日本人赤ちゃんの顔で明らかになった 客観的な「かわいさ」次元の存在

日本人赤ちゃんの顔で明らかになった 客観的な「かわいさ」次元の存在

物理的特徴の操作で最もかわいい赤ちゃんの顔画像を作成

2022-2-18社会科学系
人間科学研究科教授入戸野宏

研究成果のポイント

  • かわいい赤ちゃんの顔は、白人顔では作られていたが、日本人顔で作成したのは初めて。
  • 赤ちゃん顔の「かわいさ」判断は、個人の好みではなく、多くの人で判断が一致する。
  • 若い男性は「かわいさ」の高低を認識するのが苦手な傾向にある。
  • 客観的な「かわいさ」は存在する。しかし、個人が抱く主観的な「かわいい感情」もある。

概要

大阪大学大学院人間科学研究科の入戸野(にっとの)宏教授らの研究グループは、日本人の乳児顔の形状を分析し、かわいさが高いと評価される顔の特徴を明らかにしました。

これまで白人の赤ちゃん顔については同様の研究が行われていますが、日本人の赤ちゃん顔をベースにした体系的な研究は今回が初めてです。

赤ちゃん顔の「かわいさ」に関連するのは、顔の下半分にぱっちりとした目がある、顔が丸みを帯びている、といった特徴であることが確認できました。「かわいさ」の判断は、個人の好みではなく、客観的な顔の特徴に基づいていること、若い男性は女性や中高年の男性に比べてこの特徴を認識するのが苦手であることも分かりました。

本研究成果は、オンライン科学誌「Frontiers in Psychology」に、2月18日(金)14時(日本時間)に公開されました。

研究の背景

今から80年ほど前、動物行動学者のローレンツは、人間は特定の物理的特徴に対してかわいいと感じると提案し、これをベビースキーマ(赤ちゃん図式)と名づけました。これまで白人の赤ちゃんの顔写真を使った研究は多く行われてきましたが、本研究では同様の方法を使って、日本人の赤ちゃんの顔写真をベースにしたかわいい顔を作成しました。

研究の内容

保護者からご提供いただいた生後6ヶ月の赤ちゃん80名の無表情・正面顔の画像を材料として、200名の日本人男女(20~69歳)に、かわいさの評定(1:まったくかわいくないー7:非常にかわいい)をしてもらいました。顔ごとの平均得点に基づき、かわいさの高い方から10名、低いほうから10名の顔を選出しました。それぞれの顔を平均することで、かわいさが高い顔と低い顔を合成することができます(図1)。さらに、これらの顔形状を分析すると、かわいさの低い顔から高い顔に変化させるためには顔のどの部分を変形させればよいかというパターンが分かります。

得られたパターンは、これまでに知られているベビースキーマの特徴に一致したものでした。この変形パターンを、50枚の赤ちゃん顔に適用し、かわいさを増やした顔と減らした顔を作成しました(図2)。587名の日本人男女(20~69歳)にインターネット調査を行い、この50ペア(100枚)について、よりかわいいと感じる顔を選んでもらいました。その結果、9割の人がかわいさを増やした顔を選択しました。しかし、若い男性は、女性や中高年の男性に比べて、正答率が低いという結果が得られました(図3)。

この結果は、赤ちゃん顔の「かわいさ」は、個人の好みとは別に、客観的な特徴として存在することを示しています。

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図1. 画像を合成して作られたかわいさが高い顔(左)と低い顔(右)のプロトタイプ(原型)。6ヶ月児80名の顔のかわいさを20~69歳の日本人200名が評定した。かわいさの得点が高い10名の平均顔と得点が低い10名の平均顔をそれぞれ求めた。

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図2. かわいさを増やす/減らす方向に変形させた顔のペアから、よりかわいい方を選ぶ課題を587名の成人が行った。

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図3. ほとんどの人が赤ちゃん顔のかわいさの違いを識別し、よりかわいい方を選んだが、若い男性は正答率が低かった(587名のデータに基づく)。

本研究成果の意義

本研究により、日本人の赤ちゃん顔のかわいさも、ベビースキーマ特徴に基づいて評価されていることが確認できました。作成した「日本版かわいい乳児顔データセット (Japanese Cute Infant Face [JCIF] dataset)」は、インターネット上で公開しました。今後、国内だけでなく海外でも、この刺激セットを用いたかわいいに関する研究が行われるだろうと期待しています。

特記事項

本研究成果は、2022年2月18日(金)14時(日本時間)にオンライン科学誌「Frontiers in Psychology」に掲載されました。

タイトル:“Creation and Validation of the Japanese Cute Infant Face (JCIF) Dataset”
著者名:Hiroshi Nittono、 Akane Ohashi、 and Masashi Komori
(入戸野 宏)(大橋 紅音; 大阪大学卒業生)(小森 政嗣; 大阪電気通信大学教授)
DOI:10.3389/fpsyg.2022.819428
出版社サイト:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2022.819428/

なお、本研究は、JSPS科研費17H02651、21H04897の助成を受けたものです。

参考URL

入戸野 宏 教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/a5bee7005ec582b7.html

研究室URL
https://cplnet.jp