
\日本の子どもの睡眠不足を救おう/ 就寝前デジタル機器制限と就寝時刻固定が 子どもの睡眠を守る
研究成果のポイント
概要
大阪大学大学院連合小児発達学研究科の河村加奈子特任研究員S、毛利育子教授、谷池雅子特任教授(常勤)らの研究グループは、日本の小学生の保護者4,273人を対象とした大規模調査により、平日の睡眠不足を補うために週末の睡眠時間が長くなる子どもの睡眠負債の実態と、それを防ぐための家庭の役割を明らかにしました。
本研究では、睡眠負債の現象を、週末と平日の睡眠時間差 (social sleep restriction(SSR)) として分析しました。週末に平日の睡眠不足を補うために長く寝る行為は、単なる休息ではなく、平日の睡眠が足りていない証拠であり、SSR自体が、肥満、感情のコントロールの難しさ、学業不振といった健康・発達リスクと結びついていることが報告されています。
調査の結果、日本の子どもの平日の平均睡眠時間は9時間16分と短く、多くの家庭で睡眠負債が発生していることが確認されました。しかし、「寝る前1時間のデジタル機器使用制限」や「就寝時刻の固定」といった家庭のルールがある場合は、平日の睡眠時間が守られ、結果として健康リスクを伴うSSRも抑えられることが統計学的な分析で判明しました。
本研究成果は、国際科学誌「Sleep Medicine」に2026年6月14日にオンライン公開されました。
図1. 子どもの睡眠に関連する生活習慣
研究の背景
睡眠は、子どもの身体的、認知的、情緒的機能の維持に不可欠ですが、日本の子どもの睡眠時間は世界的に見て短く、小学生の平均睡眠時間は、推奨される9〜11時間の下限に近い状況になっています。日本では、宿題や夜遅くまで明るい照明の下で学習する「塾」などの学業負荷が睡眠不足の一因となっています。その他、タブレットやスマートフォン等の急速な普及により、就寝前のデジタル機器使用が増加しており、家庭内のルール作りが追いついていない現状も睡眠不足の一因となっています。
また、日本では7割以上の小学生が大人と寝室を共有する習慣がありますが、これが小学生の睡眠に与える影響については十分に解明されていませんでした。
研究の内容
本研究は、2023年11月から2024年3月にかけて、日本の小学生 (6〜12歳)の保護者4,273人を対象にウェブ調査を実施しました。小学生の平日の平均睡眠時間は9時間16分で、宿題や習い事(塾など)、就寝前1時間のデジタル機器使用、および「大人との寝室共有」が平日睡眠時間の短縮に関連していました。デジタル機器の種類としては、テレビでの動画視聴に比べると、双方向性かつ近距離で使用するタブレットやスマートフォンの影響が顕著でした。
一方で、読み聞かせや読書などの就寝前のルーティンや外遊びは、平日睡眠時間を長くする方向に関連していました。週末と平日の睡眠時間差(SSR)に関しては、平均は30分で、2時間以上のSSRが6.6%の子に認められ、平日の睡眠不足がSSRに強く関連していることが明らかになりました。
「寝る前のデジタル機器の使用制限」や「就寝時刻の固定」といった家庭のルールは、平日睡眠時間を増やし、SSRを減らす効果が認められました。大人との寝室共有は、睡眠を短くする一因となる一方で、寝る前のルーティンを促進したり、週末の過度の寝坊を抑えたりする効果も認めました。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
週末の長時間睡眠は、単なる休息ではなく、平日の睡眠不足のサインです。本研究では、子どもの健やかな発達のためには、睡眠を「子どもの権利」として守る視点が必要であることを示唆しています。
塾通いや寝室の共有などの文化的な背景を変えることは容易ではありませんが、デジタル機器を就寝前1時間は使わないことや就寝時刻の固定といった家庭内のルールづくりが、デジタル化や学業負荷の中でも子どもの睡眠を守る「盾」として極めて重要であることを本研究で明らかにしました。
特記事項
本研究成果は、2026年6月14日に国際科学誌「Sleep Medicine」(オンライン)に掲載されました。
タイトル: “A cross-sectional, web-based survey on sleep duration and social sleep restriction by daily habits in Japanese children: Cultural considerations”
著者名:Kawamura K, Nishimura T, Taniike M, and Ikuko Mohri.
DOI:https://doi.org/10.1016/j.sleep.2026.109054
なお、本研究は、科学技術振興機構センターオブイノベーションプログラム(JST COI)および日本学術振興会(JSPS)研究の一環として行われ、以下の自治体および小学校のご協力を得て実施されました。
順不同:松本市、吹田市、長岡京市、柳川市、枚方市、和泉市の各小学校、小平市立小平第一小学校、宝塚市立すみれガ丘小学校、新宮市立三輪崎小学校、兵庫教育大学附属小学校、板橋区立志村第三小学校、智頭町立智頭小学校、立川市立第七小学校、那智勝浦町立市野々小学校。
参考URL
連合小児発達学研究科小児発達学専攻 こころの発達神経科学講座 環境行動小児科学領域
https://www.ugscd-osaka-u.ne.jp/EBP/index.html

