\ 重い感染症のサインにもなり得る / 血液培養で見つかる微生物Bacillus subtilisのほとんどは 納豆菌由来であることが明らかに

\ 重い感染症のサインにもなり得る / 血液培養で見つかる微生物Bacillus subtilisのほとんどは 納豆菌由来であることが明らかに

2026-3-12生命科学・医学系
医学系研究科寄附講座准教授佐田 竜一

研究成果のポイント

  • 血液培養で検出されたBacillus subtilisの大部分が、遺伝子解析で「納豆菌(B. subtilis var. natto)」由来であることが明らかになった。
  • 納豆は健康によい食品として知られているが、納豆菌が血流感染の原因になる割合や重症度は、通常の培養検査では区別できず不明だった。
  • 血液培養から得られたBacillus subtilisの多くが納豆菌由来であり、36%が真の感染症である可能性が示唆された。血液培養からBacillus subtilisが検出された場合でも「害のない菌の混入」と決めつけず、感染源検索と適切な治療につなげる重要性を示した。

概要

大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)・大阪大学大学院医学系研究科の佐田 竜一寄附講座准教授と天理よろづ相談所病院の研究グループは、血液培養で検出されたBacillus subtilisの70株のうち、69株(99%)が、遺伝子解析で「納豆菌(B. subtilis var. natto)」由来であることを明らかにしました。さらに、納豆菌が検出された69例のうち25例(36%)が「真の菌血症」で、その25例のうち30日以内の死亡は4例(16%)、緊急手術・内視鏡処置が7例(28%)に必要でした。

納豆の健康効果が注目される一方、納豆菌が血流感染の原因になる症例報告もあります。B. subtilisからB. subtilis var. nattoを分類するには遺伝子解析が必要なため、B. subtilis var. nattoが血流感染の原因になる割合や重症度は、通常の培養検査では区別できず不明でした。

今回、公益財団法人天理よろづ相談所病院で得られた血液培養陽性の検体を対象に遺伝子検査を実施することで、Bacillus subtilisの大部分が、B. subtilis var. natto由来であることが明らかになりました。

本研究成果により、血液培養でB. subtilisが検出された場合は、納豆菌を想起して「害のない菌の混入」と決めつけず、感染源検索と適切な治療につなげることが重要だということがわかりました。

本研究成果は、Open Forum Infectious Diseases (オンライン)に、2025年9月23日に公開されました。

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図1. 納豆(写真)

研究の背景

納豆は、日本の伝統的な発酵食品で、納豆菌(B. subtilis var. natto)が大豆を発酵させることで作られます。納豆の健康効果が注目される一方、納豆菌が血流感染の原因になる症例報告もあります。さらに、B. subtilisからB. subtilis var. nattoを分類するには遺伝子解析が必要なため、

① 血液培養から検出されたB. subtilisのうち、どの程度が納豆菌なのか?
② 納豆菌血液培養陽性例の臨床的な位置づけをどう判断すべきか?

が共に不明確でした。

研究の内容

公益財団法人天理よろづ相談所病院で2016年4月1日〜2023年3月31日に得られた血液培養陽性4634検体を対象に解析しました。そのうち、B. subtilis70検体(1.5%)に対して、遺伝子検査(bioF 遺伝子と bioW 遺伝子の特定変異)を実施したところ、69検体(99%)が納豆菌と判定されました。

さらに、診療録レビューと基準に基づき真の菌血症か混入(汚染)かを判定したところ、69例のうち25例(36%)が「真の菌血症」で、30日以内の死亡は4例(16%)、緊急手術・内視鏡処置が7例(28%)に必要でした

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、血液培養でB. subtilisが検出された場合は納豆菌を想起し、「害のない菌の混入」と決めつけず、感染源の検索や重症度評価を行い、必要な抗菌薬治療や手術/内視鏡的治療につなげることが重要だと考えます。

特記事項

本研究成果は、2025年9月23日にOpen Forum Infectious Diseases(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“The Majority of Bacillus subtilis Strains Isolated From Blood Cultures Were Derived From Traditional Japanese Fermented Soybeans Natto: A Single-center Retrospective Study”
著者名:Ryuichi Minoda Sada, Go Yamamoto, Shigeto Hamaguchi, Eisuke Kuroda, Akiko Okura, Manke Cai, Kotone Nakanishi, Noriyuki Abe, Shungo Yamamoto, and Satoshi Kutsuna
DOI: https://doi.org/10.1093/ofid/ofaf574

なお、本研究は、「日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクト」の一環として行われ、天理よろづ相談所病院の協力を得て行われました。

参考URL

SDGsの目標

  • 03 すべての人に健康と福祉を

用語説明

血液培養

採取した血液を培養し、血液中の細菌を検出する検査。

Bacillus subtilis

土壌や植物、動物の消化管に広く存在するグラム陽性の好気性桿菌で、芽胞形成能力を持つ耐久性の高い微生物。

納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)

大豆を発酵させて納豆を作るために使われる菌。通常検査ではB. subtilisと区別が難しいが、bioF/bioW遺伝子の変異で判定できる。

菌血症

血液中に細菌が入り、全身の感染症(敗血症など)につながり得る状態。