接合部の存在を無視できる新接合技術!

高強度アルミニウム合金の完全接合を実現

2020-11-26工学系

研究成果のポイント

・アルミニウム合金同士を連続的に接合することができる「完全接合」技術を世界で初めて確立。
・従来のアルミニウム合金の接合部では、大幅な軟化を伴う熱影響部の形成が不可避であることから、高強度化しても、接合構造体の強度や信頼性は接合部により決まるという課題があった。
固相接合で、「大きな接合圧力を印加することで接合温度が低下する」という意外な接合原理を発見。
・これを利用することでアルミニウム合金を200°C程度の低温で接合することに成功。かつ、形成される接合部は母材と全く同じ硬度分を有することを明らかに。
・接合部が特異点とならない完全接合技術は類を見ないものであり、産業界で広く利用されることを期待。

概要

大阪大学接合科学研究所の藤井英俊教授、森貞好昭特任准教授らの研究グループは、あたかも接合部が存在せず、アルミニウム合金同士をそのまま連続的に接合することができる「完全接合」技術を世界で初めて確立しました。

これまでのアルミニウム合金の接合部では大幅な軟化を伴う熱影響部の形成が不可避であり、接合構造体の強度や信頼性は接合部によって決定されます。即ち、アルミニウム合金を高強度化しても、その恩恵を十分に享受することができませんでした。

今回、藤井英俊教授、森貞好昭特任准教授らの研究グループは、接合したい材料同士を押し付けながら昇温する固相接合に関して、「大きな接合圧力を印加することで接合温度が低下する」という意外な接合原理を発見しました。これを利用することでアルミニウム合金を200°C程度の低温で接合することに成功し、形成される接合部は母材と全く同じ硬度分を有することを明らかにしました。

これにより、接合部は特異点とはならず、母材と同等と見做すことができ、構造体の設計を極めて単純化できます。高強度アルミニウム合金の素材としての特性をそのまま活かした理想的な接合構造体を得ることができます。

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図1 A6061アルミニウム合金継手の断面写真アルミニウム合金材同士が極めて薄い接合界面を介して接合されています。

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図2 A6061アルミニウム合金接合部の硬度分布新接合技術で得られた接合部は母材と同じ硬度分布を有しています。このような接合部は、あらゆるアルミニウム合金に形成させることができます。

研究の背景

アルミニウム合金は鋼に次いで大量に使用されている極めて重要な金属構造材料です。特に、近年ではCO2排出量の削減や省エネルギーの要求から自動車、鉄道車両及び航空機等の輸送用機器の軽量化が切望されており、比重が鋼の約1/3であるアルミニウム合金の更なる活用が期待されています。

金属構造体の製造には接合が不可欠であり、アルミニウム合金の接合方法についても盛んに検討が進められてきましたが、摩擦攪拌接合などの材料を溶かさない固相接合を用いた場合であっても、接合時の温度上昇に起因する接合部の軟化を抑制することが困難で、もとの素材の70%程度の強度しか得られず、接合部の強度に合わせた構造設計が必須になるという課題がありました。

藤井英俊教授、森貞好昭特任准教授らの研究グループは、固相接合法の一つである線形摩擦接合に着目し、接合温度を低下させる方法について鋭意検討したところ、被接合材同士を低い圧力で押し付けて慎重に温度制御するのではなく、逆に、被接合材同士を大きな圧力で押し付けることで接合温度が低下することを見出しました。これは、大きな接合圧力の印加により、より低い温度で被接合界面が変形するためであり、この原理に従うと、接合温度を極めて正確に制御することもできます。さらに、これらの接合原理は、既に広く産業利用されている摩擦圧接にも適用することができます。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、接合部における強度及び信頼性の低下を考慮することが不要となり、様々な手法で高強度化されたアルミニウム合金の材料特性がそのまま反映される良好な接合構造体を得ることができます。また、各種金属構造体の製造のみならず、部分的な補強技術や補修技術としての活用も期待できます。

さらに、材料特性の劣化に留意することなく、金属材を任意の形状及び大きさに組み上げていくことも可能となり、切削によって材料を除去する従来の製造方法から、必要最小限の材料を付加する製造方法(アディティブ・マニュファクチャリング)への転換にも寄与することが期待されます。

参考URL

接合科学研究所 藤井研究室HP
http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/~dpt9/

用語説明

熱影響部

溶接等の接合プロセスによる入熱で、組織や機械的性質に変化を生じる領域である。アルミニウム合金の場合、母材と比較して強度(硬度)が低くなる。

固相接合

材料を溶かして接合する溶接に対して、材料を溶かすことなく固相のまま接合する技術である。溶接と比較して接合温度が低くなるため、近年盛んに研究が進められている。代表的な固相接合法としては、摩擦攪拌接合、摩擦圧接及び線形摩擦接合を挙げることができる。

線形摩擦接合

被接合材同士を接合面で当接させ、線形に摺動させることで摩擦熱を発生させて接合を達成する接合法である。ジェットエンジン製造等への適用が検討されている。

摩擦圧接

被接合材同士を接合面で当接させ、回転摺動させることで摩擦熱を発生させて接合を達成する接合法である。エンジンバルブやゴルフクラブの製造等に幅広く活用されている。

アディティブ・マニュファクチャリング

一般的には、3Dプリンティング技術による積層造形技術による製造方式を意味している。通常は溶融させた材料を積層することで、任意の形状を有する構造物が形成される。