧力でき裂を発生させ、その後、高粘度の反応性増粘流体でき裂を開口・進展させるとともに、き裂表面を不均一に溶解させて粗くすることを目指しました。

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図1. CO₂水押破砕と反応性増粘流体による閉じにくいき裂形成の概念図。き裂表面の不均一な溶解により凹凸が形成され、地圧下でも流体の通り道が残りやすくなる。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究は、CO₂水押破砕と独自の反応性増粘流体を組み合わせることで、高温・高圧地下環境でも閉じにくいき裂を形成できる可能性を示したものです。今後は、岩石の種類、温度・圧力条件、流体組成、注入条件を変えた実験を進め、どのような条件で浸透性を最も効果的に維持できるかを明らかにします。

また、実際の地下では、複数のき裂が相互に影響し、圧力変化や温度変化も長期的に作用します。そのため、化学反応によって粗くなったき裂が、繰り返しの圧力変化や熱応力を受けた場合にも、流体の通り道として安定して機能し続けるかを評価する必要があります。

本成果は、次世代地熱発電や一部の天然ガス開発において、支持材に頼らず地下岩盤の浸透性を維持する新しい技術につながることが期待されます。将来的には、天然水素などの地下資源開発への応用も視野に入れ、室内実験と数値シミュレーションを組み合わせながら、実際の地下貯留層への適用条件や設計指針を明らかにしていきます。なお、本技術に関連する発明については、東北大学、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、および地熱技術開発株式会社(GERD)が共同で特許出願を行っています。

特記事項

【論文情報】
タイトル:CO₂ reactive fracturing creates stress-resistant permeability by coupling fracture generation and chemical roughening
著者: Luis Salalá*, Eko Pramudyo*, Kevin Ryano, Kazumasa Sueyoshi, Ryota Tamura, Jiajie Wang, Kiyotoshi Sakaguchi, Sho Ogata, Kazumi Osato, Takuya Teraoka, Noriaki Watanabe*
*責任著者:東北大学 大学院 環境科学研究科 特任助教 Luis Salalá
東北大学 大学院 環境科学研究科 特任助教 Eko Pramudyo
東北大学 大学院 環境科学研究科 教授 渡邉 則昭
掲載誌:Communications Earth & Environment
DOI:10.1038/s43247-026-03768-6
URL:https://doi.org/10.1038/s43247-026-03768-6

本研究は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)からの委託により実施されました。また、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業「基盤研究(S)(22H04932、26K21718)」、「基盤研究(A)(26H02258)」、「基盤研究(B)(22H02015、23K23283、23H01903、23K26596、24K01412)」、「挑戦的研究(開拓)(21K18200)」、「若手研究(24K17139、26K17796)」、「学術変革領域研究(B)(26K00039)」、および科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業(JPMJFR216Y)の支援を受けました。
本論文は「東北大学2026年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業」の支援を受け、オープンアクセスで公開されています。

用語説明

CO₂水押破砕

低粘度のCO₂を、それよりも高粘度の水系流体で押し込むことで岩石を破砕する方法です。まずCO₂により比較的低い圧力でき裂を発生させ、その後、高粘度の水系流体でき裂を開口・進展させます。本研究では、このCO₂を押し込む高粘度の水系流体として、反応性を持たない増粘流体または反応性増粘流体を用いました。

反応性増粘流体

岩石と反応する成分と、流体に粘性を与える成分を組み合わせた流体です。本研究では、植物由来のキレート剤GLDA、少量のフッ化水素源、および微生物由来の増粘多糖類スクレログルカンを含む流体を用いました。き裂内の流れ方を制御しながら、き裂表面の鉱物を不均一に溶解させる役割を持ちます。