フレキシブルひずみセンサの感度を200倍に! インフラ管理・微弱生体信号検知の実用化に大きく前進!
発表のポイント
・現在産業に使われているフレキシブルひずみセンサの感度を示すゲージ率は2です。本発明はゲージ率400と世界最高性能の高感度性を持つフレキシブルひずみセンサの開発に成功しました。
・今回発明したひずみ応答性に敏感な単結晶セラミック極薄膜をフレキシブルシート上へ転写する技術は、世界でもほとんど進んでいませんでした。この転写技術の構築がキーとなり世界最高性能のフレキシブルひずみセンサ開発に繋がりました。
・超高感度ひずみセンサは、従来測定が困難であったマイクロひずみ(1mの棒が0.000001mの伸縮)の検出が可能となり、インフラ、ヘルスケア、医療など応用範囲が拡がります。
概要
大阪大学産業科学研究所の神吉輝夫准教授、遠藤史也氏(基礎工学研究科博士前期課程)はイタリアジェノバ大学、DanieleMarré(ダニエレ マレー)教授及びCNR所属のLuca Pellegrino(ルカ ペリグリーノ)博士、Nicola Manca(二コラ マンカ)博士との共同研究で世界最大のゲージ率(ひずみの感度)400以上を示すフレキシブルひずみセンサの開発に成功しました。現在産業用途ではNi合金製のフレキシブルひずみセンサが多く使われており、ゲージ率が2で一般的であまり大きくなく、信号増幅・ノイズ低減技術の進歩によって、高感度化が達成されてきました。
本フレキシブルセンサでは、信号増幅なしで微小ひずみの検知が可能になることから、回路の小型化・省エネ化が可能になります。また、今後の研究の継続で、従来では難しかったマイクロひずみ(1mの棒が0.000001mの伸縮)の検出が可能となり、近い将来、脈波やわずかな筋肉の動き、建物や橋などの微小経時変化を簡便な装置で高精度に測定可能になると期待されます。
本研究では、ひずみに敏感なセラミックス薄膜の単結晶化、基板からの剥離技術、フレキシブルシート上への転写の3つすべての技術を確立することによって【研究成果、Applied Physics Express 11, 085503(2018) に掲載】、成し遂げました。
図1 指の屈伸運動による大きな電気抵抗変化を観測
研究の詳細
フレキシブルひずみセンサを用いてマイクロひずみを検知するためには、信号増幅・ノイズ低減技術の進歩ではなく、ゲージ率を向上させた材料開発の課題がありました。
神吉輝夫准教授、遠藤史也氏はイタリアジェノバ大学、Daniele Marré教授及びCNR所属のLuca Pellegrino博士、Nicola Manca博士との共同研究では、わずかなひずみで大きく抵抗が変化する二酸化バナジウムというセラミックス材料に注目して、超高感度なフレキシブルひずみセンサの開発を行ってきました。結晶方向でひずみの高感度化が変化することから、二酸化バナジウムの単結晶化をおこない、さらに、基板からの剥離技術、フレキシブルシート上への転写の3つすべての技術を確立することによって、今回の成果が得られました。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果では、信号増幅なしで微小ひずみの検知が可能になることから、回路の小型化・省エネ化が可能になります。また、今後の研究の継続で、従来では難しかったマイクロひずみ(1mの棒が0.000001mの伸縮)の検出が可能となり、近い将来、脈波やわずかな筋肉の動き、建物や橋などの微小経時変化を簡便な装置で高精度に測定可能になると期待されます。
特記事項
本研究成果の技術構築については、2018年7月13日に日本学術論文誌「Applied Physics Express 11, 085503 (2018)」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Formation of single-crystal VO 2 thin films on MgO(110) substrates using ultrathin TiO 2 buffer layers”
著者名:Yoshiyuki Higuchi, Teruo Kanki and Hidekazu Tanaka
なお、本研究は、JSPS二国間交流事業(日―伊)の研究の一環として、ジェノバ大学、Damiele Marré教授及びCNR所属のLuca Pellegrino博士、Nicola Manca博士の協力を得て行われました。
研究者のコメント
ひずみゲージ率の高感度化のポイントは、VO2材料の単結晶化であり、一番苦労した点でもありました。
フレキシブルシート上へのセラミック転写技術の応用範囲は広く、高温超伝導体や磁性体にも展開でき、基礎研究・応用研究の方法が一変する手法でもあります。今後様々なセラミック材料のフレキシブルシート上への応用展開を期待しております。
参考URL
大阪大学 産業科学研究所 田中研究室HP
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/bis/