銀膜接合技術の開発で マイクロバンプの銅接合を実現!
先端半導体の高性能化・小型化への貢献を期待
研究成果のポイント
概要
大阪大学産業科学研究所フレキシブル3D実装協働研究所と株式会社ダイセルは、新たな銀膜接合技術の開発により2.5Dと3D用のマイクロバンプ接合において、低温(180~250℃)、低加圧(0~0.4 MPa)、短時間(10 分)、直径20 um、ピッチ150 umのCu-Agマイクロバンプ接合を実現しました。この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものです。
ポスト 5G から 6G 社会の到来により本格的な AI/IoT の普及が始まろうとしており、これを支えるデジタル通信インフラからエッジデバイスまでの全てのハードウェアで、膨大な情報を低遅延でかつ省エネルギー、高信頼に伝達する半導体高度化技術への要求が急速に高まっています。
先端パッケージ高密度実装では、半導体の微細高集積化に伴う接続端子の急激な増加と超微細化が求められ、現状で 20~30µm サイズの接合技術の 10µm を切るレベルへの超微細化と、エネルギー密度の急増に対する放熱材料の開発や熱応力の緩和等が求められます。
現在、最先端 20 umのダイ接続には Cu ピラーにはんだめっきが使われていますが、生産性に劣りコスト高となっています。20 um を切る更なる微細化レベルの実現には、はんだの限界を打ち破る特性が期待できる Cu 直接接合が必要です。Cu直接接合は、これまでも世界中で研究開発が報告されていますが、Cu の酸化し易さと接合面平滑化の困難さから現実的なプロセスは得られていないのが現状です。
上記のような背景の下、チップのI/O端子密度が急速に高まっており、それに相応するように、求められるバンプピッチも小さくなり続けています。マイクロバンプは、ファインピッチに対するこのような要求に応えるために開発されたバンピング技術です。現在、マイクロバンプは、40 um以下になり高密度パッケージの実現が可能となりましたが、 高温、高加圧、窒素雰囲気等の厳しい接合条件が必要です。
今回開発したマイクロバンプ接合技術は、伝統的なCuマイクロバンプ上に銀スパッタ膜を付与し、銀膜成長した銀ヒロックにより、低温、低加圧及び大気中の条件での短時間接合を実現しました。
接合状況を以下に示します。
図1. 本技術による接合試験状況
(左)複数のバンプの平面図 (中)1個のバンプの断面 (右)バンプ/バンプ接合イメージ
図2. 本技術により接合されたマイクロバンプ接合部の断面
(左)バンプ接合部全体 (右)接合部拡大
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、これまでのファインピッチに対する2.5Dと3D接合プロセスの簡素化に大きく貢献します。その結果、先端半導体の高性能化・小型化への貢献が期待されます。
今後の目標
今回は銀膜を付与してのCu接合技術を開発いたしました。今後は新たな挑戦として、銀膜なしのCu直接接合技術の開発に取り組みます。
特記事項
本研究成果は2022年5月末2022 IEEE 72nd Electronic Components and Technology Conference (ECTC)で公開されました。
(タイトル:Ag-Ag direct bonding via a pressureless, low-temperature, and atmospheric stress migration bonding method for 3D integration packaging)