ボツリヌス食中毒が起きる仕組みが明らかに!

身近に潜む致死率の高い食中毒!

2015-2-17

概要

大阪大学微生物病研究所の藤永由佳子特任教授、松村拓大特任助教らの研究グループは、理化学研究所大野博司グループディレクターとの共同研究により、いままで不明であったボツリヌス毒素の腸管からの体内侵入機構を明らかにしました。ボツリヌス神経毒素複合体は、致死率の非常に高い食中毒を起こすことが知られています。本研究では、ボツリヌス毒素と複合体を形成している無毒成分の1つであるヘマグルチニン(HA)が、腸管上皮中のM細胞という特殊な細胞に発現するGP2という膜タンパク質と結合することにより、この毒素が主にM細胞から体内に侵入することを明らかにしました。今後は、ボツリヌス食中毒の予防法や治療法の開発に貢献するとともに、本毒素の巧妙な体内侵入機構を利用した新しい経粘膜薬物送達システムや経粘膜ワクチンなどの開発への応用も期待されます。

なお、本研究成果は、2015年2月17日19時(日本時間)に「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。

研究の背景

最も強力な自然毒として知れているボツリヌス神経毒素複合体は、嫌気性菌であるボツリヌス菌などが産生するタンパク質毒素です。本毒素による食中毒は致死率が高く、適切な治療を受けないときの死亡率は30%以上といわれています。日本では最近の発生件数は少ない状況ですが、タイでは2006年に200人以上が本食中毒を発症するアウトブレイクが起きています。またEU諸国では年間約200例の本食中毒患者が発生しています。本毒素はA~G型が知られており、型によって異なる様々な動物に病気を起こします。たとえば、ヒトの場合は、主にA、B、E型、稀にF型で中毒が起こります。瓶詰めや缶詰など酸素が少ない状態の食品中で本菌が混入・増殖し、本毒素が産生された食品を口から摂取すると、毒素活性を保持した状態で腸管から体内へ侵入し、主に運動神経などの末梢神経に作用してアセチルコリンなどの神経伝達物質の放出を遮断します。重篤な場合は、全身の横紋筋および平滑筋の弛緩性麻痺が起こってしまいます。

本疾患が発症するためには、神経毒素が活性を保持した状態で腸管から血中へ移行する必要がありますが、大きなタンパク質分子である神経毒素が腸管のどの部位からどのような機構で血中へ移行するかについては不明でした。本研究では、A1型神経毒素と複合体を形成している無毒成分の1つであるヘマグルチニン(HA)が、腸管上皮中のM細胞という特殊な細胞に発現するGP2という膜タンパク質と結合することにより、本毒素が主にM細胞から体内に侵入することを明らかにしました。

図1
マウス腸管に緑色の蛍光でラベルしたボツリヌス毒素複合体(血清型A型)を投与し、毒素の局在を観察しました。本毒素は絨毛領域(写真周辺部)ではなく、腸管のパイエル板(写真中央部)を覆っているドーム領域(M細胞が存在)に選択的に結合することが明らかになりました。

図2
ボツリヌス毒素複合体(血清型A型)は、腸管上皮中に存在するM細胞と呼ばれる特殊な細胞を主な侵入部位として、体内に取り込まれ、食中毒を引き起こすことが明らかになりました。さらに,このステップは毒素複合体中のHA成分とM細胞に発現しているGP2が結合することによって引き起こされることも解明されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果は、ボツリヌス食中毒の予防法や治療法の開発に貢献するとともに、本毒素の巧妙な体内侵入機構を利用した新しい経粘膜薬物送達システムや経粘膜ワクチンなどの開発への応用も期待されます。

論文掲載情報

本研究成果は2月17日(火)19時(日本時間)にNature communications(open access)に掲載されました。

[論文タイトル]
Botulinum toxin A exploits intestinal M cells to enter the host and exert neurotoxicity

[著者]
Takuhiro Matsumura, Yo Sugawara, Masahiro Yutani, Sho Amatsu, Hideo Yagita, Tomoko Kohda, Shin-Ichi Fukuoka, Yutaka Nakamura, Shinji Fukuda, Koji Hase, Hiroshi Ohno6, and Yukako Fujinaga

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