直線往復伝播の光を生成

2021-5-10自然科学系

研究成果のポイント

  • 自由空間で往復伝播の光を生成した。
  • この発見は光伝播の従来の理解を変化させ、高強度と低強度の光学科学における新しい応用が可能。
  • 超高速往復放射圧は、レイリー散乱領域で生成される。

概要

大阪大学レーザー科学研究所の李朝陽(Zhaoyang Li)(ジャオヤン リ)助教、Yanjun Gu(ヤンジュン コ)特任講師(常勤)、河仲準二教授の研究グループは、時空間結合法を用いて自由空間における往復伝播の光を生成しました。この発見は光伝播の従来の理解を変化させ、高強度と低強度の両方の光学科学における新しい応用の可能性をもたらします。例えば、超高速光ピンセット、位相整合レーザ粒子加速、自由空間光通信、量子光学などに利用できます。

本研究成果は、英国科学誌「Communications Physics」に、5月4日(火)18時(日本時間)に公開されました。

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図1. 直線往復伝播の光の概念図

研究の背景

自由空間における直線定速度(299,792,458 m/s)伝播は光の基本特性です。光の伝播速度、方向、軌道を制御することは、常に物理学のホットスポットの1つです。最近、速度と方向の両方を含む光の伝播を制御するために、いくつかの時空結合法が提案されました。例えば、飛行焦点の方法では、超光速、低光速、加速、減速、後方伝播が生成されます。

飛行焦点の原理は、軸上色収差を用いて空間中のスペクトル依存焦点を分離し、次に時間チャープを用いてその焦点に到達する各スペクトルの時間を制御します(図2)。この場合、速度と伝播方向を調整できる上記の運動を作成できます。飛行焦点の従来の結果では、光は単一の方向、すなわち前方または後方に沿ってのみ伝播することができます。この新しい方法では、レイリー長と時間チャープを劇的に増加させることにより、非常に特異な物理的区間において、従来の結果と全く異なる異常な往復伝播が存在することを見いだしました。新しく作られた飛行焦点は縦軸に沿って最初に前方へ、次に後方へ、そして最後に再び前方へ伝播することができます(図2)。

この新しい形の光伝播は、光伝播の従来の理解を一新し、新しいアプリケーションの可能性をもたらすことが期待されています。この新しい光は空間‐時間の往復伝播強度を持ち(図3a)、例えばこの新しい光をレイリー散乱領域の光ピンセットに適用すると、往復放射圧を生成することができます。粒子が非常に小さい場合には、超高速往復トラップ放射圧が発生します(図3b)。粒子が少し大きいと、超高速往復押動放射圧が発生します(図3c)。

従来の光伝播と比較して、本研究における往復伝播光は基礎物理と応用物理の両方に新しい可能性をもたらすかもしれません。

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図2. 直線往復伝播の光の原理とシミュレーション

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図3. a直線往復伝播の光の軸上強度、b小粒子とc大粒子によるレイリー散乱領域の放射圧

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

光伝播を制御することは、物理学の研究では古くからホットで難しいテーマでした。本研究では、飛行焦点法に基づき、レイリー長と時間チャープを劇的に増加させることにより、往復伝播光の新しい現象を見いだしました。この光は光の伝播に関する従来の理解を変えます。高強度光学系から弱強度光学系まで、多くの物理学的応用の可能性を秘めています。例えば、超高速光ピンセット、位相整合レーザ粒子加速、自由空間光通信、量子光学などに利用できます。

特記事項

本研究成果は、2021年5月4日18時(日本時間)にNature Publishing社が発行する「Communications Physics」誌(オンライン)に掲載されました。

題名:「Reciprocating propagation of laser pulse intensity in free space」
邦訳:「自由空間におけるレーザーパルス強度の往復伝播」
著者:李 朝陽(Zhaoyang Li)、Yanjun Gu、河仲 準二(Junji Kawanaka)
DOI: 10.1038/s42005-021-00590-8

参考URL


用語説明

飛行焦点

飛行速度と方向を調整できる焦点。

軸上色収差

色による屈折率の違いにより、結像位置が色によって前後にずれる収差である。

時間チャープ

時間とともに周波数が増加(「アップチャープ」)するか、時間とともに周波数が減少(「ダウンチャープ」)するような光パルスである。

レイリー長

ビームの断面積が集光点における断面積の2倍になる位置とビームの集光点の間の距離である。